表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刻界の魔術師は生まれ直して気儘に歩む【旧題・刻界の転生魔術師】  作者: 銀闘狼
4章【ファルス製薬医薬研究所】
117/156

104.人より堕ちたる嗤い道化は、されど宿す矜持は死する其の時まで高く掲げ

E-D通路戦、決着!


…今更だけど設定していた【魔人名】を全く使って無いなぁ

 カナリアの号令と同時に孝義と鏡華がそれぞれの目標へと動き出す


 鏡華は伸びてくる流体金属の触手を鎖で弾きながら鈍色のローブへと接近する


 相対距離5m―鈍色のローブから伸びる触手の数が増す。鏡華は鎖で弾き続けるが、細くなった代わりに数が増えた事ですり抜ける触手が出始めた


 相対距離3m―最低限の触手を弾きながら此処まで進んだ処で、業を煮やしたのか、それとも危機感を覚えたのか一瞬、触手を全てローブの中に引き戻すと磯巾着の様に通路一杯に広げる様に一斉に細い触手を伸ばす


 鏡華は正面に向けてショットガンを構えて引き金を引く。放たれた散弾が中央から伸びる触手を近くにある触手諸共吹き飛び、振るわれた鎖が周囲から迫る触手を弾いて空いた空間へと更に進む


 相対距離1m―鈍色のローブの表面が波打つと、アメーバの様に形が崩れて鏡華を包み込もうと体を広げて覆い被さる様に迫る


 鏡華は銃口を上に上げて、鈍色のローブの頭上に当たる方向に向けると、未だに広がる流体金属へと引き金を引く


 残り一発の散弾が容易に流体金属を吹き飛ばして風穴を開けると、其の穴を通す様に鎖を伸ばして天井に錘を突き刺して、鎖を引き戻して穴が閉じる前に通り抜ける

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 一方の孝義は、襲い来る量産ジョンソンを左右のトンファーブレイドで斬り捨てながら前に進む


 物量で押し潰そうと肉壁の穴から這い出て、肉の津波の様に互いを踏み付け、押し退ける様に襲い掛かる其れ等を斬り伏せる孝義を支援する様に、左右と頭上のジョンソンを背後から放たれる弾雨が穿ち、瞬く間に粉々にする


 「《仙術》地之型【流水車】、《換装》」


 孝義は一度立ち止まると其の場で一回転し、両手のトンファーブレイドで襲い掛かるジョンソンを受け流すと、トンファーブレイドと【鬼斬】を《換装》で入れ替えて姿勢を低くし、鞘を持つ左手を腰に当てて居合の構えを取る


 「《仙刀術》地之型【瞬閃華】」


 孝義の姿が其の場から消えると、肉壁の前で【鬼斬】の切っ先を下ろした状態で現れる


 次の瞬間、孝義に襲い掛かり、今は背後にいるジョンソン達の首や胴が、数拍遅れて断ち斬られ、鮮血を噴き出して飛び掛かる勢いのまま力無く床に落ちる


 肉壁が動き出すより先に【鬼斬】を《換装》で、やたらとゴツゴツした某宇宙でビームサーベルやら銃やらで戦う乗り込み型の白い戦闘ロボットか何かの右腕のパーツにも見える、重装甲の籠手かガントレットらしき機械―【撃発式試作荷重武装拳・弐式肆型】に入れ替えて、腕に固定する為のベルトも付けずに拳部分の内部にある棒状の持ち手を軽く握って、前に踏み出しながら腕を大きく引き、肉壁へと拳を突き出す


 「《仙術》【波衝撃】」


 重装甲の拳が肉壁に接触すると同時に【撃発式試作荷重武装拳・弐式肆型】の分厚い装甲部に内蔵された、狙撃砲の薬莢を改造した【推進弾】六発が起爆し、噴気孔から砲火を噴いて物理的に重い一撃を加速させる


 加速によって威力が増した拳が肉壁に深く沈み込み、直前に纏った魔力が振動となって拳から衝撃が肉壁全体へと伝播していく


 拳が肉壁を貫通すると、全体に広がった衝撃が吸収しきれない振動となって細胞の結合を緩めて自壊する程に脆くなり、崩れ始める


 腕に固定していなかった【撃発式試作荷重武装拳・弐式肆型】が突き出した勢いのままロケットパンチとなって、射線上にある触手や量産ジョンソンを弾き飛ばしながら、肉壁の向こうで固まっていたジョンソンへと飛来し、突き飛ばした


 「今!」

 「「《取り替え子(チェンジリング)》!」」


 カナリアの合図と同時に、孝義と鏡華が指に嵌めている、エメラルドの葉と銀の絡み付く蔓を模った細工が施された全く同じ指輪―【取り換え子の指輪(チェンジリング)】が、二人が告げた起動呪文キーワードに反応してエメラルドの葉が輝く


