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23.話し合い

 現在、俺は別荘の応接室で向かいに座るルシウスとおばちゃん―アマルという名前らしいと話をしている


 レッドドラゴン撃退の翌日の朝、食事を終えて趣味の機械弄りでもしようと思っているとレイラが蝋封がされた手紙を持ってきた。俺がそれを読もうと思った時、玄関のドアノッカーが鳴らされる音が聞こえたので、出ると二人だったという訳だ。この回想をしているうちに詫びと挨拶が終わった様なので意識を戻す事にする


 「取り敢えず前回提示された条件は飲もう。それでレッドドラゴンを撃退したという遠距離攻撃を可能にする武器について聞きたいが良いかい?」

 「黙秘する。あれが広まれば戦争が起きた時、どうなると思っているんだ?」


 ルシウスの言葉に俺はルシウスの言葉遣いに文句を言おうとしたレイラを片手を上げて制して、革張りのソファーの背もたれに寄り掛かりながら答える。勿論、理由として挙げた問いは建前であり、只単に情報を渡したくないだけである。俺の言葉にルシウスとアマルは一瞬、顔を顰める


 「確かにそうだね。だけどそれが普及すれば冒険者の死亡率が大きく下がる可能性が高いんだ。魔物の被害が減る事を考えればこの情報は広めた方が良いんだよ。開発者として利益を得る事だって出来るんだよ?」


 俺はその言葉に僅かに顔を顰めると、少し冷めた紅茶を一口飲んでやや低くなった不機嫌な声で答える


 「だから何だ。正直に言おう。俺は他人がどうなろうが知った事じゃないんだ。俺と周りの大事なものを守れるなら世界がどうなろうとどうでも良いし、神だって唾を吐いて殺すつもりだ。何より俺は冒険者では無くなったと思うが?」

 「…そうか。だが、我々は君の力が欲しいんだ。ある程度は多めに見るから戻ってはくれないか?」

 「そうだな。強制参加の義務と俺に関する一切の詮索の禁止。この二つが条件だ」

 「分かった。それを飲もう。それにして教会の連中が聞いたら激怒して襲い掛かる様な事を平然と言うね?」

 「生憎と神は嫌いでね。安心しろ。基本的にはそちらの指示に従う。用はこれだけかな?」

 「あぁ、失礼したね。一応、これが新しい君のギルドカードだ」


 ルシウスは懐から白金色のプレートを取り出すと机に置く。俺がそれを手に取りポケットにしまうと、ルシウスとアマルが立ち上がり、部屋を出た


 ルシウスとアマルが屋敷を出た後、俺は手紙を読んだ後、普段よりも上質だが装飾のない簡素な服に着替えると歩いて王城に向かう。城門の前まで行くと、話が通っていたのかすんなりと入る事が出来た。俺は一人でレッドカーペットの敷かれた廊下を歩き、応接室の前まで行くと、扉をノックして中に入る


 「失礼します。アルベルト・レイガード、只今参りました」

 「よく来たな。座りなさい」


 俺はアーサー王の言葉に従いソファーに座る。執事の男が持ってきた紅茶を一口飲んでアーサー王を見るとアーサー王が口を開いた


 「さて、今日お前を呼んだのは他でもない。昨日、レッドドラゴンを撃退らしいな?その際、見たこともない道具をお前が使っていたという報告があった。入れ」

 「はっ!」


 アーサー王がそう言うと部屋の外から昨日気絶させた男が入ってきた。男は俺を見るとギョッとした表情を浮かべた後、俺の横に移動した


 「さて、昨日の事について教えてもらおうか」

 「陛下、この子供は長い棒状の物を使ってレッドドラゴンを撃退しました。私は気になりこの子供にそれは何か尋ねると突然、私を襲って気絶させたのです。国益の為に使用した道具の提出と国家反逆罪で処刑すべきです!」

 「と言っているがどうなんだ?」


 アーサー王の問いに俺は紅茶を飲むと肩を竦めて答える


 「概ね間違いないですが一つ訂正するならばこの男がしつこく偉そうに一方的に要求してきて面倒になったから黙らせた事位ですね」

 「陛下!この子供も―!」

 「ですが一貴族に命令出来る程、この男は偉いんですか?」

 「はっ?」

 「そこにいるアルベルト殿はレイガード辺境侯爵の子息であり、彼自身も子爵を持つ貴族なのだが知らなかったのか?」

 「なっ!?」

 「不肖、子爵を数日前に賜りました」


 男がこちらに勢い良く見たので俺は態々立ち上がって男の方を向き、大袈裟に一礼して見せる。興奮して赤かった顔も一転して青白く変わり、口を陸に打て上げられた魚の様にパクパクと開けたり閉めたりしている


