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刻界の魔術師は生まれ直して気儘に歩む【旧題・刻界の転生魔術師】  作者: 銀闘狼
4章【ファルス製薬医薬研究所】
111/156

99.研究棟A

暫く投稿出来ずすみません

続きの編集が終わらないのでまた暫く空く可能性がある事を平に謝罪します。申し訳ありません

 植物園に進んだアルベルト達と分かれて、左の廊下を警戒して歩く八重樫と紀矢子含む【神怪課】数名と【公安0課】の三分の一の職員は天井から伸びる蔦を処理しながら進んでいた


 暫く歩いていると、入ってきた場所から見て直角に(あた)る場所に蔦で厳重に閉ざされた鉄扉があった。ご丁寧にドアノブが蔦の巻き付く圧力で破壊されている


 「どうするの?」

 「破壊します。済みませんが爆破してもらって良いですか?」

 「了解」


 八重樫の頼みに【公安0課】の職員は素早く対応して扉に爆弾を設置する。数秒後、爆発し、鍵の部分がなくなった歪んだ扉を、穴に手を掛けて引いて、中に侵入した


 中は植物の侵食はおろか破損一つ無い廊下だった。頭に取り付けた小型のライトが照らす先は、床や壁と同じく白で統一された扉が等間隔に整然と並び、少し進んだ先は右に直角に曲がっている


 【公安0課】や【神怪課】が瞬時に武器を構えてゆっくりと足音を殺して進みながら、暫く何かが現れないか耳をそばだて警戒していたが、いつまで経っても変化はなく、廊下は静まりかえっていた


 「何も現れないわね」

 「油断しない方が良いですよ。何時何が起こるか分からないですからね」

 「報告!植物の活動が再開!こちらに蔦が伸びてきます!」


 僅かに警戒が弛み掛けた紀矢子に八重樫が目を動かして見回しながら言葉を返すと同時に、後ろから微かに聞こえた異音に気付いた【公安0課】の職員の警告の声が廊下に響く。その焦燥混じりの声に全員、背後を振り返ると今まで活動が静止していた蔦が再び活発に蠢き始めて、壁や天井、床を伝って廊下への侵食を開始した


 「扉を閉めろ!」

 「無理です!既に蔦が入り込んで閉まりません!」

 「そもそもノブごと鍵を壊してしまいましたしね…!」


 扉を数人がかりで押さえ込もうとするが、侵入してきた蔦が凄まじい速度で成長して容易く扉を抉じ開ける。街路樹の幹程に太く、長くなっていく何本もの蔦は瞬く間に出入口を塞ぎ、広がる様にして揺れる先端はまるで横倒しになった磯巾着の様で、ゆっくりと迫る様は酷く不気味だった


 「不味いですねぇ。このままでは調べる余裕が無いですよ」


 冷や汗を流しながらひきつった笑みを浮かべて八重樫は呟く。既に扉を閉める事は諦めて、後退しながらの銃撃や手榴弾による爆破は僅かな間、損傷した蔦の周りがヒュッと縮まって固まるものの直ぐに活動を再開する


 切断した場合も切り口から新たに蔦が再生して侵食を防ぐ事は出来ずにいた


 「足止めせず奥に進みましょう。物資が無くなればそれこそお仕舞いです」

 「そうですね。攻撃中止!前に進むぞ!」


 【公安0課】のこの場で最も階級の高い男性の命令で攻撃が一斉に止み、反転して廊下の奥へと足早に進む。時折、牽制の為に攻撃するも、先程と比べて散発的な少ない攻撃では足止めにすらならなかった


 程なくして曲がり角に辿り着き、待ち伏せの可能性を考えながらも確認する事なく武器を進む先に向けて飛び出す


 直ぐに攻撃が来る事はなかった。しかし、待ち構える首や頭部から細い蔦を絡ませて生やす、明らかに正気を失った数人の此処の職員とおぼしき白衣を着た男女が不自然な姿勢で立ち、更にその背後には完全に閉じきった如何にも分厚い無骨な金属の隔壁が行く手を塞いでいた


 「待ち伏せ!?しかも行き止まりよ!?」

 「っ!近くの部屋に避難します!」

 「扉を開けろ!」

 「ちょっとどけ。鍵だけなら…開いたぞ!」


 【公安0課】の職員を【神怪課】の職員の一人がどけると鍵穴に指先を触れさせると数秒、ガチャガチャと高速で鳴ったかと思った時、ガチャリと解錠された音を鳴らして扉が開かれた


 腕を初めとした肉体の変形や、メスや注射器を使って襲い掛かる操られた【変異者】を相手取り、時間稼ぎをしていた紀矢子を初めとする職員達が殿を務める中、雪崩れ込む様に室内に入る。最後に紀矢子が入ると同時に直ぐ側に控えていた先程解錠した男が勢い良く扉を閉めた