 そして孝義と鏡華がその場(・・・・・・・・・)で入れ替わった(・・・・・・・)


 「《仙術》天之型【落葉舞おちばまい】、【毒華麗姫ハイドラ】!」

 「分かってる」


 鏡華と入れ替わった孝義は、伸びる触手を空中で受け流しながら落下してカナリアの名を呼ぶ


 カナリアが其れに応えてサーチライトを点灯状態で作り出して鈍色のローブを照らすと同時に孝義が其の後ろに着地して、《換装》の応用で無手の状態から【鬼斬】を喚び出し、サーチライトの光によって生まれた鈍色のローブの影を床に縫い付ける様に突き立てた


 「【影踏み】」


 其の瞬間、鈍色のローブの動きが止まる。この時、脅威の片割れであった鈍色のローブがこの戦場から脱落したのだった

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 「機械があるのは確かあの辺りでしたよねっ!」


 孝義が立っていた場所に現れた鏡華はショットガンをその場に捨てて、両腕から目の前の空間へと伸ばす様にジョンソンとその周囲の空間へと幾条もの鎖を勢い良く放つ


 壁や天井、床に当たった鎖は其れ等に弾かれも、其れ等を壊す事も無くそのまま抵抗もなく沈み込み、別の場所から鎖が飛び出して量産ジョンソンと触手を拘束しながら、其の先にある壁や天井、床に沈み再び飛び出す


 そして投影された幻影の向こうにいる、仰け反っている大元である異形と化したジョンソンを汎ゆる方向から囲う様に鎖が一斉に伸びてジョンソンを貫いた


 鏡華が右腕を引くとジョンソンを貫く鎖の一本が巻き取る様に、通路に張り巡らされた鎖の小さな隙間をすり抜けて、円筒形の何かに巻き付けた状態で鏡華の手元に戻ってくる


 高さと上下の直径が30cm程の、小さなランプや端子か何かの接続口らしき部分のある鈍い銀色の機械的な円筒の本体に、秋葉原等にある専門店で売っている様な何かの機械部品を改造して組み合わせた様な幾つかの付属機械と、玉虫色の膜を張った鼓動する様に蠢く黒い肉塊がくっついた其れは、冥王星ユゴスからの侵略者であるミ=ゴの超科学によって作られた、脳缶という呼び名で知られる生きた脳の収容容器に何等かの目的の為に改造を施した物であり、側面の歪曲した透明な窓から見える淡緑色の若干濁った液体に満たされた内部には確かに何本ものコードが接続された人間の脳が収められていたのだ


 空間に広がっていた光による幻影のヴェールが払われ、拘束された肉体は力を失いながら、急速に時間が経過したかの様に形が崩れて床に落ちる。そして崩れたジョンソンの肉体の先に、羽搏いて銀の飛沫を撒きながら忌々し気にこちらを見る一羽の鸚鵡がいた


 「…アァ…、私ハ…?…ソウカ、ダメダッタノカ」


 脳缶に接続されたスピーカーらしき部分からノイズ交じりの罅割れた理解と諦念の溜息混じりの声が流れだす


 「【嘲りの道化師(スマイリーピエロ)】マルコス・ジョンソンですね。詳しく―」

 「――【神怪課】か?私と同じ裏切り者か?其れとも愚かな蛮勇を掲げる探索者か?…誰だか知らないが私を止めた序に此れから死ぬ脱落者の独白を聞いてくれ」


 黒い肉塊がスピーカーらしき部品の接続部に蠢く脳缶へと向けられた鏡華の言葉を遮って、先程と比べて流暢になった声が流れだす


 「私は既に何も見えないし、聞こえない。この声すら流れているか、流れているとして何時途切れるか分からない。故にこれは骨董品のビデオメッセージとでも思ってくれ


 …本題だ。【研究所】に聳える巨木は【豊穣の神】か其れに相当する存在を呼ぶ【発信機】であり、本命の【地下研究所】へと力を周囲から集める【受信機】と伝える【導線】だ


 五人の権限を持つ者の内、一人は屋上に、もう一人は何処かへと向かって三人いる。手遅れで無ければ少なくとも屋上から戻る事はない


 残念ながら詳しく知る前に気付かれて喋る鳥風情の傀儡になってしまった。利用される振りをして利用しようとした男の末路としてはお似合いかもしれないがね


 こんな事は筋違いで、私みたいな者からの頼みなんて聞きたくもないかもしれないが、其れでも託すとしよう


 これは私の意地だ。利用されて、意思を消されて挙句の果てに使い潰された愚か者の最後の矜持だ!


