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慮る  作者: 樒 七月
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3 両想いから始めよう

 放課後、いつも通り汐里と陽介と3人で帰ろうとしたところで。

「圭太?」

 校門を出たところの道路の向かい側に、圭太が参考書を読みながら立っていた。有名校の鞄を持っているから目立っている。女子の「誰を待ってるんだろー」「カッコよくない?」という声が聞こえた。

 圭太は出会った時は小柄で頭一つ分くらい差があったけど、今は俺より少し低いくらいの高さになった。顔は普通だと思うけど、有名校というブランドがカッコよく見せている気がする。眼鏡が似合っているし。

「早速お迎え? 相変わらず行動が早いね」

 汐里は圭太に駆け寄って声をかけた。圭太は顔を上げて、汐里を見てから俺に視線を移した。

「一郎、宮木たちに話したのか」

「うん。二人に隠すことじゃないだろ?」

「……そうだな」

 圭太は呆れたように苦笑した。

 圭太と付き合うことになったことを話したのは汐里と陽介、それに友希だけだ。

 同性と付き合うことの障害くらいわかっている。だから、知っていて欲しい人にだけ話した。

 両親にも、兄さんにも話していない。いつかは話すけど、それは20歳以降だ。親権者の承諾が必要なくなって、自分一人で生きていけるようになってから全部話す。

 それまでには圭太と別れているかもしれないけど、覚悟はしていた。

 もし、圭太が俺と生きていくことを選んだなら。

 その時は全力で幸せにしてあげたい。

「圭太、一郎を傷付けて泣かせたら許さないからね。一郎が望まなくても、引き離すから」

「わかってる」

「うん、じゃあ一郎をよろしくね」

 汐里は陽介の腕を掴んで駅の方は向かって行った。陽介は何か言いたそうだったけど、結局何も言わずに汐里に従って帰って行った。

 まあ、陽介も汐里と同じように心配しているんだろうけど。

 両親はそれぞれに別のパートナーがいて離れて暮らしているし、兄さんは研究を理由に滅多に家に帰ってこない。一番好きで信頼していた従兄のお兄ちゃんは中学3年の時に亡くなった。

 そんな俺の環境を知っているから、汐里と陽介は俺が好きになった人と付き合うことになったことを反対しないで応援してくれているんだろうな。好きになった相手が同性だということは関係ない。俺が『好きになれた』ということが重要だ。

 もし、従兄のお兄ちゃんが生きていたとしても、お兄ちゃんに向ける愛情とは違う。

 恋愛感情で人を好きになるって、こんなに違うものだなんて思わなかった。1年前から特別だった。でも、その時は恋愛感情じゃなかった。一緒に行動する内に圭太のことを知って、惹かれていった。俺が助けられなかった女の子の兄だと知ったときは絶望したけど、優ちゃんがいなかったら、俺は圭太に惹かれなかったと思う。

 圭太が俺を好きだと言ったから。この想いが恋愛感情に育っていたと知ったから。

 両想いから始まった恋を、大切にしたかった。

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