 直ぐ様施錠された扉の向こうから扉を攻撃する打撃音や引っ掻く音、扉の表面が溶ける音が絶え間無く鳴り続ける。しかし、少し時間が経つと突然、音が小さくなり、直ぐに止んだ


 代わりに何か縄の様な物が軋む音と、液体が滴る音と硬く細い物が折れる音が不規則に鳴り始める。暫く扉の表面を擦れる音が職員達が息を潜める室内に響いていると、金属が軋む音が鳴り、罅割れる音が鳴ったかと思うとへし折れる音が一際大きく鳴って、再び扉の表面を擦れる音だけになった


 「…今のところ蔦や【変異者】が侵入してくる気配はないわね」

 「それなら数人を警戒の為に扉の前に待機させて、手分けして室内を探索しよう」

 「了解です」


 短い会話を終えた八重樫は室内を見回す。左右の壁にはガラス戸の棚が並び、様々なモニターやスイッチの付いた特殊な形状の機械が奥の壁沿いに数台並び、中央に何も乗っていない長机が一つ置かれている


 遠目から見て機械類は電源が落ちているかスリープ状態で、左右の棚はそれぞれ左には薬品やビーカー等の器具が、右には幾つものファイルや書類が収められているのが分かった


 八重樫は一番近い書類棚のガラス戸に手を掛ける。軽く力を入れて引くと、鍵は掛かっておらずカチャリと小さく音を立てて開いた


 適当にファイルを取り出すと手短に内容を斜め読みしていく。どれも植物の成分とその効果について纏められた研究に関する書類だったが、その内の背表紙に題名が記載されていない淡緑色のファイルを開いた時、中から何かが床に滑り落ちた


 拾い上げてみると下半分以上が破れ、更に所々が乾いた血液で汚れた何かの書類と思われる紙だった


 -----------------------

 薬■レ■■ト


 偶■、■成した■の■■は■■に於■て■敵と■■る物■■た

 ■物の細■壁■■解さ■、■■膜の耐■性を著■■低■■■る作用■■■さ■た

 ■、細■■裂を停■■せて■長を阻害■■る効■■ある様■

 ----------------------


 「これは…」

 「【葬送者フューネラルプロセッション】、こちらを」


 【公安0課】の職員が差し出した物は手帳の(ページ)を破ったらしき端が破れた跡のある四つ折りの紙だった。筆跡は急いで書かれたらしく決して整っているとは言えないが、それなりに読める物だった


 -----------------------

 後から侵入した者にこれを残す


 私はしがない怪奇探偵兼、民俗学の教授をしている者だ


 この場所は監視カメラの映像や現場に残されていたトラックの走行記録から突き止めて侵入した


 既に見たかも知れないがあの大樹は少なくとも私が来た時には下手なビル程もあるにも拘わらず未だ【成長している】様だ。私の経験上、あれは一種の【御神体】或いは【依代】と推測される


 若しくは【カーナビか電子地図の目的地を示すピンのマーク】や、特定の存在の【呼び笛】かも知れない


 どちらにせよ此れを阻止せねばならない


 受付や警備員は到着した時点で既にいなかった。エントランスから此処までの確認出来る限りの部屋は悉くもぬけの殻だった


 此処に来る途中で此処の職員と思われる白衣の男と遭遇したがこちらを認識すると突然襲い掛かってきた。相手がどうも【特異体質】に目覚めたばかりで、戦闘が素人であった為、直ぐに無力化する事が出来たが明らかに普通ではない


 十分に注意して欲しい。君、或いは君達が無事である事を願う


            PS.棚の後ろに扉がある

 -----------------------


 それは後から来るであろう者に残した伝言だった。右下に小さく書かれた文字は余白に詰める様になっており、廊下に出ずに移動するヒントだと推測された


 「棚を調べましょう。これが此処の職員の罠ではなく、僕達と同じ侵入者が残した物なら左にある棚の後ろに隣に繋がる扉がある筈です」


 八重樫は棚に収められた書類の回収や棚を調べる職員を横目に機械類の前に移動する


 その機械はモニターの横に何か下が丸い、試験管と思われる細長い円柱状の物を左に四本、右に一本取り付けられる窪みのある装置があり、それぞれ中央に何かを吸い上げる管が下部分に着かない程度の高さで浮いている


 最初は真っ暗だったモニターは、キーボードのボタンを適当に押すと点灯して『パスワードを入力してください』と表示されている


 「パスワード、ですか」

 「【葬送者】、左の棚の中にあった薬品らしき物は全て空き瓶だったわ。器具は一応、埃がなかったから使用されていたと思う

 それと棚が横に動かす事が出来て、裏に隠されていた扉が見つかって解錠が完了したわ。調べた所、罠の類いはなさそうね」

 「分かりました。直ぐに向かいます」


 八重樫はモニターから目を離すと職員達が集まっている開けられた隠し扉に向かった

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