 利害の一致でも、一時の同情でも何だって構わない!奴らを討ち、計画を阻止しろ!今はどうなっているか分からないが、止めなければ確実に手遅れになる


 …最後に派手に報復と行かせてもらおうか。【起爆】、そして【仇成す者、裏切る者。我は汝の死を願う。二つ穴より因果を繋ぎ、致命の呪刃を振るいて汝と逝こう。復讐するは我にあり。我が身、我が命を以て汝に死を与えよう】《共斃れの呪刃》っ!」


 上階や辺りから爆発音が通路に響く


 そして最後の詠唱が完了すると同時に、鸚鵡の背後と鏡華が持つ脳缶の前に、虚空から儀式で使われる様な奇妙な装飾が施されたナイフが現れて、それぞれに切っ先が向くと次の瞬間、鸚鵡の背後と脳缶をナイフが根元まで深く貫いた


 ナイフが空気に溶ける様に消えて、鸚鵡の体から流れ出す銀の液体が混ざった血液と共に力が抜けて地面に落ちる。其れと同時に孝義の能力で動きを止めていた鈍色のローブが、自身が液体であった事を思い出したかの様に形が崩れると、そのまま床に広がっていく


 脳缶からナイフが内部の液体に押し出されて抜け落ち、床に転がると、其処から液体が溢れるにつれて中程に浮かんでいた脳が下がり、張り詰めたコードの先端が脳の接続部から抜ける


 液体が少なくなり、脳が底に着くと水を多く含んだ泥の様に自重によって下から潰れて広がり、形を失って其の機能を完全に停止した


 「…終わったか?」

 「…多分ね」


 暫くの間、周囲を警戒していた孝義の呟きにカナリアが呟く様に答える


 「【盲目の封縛姫】、其れを渡してくれ」

 「どうするので?」

 「最後に覚悟を見せたんだ。此れが終わったら無縁仏で弔ってやるさ」


 そう言って鏡華の傍に近付いた孝義は脳缶を受け取ると、仲間の状態を確認して床に転がる鸚鵡の亡骸と【撃発式試作荷重武装拳・弐式肆型】を回収しようとした其の時、


 ―ピシッ、ピシピシッ


 そんな音が通った通路の天井から聞こえたかと思うと、何時の間にか現れていた幾つもの亀裂が瞬く間に全体に広がり、崩落を開始した


 「天井が崩れているぞーっ!」

 「こっちに来てるだと!?」

 「潰されるぞ!走れ走れっ!!」

 「ジョンソン、テメェ~っ!」


 近付いてくる天井の崩落に一気に騒然となる通路で奥へと走りながら、孝義は鸚鵡の亡骸だけを回収して脇に抱える死の直前にこの事態を引き起こした脳缶の中身へと怒りの呪詛を叫ぶ


 孝義は何処からともなく、慌てた孝義達の姿を見て馬鹿にする様な愉し気な嗤い声が聞こえる気がして、孝義は僅かでも見直すんじゃなかったと後悔しながら崩落から逃れる為に必死に通路を駆けるのだった

・解説×4


取り替え子の指輪(チェンジリング)

・【取り替え子】伝承を再現した【再現伝承級魔導具リフォークロアクラスアーティファクト】の、エメラルドと銀で作られた一対の指輪


・互いが50m以内に居る状態で【魔導具アーティファクト】と同じ【起動呪文キーワード】を双方が唱える事で、其の時点での互いが存在する位置を交換する


・同じ【魔導具アーティファクト】でも対となる指輪でなければ起動しない


【撃発式試作荷重武装拳・弐式肆型】

・腕に装着して運用する機械ガントレット


・拳の先端にあるセンサーをトリガーとして重装甲部に内蔵された六発の【推進弾】を発砲して速度と威力を上げる


・但し、そもそも本体がかなりの重量がある上に、肉体性能を強化した【特異体質者】の試験者の装着していた腕が、軽傷で筋線維断裂及び肩や肘関節の脱臼。最悪の場合、発生した推進力に肉体が耐え切れずに、このガントレットごと腕が肩から千切れ飛ぶ


・加えて【推進弾】の直前の装填及び使用後の再装填が困難な事から、装備として正式採用はされずに試作品となっている


【被験体P-157】

・生体実験の結果生まれた【適合者】の【特異体質】を持つ鸚鵡


・能力は一般的な人間程度まで向上した思考能力と、特殊な流体化合金属の操作。更に流体金属を注入された機械や生物の操作


【共斃れの呪刃】

・【呪物級魔導具フェティッシュクラスアーティファクト】に分類される、とある呪術と魔力を帯びたナイフ


・特定の【起動呪文キーワード】を詠唱するか、鞘から抜いて対象又は自身の急所を貫いた時、残った対象又は自身の近くに魔力で形成された分身が現れて、其の急所を貫く


・複数の心臓や、そもそも存在しない場合を除き、互いに必ず即死する



 最後に鏡華は盲目なので、戦闘時は常時【生命感知】と極細の鎖を周囲に伸ばして把握しています。なので、鈍色のローブみたいな非生物の奇襲が直前まで気付けません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