 「加えて冒険者は国を含めて自身の持つ技術等の情報を秘匿する事が可能だったと思いますがどうでしょうか?」


 そう言って俺は先程手に入れたばかりの白金色のギルドカードを取り出すと二人に見える様に掲げる。それを見た男は驚愕と忌々しさが混ざった表情を浮かべている


 「確かにそうだな。ギルドは原則、国による干渉が出来ない独立した組織だ。よってGランクの冒険者であるアルベルト殿に犯罪者ではなく、むしろ防衛に貢献した彼に情報公開を強要する事は出来ない

 そして、君は確か騎士の家系だったな。貴族、それも子息ではなく子爵である者に命令した事から不敬罪に問われる可能性が高い」

 「そ、そんな…!?」

 「まぁ、そこに座るアルベルト殿次第だがな。どうする?」

 「面倒だ。少し拘留して頭が冷えた辺りで釈放すれば良いだろ」

 「ではそうしよう。連れて行け!」

 「はっ!」


 心底面倒になったので言葉を取り繕う事をやめてぞんざいに答えると、アーサー王の一声で男が使用人に連れていかれる。喚きながらジタバタと暴れる男が部屋の外に消えて扉が閉められた後、俺はティーカップに残った紅茶を一気に呷って飲み干す。因みに言葉遣いに関しては特に反応が無かった


 「さて、今日の要件は終わりですかね?」

 「こちらとしては使用した武器の情報を教えてもらいたいがね」

 「フム…、所で話は変わるんですけどここに不老不死の妙薬があるんですが要りますか?」


 俺がポケットから小瓶を出しながら言った何気ない言葉で部屋の時間が止まる。アーサー王は信じられない様子で机に置いた白い液体の入った小瓶を見ながら確認する様に問う


 「…今、不老不死の妙薬と言ったか?」

 「えぇ、偶々手に入れましてね。要りますか?」


 アーサー王は小瓶を見ながら欲望が混じった悩まし気な様子で首を縦に振ろうと頭を上げる。しかし、アルベルトの顔を見た瞬間、ハッとした表情を浮かべ、苦笑いをして首を横に振った


 「いや、止めておこう。不老不死など私には過ぎた代物だ」

 「おや?良いんですか?」

 「あぁ。それにあんな試す様な眼で見られて欲しい何て言えるか」

 「まぁ、それが身の為ですよ。私達にとって不老不死の薬は拷問に使われる位ですからね」

 「拷問だと?それは些か勿体無くはないか?」

 「先ず、不老不死になっても肉体の変化を完全に停止、又は固定させるので負傷や欠損はそのまま処か、永遠に現状維持の為に復元し続けるか治癒すらしないですし、其の所為で早かれ遅かれ精神は死んでいきますよ


 それに死の安寧が無い以上、通常なら死ぬ程の損傷や苦痛を与えられ続けて永劫の苦痛と絶望が身を蝕み続けますしね


 因みにもらうと言った場合は一応、止めてその事を伝えるつもりはありましたよ?結局、不老不死は只の幻想にしておくのが一番ですよ」

 「そうか。肝に銘じておこう」

 「後、これ飲むと自我が消えてどの道生ける屍になるので回収しますね」

 「そんな物を平然と出すな!」


 思わず声を荒げるアーサー王に俺は薬を仕舞った後、肩を竦めて飄々と答える


 「幻想の真実を知るにはこの事実が良い薬でしょう?後、先程の情報は秘匿させてもらいますよ」

 「そうか…、分かった。用はそれだけだ」

 「では失礼しますね」

 「あぁ、時間を取らせて済まなかったな」

 「いえいえ、ではまた」


 そう言ってアルベルトは応接室を出た。アーサー王は先程の会話を思い返し溜息を吐くのだった

解説

【アメルタ(変若水)】

粘性のある乳白色の液体で、不死の妙薬の一種…とされている【とある豊穣と月を司る神格の体液】であり変質薬


一度飲めば、一度肉体が崩壊し、人らしき姿を模った白い汚泥の生命体へと変質させる。自我が喪失し、脆く欠損を再生し続けるだけの生ける屍になる


『「不死の霊薬を手に入れた」と自慢気に言って、私達に見せびらかした小瓶に入った、とろりとした乳白色の其れを飲んだルーカスの体が、高温のオーブンに入れた蝋人形の様に『溶けた』


 小瓶の中身を思わせる波紋が浮かぶ、仄かに甘い臭いを漂わせる乳白色の水溜りが中心から盛り上がったかと、忽ち嘗てのルーカスの身長と同じ高さになり、白い粘土か泥で人を模した様な不格好な其れが、眼球の無い落ち窪んだ伽藍堂な双眸をこちらに向け、救いを求める様に指と関節の無い右腕を伸ばした』

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