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世紀末の救済者は怪盗!?  作者: 柚葉優月
第一部 日本の世紀末は怪盗が
1/1

平凡と平穏の終わり

初回なのに、長くしすぎたので、短く分けました。

「待て!」


そして、パァン!と、狭い通路に銃声の音が響き渡る。僕は、それを紙一重で避け、走りつづけた。


僕は今、ある男たちに追われていた。その男たちの首領は政治家で、絶大な権力を振りかざしあらゆる地方に不当に圧力をかけ、自身が欲しいものをあらゆる手段を使って手に入れようとする男だ。

警察は、彼を何度も逮捕しようとしたが、彼は賄賂で得た多くの部下を使い、警察を武力で押し返しているのだ。それが、エスカレートしていき、いつしか彼に誰も逆らうことの出来ないようになり、この国の"皇帝"となって、独裁政治を始めるようになった。

彼は、この国の皇帝を名乗っているが、僕からすれば、簒奪者…いや、ただの意志を持った欲望の塊だ。


今、僕を追っているのは、奴の部下だ。僕が何故、奴らに追われているのか、全ては、数ヶ月前のあの事件から始まった…



       *   *   *


「はぁ、あいつが独裁政治するようになってから、この学校も変わっちまったよな~。」

そう言いながら、溜め息を吐くのは、九重雅俊ここのえまさと、僕の幼稚園のころからの幼馴染だ。僕より頭が良く、有名高校に通うことも出来たはずなのに、何故か僕と同じ高校を選んだのだ。

「そうだな。しかも、自称"皇帝"と名乗ってるみたいだしな。」

そ、自称"皇帝"と名乗っている政治家が当選する前は、この学校は、どこにでもあるいたって普通の高校だったのだ。

だが、自称皇帝(都合上そう呼ばせてもらおう)が、当選してからはガラッと変わってしまった。

学校長は、辞職させられ、代わりに自称皇帝の部下が、全てを管理するようになった。表向きは、学校長が不正をしていたから、という理由で学校長の辞職を発表したが、この国の優秀な人間を早めに発見して自称皇帝の都合の良いように育てる為だろう。

「ほんと、何で自分がこの国で一番偉いなんて思っているんだか…。」

と、雅俊が言ったところで、午後の授業の開始の時間が迫っているのが見えて、慌てて教室に戻ったが、間に合ったようだった。

授業中も、そのことばかりが頭でぐるぐると回っていて授業に集中できなかった。


放課後、いつものように帰宅するために近道の路地裏に入った。


「そこの人!どいて!」

と言って何かがこちらに猛スピードで向かってくるのが見えた。間一髪で避けると、その後ろから銃を持った男たちが、走ってくるのが見えた。


男たちは僕を見つけると、銃を突きつけて

「おい、そこのガキ、あの女はどっちに行った?さっさと答えろ。」

と、僕を脅迫した。


僕は、彼女が逃げた方向と違う方向を指差して、自分でも驚くほどの冷静さで「あっちです。」と言った。

別に、あの人の事は知らないし、かばう必要もないのだが、なんとなくその女性は、死ぬべきじゃないと思ったのだ。


男たちの中の一人が、僕の額に銃を押し当てた。

「俺達に遭遇するなんてお前も運がなかったな。まだ若いのにな…。」

そう呟いた後、男が引き金を引こうとした時、僕の体は恐怖で拒絶する意志に反して、動き出した。


僕の身体は、信じられないほどの俊敏さで、僕の命を刈り取ろうとする死の弾丸を避けた。するとその時、僕の全身を支配していた恐怖が消え、意志の通りに体が動くようになった。


