婚約破棄したらまさかの…
短いですが、読んでいただけると幸いです。
「アリア・ブラッドベリー!貴様を婚約破棄にする!」
某世界、某国、某パーティーにて某国の王子、アレクサンドロス・アレクサンダーが声高々に叫んだ。
アレクサンドロスは金髪で整った顔付き、正室の子という申し分ない王子だった。
…浮気性でなければ、と人々は云う。今も側には令嬢がコバンザメのようにくっ付いている。噂では王の側室に手を出したとか。
側にいる令嬢はレイカ・トゥエンスという。ピンクの髪に淡いピンクの目。綺麗というよりは可愛いが似合う女の子で聖女だった。
…尻軽でなければ、と人々は云う。王子だけでなく、魅力的な男なら誰にでも擦り寄り、足を開く。噂では王子の秘書とも関係を持っているとか。
アレクサンドロスは自信ありげに理由を叫んだ。
「俺の愛しの人であるレイカ・トゥエンスをイジメた罪だ!」
叫ばれた相手のアリア・ウィングは胸まである茶髪に翠の目の二重瞼、豊かな胸の持ち主で申し分ない令嬢だった。
…男勝りでなければ、と人々は云う。騎士団に混ざり決闘などは日常茶飯事。噂では彼の団長に勝ったとか。
何だソレ知らねえよ、と呟くとともにアリアは溜め息混じりで言った。
「イジメた、とは?いつ、どこで、どのように、なのか事細かに教えて頂けないと此方もどうしようもございません。」
「レイカ、答えなさい。俺が許す。」
「…え!えーと…。あの、私、ブロッコリーが食べれないじゃないですか。なのに、アリア様がブロッコリーをパスタに入れたりして。あとは私のドレスが隠されてたり?あ、あとあと、ベットにカエルがいて。そのときは、偶々ジョージがいたから、良かったけど、いなかったら私!」
私!と叫んでアレクサンドロスの背中に顔を押し付け泣き出すレイカ。冷めた目で見る周りの人々、とアリア。アリアに至ってはブロッコリーの件辺りで、んなこと知らねえよ、などと呟いている。
「俺の愛するレイカになんてことを!」
激高するアレクサンドロスをアリアは液体窒素もびっくりな程冷めた目で見つめ、だから知らねえよ、と呟いた。そしてアリアはジョージに向かって言った。
「えと、ジョージ様?あなたは殿下の秘書だったのでは?しかも、彼の公爵の三男では?何故、殿下の恋人の寝室に?」
「わ、私はその女狐に誘われて関係をもっただけです!私は悪くない!」
それを聞いたアレクサンドロスが叫び、レイカが悲鳴をあげた。
「き、貴様、俺とレイカの仲を知っていながら!」
「ジョージ様。私、何故いたか、と聞いているのですが。やましい事が無いなら言い訳なんてしなくていいですよね?」
「それは…その、レイカ様が…私に、その。」
しどろもどろになるジョージを一瞥するとアリアは言った。
「連れて行きなさい。」
「「「「イエスサーッ!」」」」
アリアの一言で騎士団が素早くジョージを連れていった。団長にはしない最敬礼をして。団長はどこか遠くを見つめている。その間、ジョージは抵抗しなかった。ただひたすらレイカを睨んでいた。
「さて…私、あなたがブロッコリー食べれないとか知らないんですけど。どうやってパスタに入れるのよ。私は給仕じゃないし、無理だっつの。あと、ドレスの件もカエルもあんたの部屋に入れないから無理。入りたくないしあんな少女趣味な部屋。あー、言ってる意味分かりますか?聖女サマ?
それと、殿下は聖女様のことお好きだったんですか?私気付きませんでした!だってセロリをスープに入れさせたり、トマトを弁当に詰めさせたり、ネックレス隠したり、初等教育生なんですか、ってことをなさってたじゃないですか。」
呆然としていたレイカがアレクサンドロスを睨みはじめた。アレクサンドロスは真っ赤になって否定しているが、信じる人はどこにもいない。
「まさか、全部アレクサンドロス様が?」
「っ!レイカはやってないことを信じてくれるよな?」
「だから!アレクサンドロス様が全て行っていたと?」
「…ああそうだ!でも、それ以外にアリアがやってると思ったんだ!」
「そんなっ!私がどれだけ傷ついてたか知ってた癖に!心当たりあったんでしょ!」
罵り、殴り、引っ掻きあい、醜い喧嘩を始めた2人を一瞥し、アリアは遠い目をしている団長の元へと走っていった。そして騎士に負けない礼をすると言った。
「私と結婚してくださいますか?」
「ええ。お嬢様。」
その間団長は遠い目をしたままだった。
アレクサンドロスとレイカは破局寸前までいったものの、結局王がとりなしてなんとかやっている。アレクサンドロス弟が王位を継ぎ、アレクサンドロスは王兄として、レイカは元聖女として日々仕事に終われている。
ジョージも軽い刑で終わり、文官として一生懸命働く傍ら、鬼嫁と子育てに奮闘している。
アリアと団長は下町で幸せな家庭を築いている。多くの子供に囲まれ、彼らの家からは笑顔が絶えることはない。
婚約破棄したらまさかの王子がイジメていて、全員幸せになりました?
お読み頂きありがとうございます。
改稿しました。