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15.訓練そして王女

思った以上に1章が長引いて終わらない…

後、半月で終わるかしら?

 「う、うぅ~ん。どうして俺は寝てるんだ?」

 「あ、目覚めましたか」


 王城の医務室でベット横の椅子に座ってジークフリートが目覚めるのを待っていた俺は、ジークフリートの声が聞こえたので古ぼけた分厚い漆黒の革の装丁の本―初版の魔導書(グリモワールオリジン)である【無名祭祀書】を閉じて虚空に消すとジークフリートを見る


 「アルベルト様、…あぁ、そうか。負けたのですね」

 「強かったですよ。元々あれは使うつもりは無かったのですが思わず使ってしまいました」

 「あれは一体何ですか?」

 「身体能力を大幅に強化して瞬間的に移動したんですよ。結構反動も大きいので止めた方がいいですよ?後は純粋な体術ですね」

 「そうですか。…もう大丈夫です。戻りましょう」

 「分かりました」


 ジークフリートと共に医務室から訓練場に戻るとそこには騎士団の兵士と戦う燃える様な紅く腰まである長い髪を持つ16歳位の少女がいた。髪と同じ色の軽い金属鎧を着て、持っている武器が大剣で少女の細腕に似合わない。俺はジークフリートの方を向いて尋ねる


 「ジークフリートさん、彼女は?」

 「あの方は第二王女のセレスティア・ガルグルム殿下です。偶にやって来ては団員と打ち合いをしています」

 「王女殿下とそんな事をしても良いのですか?」

 「本当は良くないのですが命令されては逆らえませんからね。それに相応の実力があるので問題にはなっていません」

 「へぇ~」


 俺がそう声を出して向き直ると丁度王女が兵士を大剣を横薙ぎにして弾き飛ばした所だった。王女は俺達に気が付くと歩み寄って来た


 「どうもこんにちは、ジークフリート騎士団長。あら、その子は?」

 「レイガード辺境伯爵のご子息のアルベルト・レイガード様です。この度発生した魔物の氾濫(スタンピード)を乗り越えた方のお一人ですよ」

 「どうも、アルベルト・レイガードです」


 王女は俺を上から下までじっくり見るととんでもない事を言い出した


 「アルベルト、私と模擬戦をしなさい」

 「お断りします」


 速攻で断った俺を信じられない様な顔で王女が見る


 「な、何故!?」

 「いや、私に戦う理由がないですし、好き好んで女子供を痛めつける趣味はありませんから。それに万一王女殿下を傷つけたりしたらどうなるか分からないではないですか。貴女が良くても国王陛下や他の方々がどう思うかは別ですからね。何より面倒くさい」

 「なっ!?」


 王女は肩を竦めて言う俺の言葉に絶句し、顔を怒りで段々赤くする。恐らく自分の要求を拒否される経験が少ないのだろう。最後の言葉など王族たる彼女に言う者などいないだろうし


 「無礼ですよ!私の言う事が聞けないと言うのですか!」

 「はぁ~、しょうがないですねぇ」


 俺は目を瞑って深く溜息を吐くと魔力を込めて目を開き、王女を真っ直ぐ見据えた


 「―【ならば資格を示せ】」

 「っ!?」


 王女は竦み上がる程の重圧を感じさせる眼圧に体が縛られる。黒く鋭い双眸から目を逸らす事が出来ず、威圧感から知らず知らずのうちに片膝をついて悠然と立つ自分より年下であろう黒髪の男の子を見上げていた


 《練闘気術》【覇王の威風】


 この技は放射する魔力と眼圧で相手を竦ませて行動を阻害する。放射魔力が高ければ高い程、目付きが鋭ければ鋭い程に威力が上がり、気が弱い相手ならば気絶し兼ねない技だった。某海賊漫画に出て来る威圧技と似た様な物だ


 「ほう。気絶はしませんか」


 俺は片膝を付きながらも意識を保ち、歯を食いしばって琥珀色の眼で見上げる王女の姿を意外そうな声を出して見下ろす。手加減をしていたとは言え中々骨がある。面白い


 俺は目を閉じて【覇王の威風】を解いた


 「良いです。やりましょう。但し一回だけですよ?」

 「はぁ、はぁ、分かったわ」


 俺の不遜な言葉に王女は荒くなった息を落ち着かせながら返す。俺は先程の戦いで無事だったナイフを右手に逆手に持って構えた。それに合わせて王女も大剣を正眼に構える


 「只、どうなっても文句は言わないでくださいね?」


 そう言って悠然と立つ俺に王女は上段から剣を振り下ろす。半身になって避けると王女はすぐさま横薙ぎに振ったので後ろに跳んで避ける


 暫く王女の斬撃を避け続けて分かったが太刀筋は悪くないがフェイントが無いので避けやすい。正直な剣と言えるだろう


 「十分です」

 「っ!?」


 俺は指を伸ばし、手首のスナップを聞かせて刃を指と同じ向きに変えると返す手で王女の額に目掛けて投擲する。王女は咄嗟に大剣の腹を向けて翳し、それを防ぐと直ぐに反撃する為に大剣を構えて斬りかかろうとする。しかし


 「い、いない!?」


 大剣を構え直したセレスティアの目の前にアルベルトの姿は無かった。混乱して頸を左右に動かしていると背後から腰に強烈な衝撃が加えられた


 「がっ!?」


 前に弾き飛ばされたセレスティアの前に何時の間にか立っていたアルベルトが脇腹を蹴り抜いて直角に体を飛ばす。セレスティアは空中で体を捻ると両脚で踏み締めて着地して先程までアルベルトが立っていた場所を見るが既に影一つない


 「くっ!何処よ!?卑怯者め!姿を見せて正々堂々正面から私と戦いなさいっ!」

 「良い事を教えてやるよ、王女様。卑怯汚いは敗者の戯言なんだぜ?」


 辺りを見回して叫ぶセレスティアに嘲笑い小馬鹿にする様な口調でアルベルトの声が聞こえる。すぐさま大剣を横薙ぎに振り抜いて振り向くとそこには誰もおらず、斬撃は虚しく空を切った


 【気薄影身】で気付かれていない俺はその瞬間、背後からナイフに取り付けたワイヤーを繰り、王女の両腕ごと上半身に巻き付けて縛り上げた


 「きゃっ!?」


 そのまま王女の脚を払って後ろに引っ張ると少女らしい可愛らしい悲鳴を上げて体を宙に浮かせる。俺は左腕を背中に滑り込ませて支えると右手の逆手に持ったナイフの先端をを頸に当てた


 「勝負あり(チェックメイト)。俺の勝ちです」


 俺はそう言うと王女は呆然とした表情で固まっていた。周りの兵士達は喝采を上げている。仕える主の娘が負けたのにそんな事をして良いのだろうか?


 「王女殿下?」

 「ひゃい!?」


 俺はナイフとワイヤーを退かして反応がない王女の顔を覗き込むと王女の顔がボンッと音が聞こえそうな勢いで赤く染まった。どうしたんだろうか?


 「え、あ、あの!早く立たせて貰えません!?」

 「あぁ、すみません」


 俺が謝って立たせると王女は顔を赤くして大剣を地面に置いたまま王城の中に走って消えて行った

解説

初版の魔導書グリモワール・オリジン

文字通り数ある魔導書の初版。複製品に比べて内包する魔力や情報が多い

又、意思があり所有者を選び、焚書ふんしょや裁断されても所有者の下で再生する

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