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刻界の魔術師は生まれ直して気儘に歩む【旧題・刻界の転生魔術師】  作者: 銀闘狼
4章【ファルス製薬医薬研究所】
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97.進行と妨害

昨日、何とか終わりました

え、バレンタインデー?知りませんね

 砲撃と同時に駆け出したアルベルト達の頭上を真っ直ぐに翔る砲弾は直ぐに巨木へと到達する。その間際、勢い良く根元から伸びた蔦が砲弾を遮ろうと絡み合い壁を形成した


 最初の数発は容易く貫かれて本体たる巨木の幹を抉り、樹皮の破片を散らす。しかし蔦が蠢き網状になると砲弾が当たると共に軋ませながらも(たわ)み、砲弾の威力を完全に封殺した。更に砲撃で損傷した幹も周囲の樹皮を剥離させながらゆっくりと、だが確実に再生をしている


 「様子見とはいえこうも直ぐに対処してくるとは厄介だなぁ」


 万城はそう愚痴りながらも周囲のコンクリートやその下の土を素材に砲撃を継続する。うねる蔦に阻まれて少しすると今まで建物の上に這っていた数本の先端が異様に肥大化した蔦が持ち上がるとこちらへと先端を伸ばし、自重に耐え切れなかったかの様に千切れて落下した

-----------------------------

 砲撃と同時にアルベルト達が駆け出すと地面が隆起し、そこから先程生えていた椰子に似た幹の植物が行く手を阻む様に勢い良く伸びる


 「出番だ」

 「うるさい」


 【黒縄】による拘束が解除されると同時に高藤は黒雷化して、生えてきた植物を薙ぎ倒し【医薬研究所】へと突き進む。その際、黒雷を伴った衝撃波が両脇の植物に当たると絡み付き、地下茎を伝ったのか更に周囲へと連鎖的に黒雷の柱が立ち、植物を炭化させた


 高温になった事で樹皮が捲れ始めるもそれより早く黒雷による炭化が進み、中途半端な状態で放出される。地面に当たった種子は衝撃で細い蔦と巻鬚を生やすと直ぐに枯れた


 種子の大半は外れ、それぞれの得物で弾いたが運が悪かった数人がそれをすり抜けた種子に当たってしまった。発芽したそれは素早く犠牲者の皮下へと根を張ると青々とした蔦を絡ませた。そして犠牲者は関節が錆び付いたロボットの様なぎこちない動きで、近くにいた者へと武器を向けて襲い掛かり始めたのだ


 「飛んでくる種子に当たると寄生されるぞ!」


 隣の寄生された仲間のナイフを間一髪でかわし、組み付いて首を絞めて気絶させた【公安0課】の男が大声で後続の仲間に伝える。その間にカナリアは混乱で足を止めた集団の隙間を縫う様に駆け抜けると、指の間に形成した極細の銀の毒針を蔦に寄生された部分の根元に突き刺した


 「おい!」

 「落ち着いて、軽い毒で気絶させただけ。軽い毒でも枯らす事が出来るのか」


 毒針によって蔦が急速に縮む様に丸まり、茶色く変色した直後に全身の力が抜けた様に崩れ落ちた者を慌てて支える【公安0課】の職員にそうカナリアが告げる


 「【影沼】【水底からの呼び手】」


 荒八木が発動した能力により、彼の足元の影が前に急速に伸びて広がり、更にそこから伸びる無数の蠢く影の手によって種子を放つ植物や阻まれた種子が影の中へと呑まれていった


 やがて全てが消え、広がる影が消えると荒八木の指示が下される


 「負傷者とその補助をする者は後退。残りは【医薬研究所】への突入を再開。警戒は厳とせよ!」

 「「「了解」」」


 指示は迅速に行動に移されて各員、周囲を警戒しながら【医薬研究所】へと淀みなく進んでいく。そして入り口まで後少しの所まで近付いた時、軋む様な音に顔を上げた数人が頭上に垂れ下がる物に気付いた


 縦が10m、横8m程の薄い緑の楕円形のそれは落下するとグシャリと半分程潰れて、薄皮が破れ中の液体を地面に広がる。腐敗の手前程まで熟した様々な果実を何倍にも濃縮した様な濃密な甘ったるい悪臭を放つ液体が流れ出るにつれて薄皮が萎み、その中から這い出る様に一目見て顔を背けたくなる様な人型が現れた


 否、それには少し語弊があった


 -ある個体は捻れ絡み合う異様に長い腕をでっぷりとした腹を晒す様に仰け反る丸く肥大化した胴の上に、数本の縮れた毛が生えた小さな頭部がそれぞれ外を向く様に三角形に申し訳程度に乗っていた


 -ある個体は蹄の付いた触手が眼の代わりに瞑目した人間の顔が収められた人間の顔が一面に浮かび、口からは骨が消失した腕の様な舌がだらしなく伸びていた


 他にも輪郭は人型に見えなくもないが、その全てが薄緑に染まった布切れらしき物が所々に張り付いた、吐き気を催す程に冒涜的な、生物の部位を寄せ集めて造られた異形が立ち塞がる様にこちらへと動き始めた


 「各自排除せよ【黄泉手縛り】」

 「了解【瞬閃華・三柱焔神楽みはしらほのかぐら】」

 「【居合・流閃】」

 「【束縛】【八つ裂き】」

 「【生成】【融解弾】」

 「グオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」


 荒八木は命令と共に影を伸ばして拘束する。直後、アルベルトの神速の三連の斬撃が、孝義の居合の一刀が、鏡華の鎖による引き裂きが、カナリアが生成した強酸弾が、髙藤の黒雷がそれぞれの異形に襲い掛かる