「何ッ!」

男は、それに驚いたようで、目を見開いたが、向こうはプロ。驚きで銃の反動に耐えることに失敗して、崩した体勢を直ぐに戻し、2発目を撃ってきた。


しかし、それも軽々と避けると男は、不適な笑みを浮かべて

「へぇ、表の一般人でも"刈り取る者"という意味で『死神』なんて呼ばれている俺の攻撃をこうもあっさり立て続けに避けられると自信なくすなぁ~。」

と言い、もう一丁の拳銃を出して発砲してきた。


そこで、逃げていった女?を追っていたうちの数人が戻ってきて、男に加勢しようとした。

しかし、死神と(恐らくコードネームとかだろう)名乗った男は、

「断る!こんな血が騒ぐ戦いは、あの陰陽師の末裔以来だぁ!俺が一人で戦うぞ!」

と、叫んで加勢を拒否した。


…あの男、戦闘狂バトルジャンキー)なのか…。


加勢しようとした男たちは、頭に手を当てて、ウンザリした様子で「勝手にしろ…。」と言い残し、再び女性を探し始めた。


そして、男たちが去ると、この路地裏には、僕と死神だけが残された。


死神は、ニヤリと嗤うと

「さぁ、始めようぜ、俺とお前の終撃ラスト)戦争バトル)を!」

と言い、礼をしてから拳銃を一丁しまい、数本のナイフを出し、構えた。

向こうが、相応の礼儀を示したので、僕もそれに応えるように礼をした。


「ああ、その勝負受けて立とう。」


僕のその言葉を合図に、僕と死神は同時に動き出した。


僕は、武器を持たず、武術もやっていないし、戦闘経験もない。しかも、相手は殺し屋で戦闘狂だ。

傍から見れば、僕に勝率なんて万に一つもないだろう。しかし、僕には不思議と勝てる自信があった。


      *   *   *


俺は、裕福でもなく貧乏でもないけれど幸せな家庭だった。そう、あの日までは。

その日、俺は友人の家に遊びに行っていた。そして、夕方頃遊び疲れて家に帰った。俺は、帰る途中、雨でも、冬でも、いつも近くの公園でで遊びまっわっている弟が居ないことに違和感を覚えたが、疲れていたため、あまり気にすることはなかった。

ーーそれが、悲劇に繋がることを気付かずに。


「何だよ…これ…。」

家の中の花瓶や食器が全て割られて散乱していて、そこら中に血痕があったのだ。

「母さんッ!」

俺は、最悪の想像をしてしまって、そうでないように神に祈りながら階段を駆け上がった。

ーーしかし、祈りは届かず、最悪の想像は、現実となった。

全身黒服のナイフを持った男が母を滅多刺しにしていたのだ。そして、部屋の中を見回すと、あちこちに傷跡がある父の遺体と、同じく傷跡だらけの弟の遺体があった。

それを見て、俺は吐いてしまった。胃の中のものが全て無くなるくらい吐いてしまった。

そして、男は俺に気付き、血塗れたナイフを掲げながらゆっくり俺に歩み寄ってきた。

逃げなきゃ、と思ったが、足が恐怖で動かず、男がナイフを俺に突き立てようとした瞬間、

ーー男の首が宙を舞った。


「ターゲットの始末完了。」

と、刀を持った男が飛び込んできた。それが、現リーダーとの出会いだった。

そして、リーダーは、部屋の中を見渡し、当時まだ小さかった俺を見つけると、その鋭い視線で俺を射抜いた。そして、いっそう威圧感と殺気を俺に集中させると、俺に問いかけた。


「お前は、殺し屋として生きる覚悟があるか?」


俺は、当然「ああ。」と、答えた。双眸に暗い光を湛え復讐の炎を燃え上がらせながら。


そこからだ、俺の生活が変わったのは。俺は、組織の一員として、大勢の人間を殺してきた。時には、非情な決断をして組織仲間が死ぬことも多々あった。


そして、数々の苦難を乗り越え遂に俺の家族を殺した組織のリーダーを暗殺する事に成功した。

しかし、それでも俺の心には、ぽっかり穴が空いたままだった。

心の傷が塞がらず、目的も失った俺は、ただ流されるままになってしまった。そうして、俺に舞い込んできた次の仕事は、とある陰陽師の末裔の暗殺だった。


その陰陽師の暗殺は、気付かれたが、何とかしとめることが出来た。だが、そいつを殺すときに愉しさを感じてしまった。そう、俺は家族を殺した快楽殺人者に近づいてしまっていることに気がついた。いや、既に気付いていて、認めたくなかっただけかもしれない。


そして、更に時が過ぎ、この組織の大半が皇帝に吸収された。そんなある時、俺の元へ仕事が入った。それは、かの有名な財閥のお嬢様の暗殺。その少女の暗殺に向かっているとき、無断でついてきた皇帝の部下がミスを犯し、少女に気付かれた。それで、追跡している途中に何の関係もない青年が歩いていた。仲間や、皇帝の部下は、少女の暗殺に向かったが、俺は、この青年に興味を惹かれた。だが、目撃者は殺さなければならないのが絶対のルール。そうして、俺は、青年の額に長年愛用してきた拳銃を押し付け、撃とうとした瞬間、青年の目が光った気がした。俺は、銃の引き金を引くと、青年は、目にも止まらぬ速さで銃弾を回避した。俺は、その変わりように驚いてしまったが、戦場では、そんな気の緩みが、死に直結するため、直ぐにもう一発、今度は脚を狙ったがやはり、異常な速度でかわされた。


すると、仲間が援護に回ろうとしたが、適当な理由を付け、拒否した。

この時、俺は既に直感的にこの青年が、俺が狂う前に殺してくれると理解したからだ。


だから俺は、その青年に殺し合いの決闘を挑んだ。

全ては、破滅を避けるために。


      

誤字、脱字がありましたら、ご指摘していただけるとありがたいです。

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