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慮る  作者: 樒 七月
6/8

6 恋は綺麗なものだと思っていた

「一郎くん!」

 「ただいま」を言ってから靴を脱いでいたところで、優がリビングから顔を出した。

 兄よりイチローか。まあ、家に来るのは久しぶりだしな。勉強会にはイチローの家の方が都合が良い。俺の家だと、優の勉強も見ないといけない。一年間意識不明で入院していたから、一年生の勉強を飛ばして二年生の勉強をしている。簡単な読み書きや算数は幼稚園で習っていたから問題ないけど、他の教科はさっぱりだ。

 友希は3月まで小学生の家庭教師をしていたから、優の相手をしてもらっていた。もちろん、家庭教師の料金は払っている。金の受け取りを遠慮されたけど、優の家庭教師は仕事だ。仕事には報酬が出る。優もすぐに懐いたし、ちょうど良かった。

「ユーキは後から来るからね」

「じゃあ、それまでは一郎くんが教えて」

「俺が教えてやる」

 優の背中を押してリビングに入った。母さんはキッチンでお茶の準備をしていた。

 優と母さんは、イチローをただの友達だと思っている。昨日関係が変わったけど、表には出さない。まだ、その時じゃない。

 母さんからお茶と軽食を受けとり、机に置いた。

「一郎には第一志望に合格してもらわないといけないからな。自分の勉強優先だ」

「はーい。お兄ちゃんも頑張ってね」

 優は宿題を広げ、漢字の書き取りを始めた。教えなくて良いものから始めるとは。友希が来るまで大丈夫かも。

 イチローは過去問集を出して、黙々と解いていっている。

 こういう勉強する環境っていうのは大切だ。みんな一緒、というのがやる気を出させる。目標があるから、それを目指して努力できる。

 まずは、一緒にいることで得るものがあると思ってもらおう。

 今日の課題を机に広げて、自分の勉強を始めた。


 玄関のチャイムの音でハッとした。集中しすぎていた。

 イチローは。優は。今どうしている?

 優が玄関に走っていくのが見えた。

 イチローは、頬杖をついて俺を見ていた。

「すごい集中力」

 フッと笑って立ち上がり、玄関の方へ向かっていった。

 何だあれ。俺が勉強しているところをいつから見ていたんだ。あんなに穏やかな表情、初めて見た。幼馴染みたちは見たことがあるのかもしれないけど。

 やばい。ハマりそうだ。

 この気持ちに名前を付けるなら、きっと綺麗なモノじゃない。

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