 ある個体は下から三度交互に斬り上げた傷口から黒焔が噴き出し、【瘴気】の崩壊と高温で滅却し、孝義の一閃は上下に体を断ち、自重でずれた上半身が地に伏して、遅れて下半身が膝を着くとそのまま倒れて体内の物をぶちまけた


 鏡華の鎖に囚われた個体は細切れに引き裂かれ、カナリアの銃弾を受けた個体は体表が火傷した様に爛れると、更なる銃弾が着弾するにつれてその下の筋肉や骨が腐食していきボロボロになって、近くにいる仲間の攻撃で斃れていく


 黒雷を受けた個体は膨大なエネルギーを受けて煙を上げて一瞬で炭化して絶命し、倒れた際に地面に当たった部分が欠けて、或いは折れてそこら辺に転がっていた


 その時、背後の地面が水の様に波打ち、額と思われる部分に濡れて髪が貼り付いた人の顔が付いた怪魚が奇襲するべく飛び掛かった


 「無駄だ」


 荒八木のその一言と共に伸びた影の手により空中で飛び掛かったままの姿で拘束される


 ふと怪魚の顔を見たアンシャトレーヌが何かに気付いて怪魚に話し掛けた


 「貴方、【ハイドラ海運会社】のアルフレッドじゃない?随分変わり果てたわね」

 「ウ…ァアアァ…」


 額の口から掠れる様な声を漏らしながら、怪魚は拘束から逃れようと体を乱暴に揺らして暴れ回る。すると突然、影の手が融解して拘束が解けた


 荒八木が再び拘束するよりも速く怪魚は下に落下すると、そのまま地面に接触する。地面は液体の様に波打つと怪魚は水に潜る様に地中へと姿を消した


 「総員、突入せよ。俺は殿を受け持つ」

 「了解。突入する」

 「私も残るわ」

 「そうか」


 荒八木はアンシャトレーヌの隣で【第十三支部】や【公安0課】を背中で見送って荒れた敷地を鋭い視線で観察する


 「此処は私に任せてもらえるかしら、支部長さん?」

 「今は【魂狩り(ソウルテイカー)】だ。少しでも対処が出来ないと判断すれば手を出させてもらう」

 「構わないわ」


 その時、地面が波打つ。漣が立つとピラニアの様な牙の生えた小魚の群れが地面を跳ねながら襲い掛かった


 「《魔杖の召喚》、《ヴールの印》、《ヨグ=ソトースの範囲陣》、《萎縮》」


 アンシャトレーヌは虚空から先端に60cm程の白い冷気を発する水晶を取り付けた古めかしい木の杖を呼び出すと、手を2、3秒程動かし何かの印を結ぶ動作を行った


 そして短く省略された二つの魔術を唱えると魚群は跳ねた中空で黒ずみとなって絶命した


 「【触刃(ふれば)の影】」


 アンシャトレーヌの背後が波打つ。そこから怪魚が飛び出した瞬間、影が盛り上がり弧を描く三本の刃が怪魚の胸から顎を切り裂いた


 仰け反る様に背面から地面に倒れていく怪魚へと蛸の様な触腕がその体を絡め取り拘束する。触腕が伸ばした人物ー右半身を緑青の軟体動物じみた肉質に変質させたアンシャトレーヌは、人間の碧眼と蛸の様な縦に割れた瞳孔の金眼で不敵な笑みを浮かべて告げた


 「やっと捕まえたわよ。会社を裏切った清算をしてもらうわね」

 「ウア…ウアァアアアアアアアアアアアアアアア!?」


 怪魚が悲鳴じみた叫び声を上げると触腕の表面が溶解を始める。しかし触腕が崩れるよりも速く触腕が怪魚の全身を覆うと軋む様な音を立てて締め付けた


 怪魚は触腕から抜け出そうと身を震わせる。しかし拘束は解ける所か締め付ける力が更に増し、音が軋む物から小枝が折れる様なパキパキという乾いた音へと変化する


 「さようなら、《萎縮》」


 アンシャトレーヌの別れの言葉と共に告げられた魔術の宣言。その短くも強大な力を持つ言葉によって、怪魚-アルフレッドは凄まじい圧力によって一瞬で数cmまで原型を留めず圧縮され、その際に発生した超高温で元の色が分からない程に黒く炭化した


 それを行ったアンシャトレーヌも無事ではなく、拘束していた触腕の接触部分が黒く炭化し、剥離した部分からはその内側の肉が露出していた


 「家族を裏切る者は許さないわ。絶対にね」


 しかしその痛みを全く感じさせずに、美しさすら感じさせる凄絶な冷めた笑みを浮かべてアンシャトレーヌは誰に告げるでもなくそう呟く。変質した半身を元の少女の様な肌色の張りのある肌に戻すと、僅かに火傷の残る掌を一瞥した後に荒八木に向き直って言った


 「行きましょうか」

 「あぁ」

編集中


解説

魂狩り(ソウルテイカー)】荒八木剛三郎

能力

1.魂への干渉(精神的生命への干渉)

・魂(精神)を物理的物質と同様に扱う事が可能。但し、精神が強い対象の場合は難易度が上がる

2.影の操作

・自身、及び自身の影が接触している影の操作。物理的な接触等が可能。強度等は荒八木の魔力次第。完全な暗闇の場合は使用不可

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