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紅雪姫  作者: ぴこ
リンゴのアイリス
3/20

エルバとの全く無意味な乱闘(エルバにとっては挨拶みたいなもの)が終わると、次はエルバと村の井戸まで歩いく。


…眠い。

思わずあくびをした瞬間、自分の喉元に何かがすごい速さで飛んできた。


それを喉に突き刺さるか突き刺さらないかの位置で指を挟んで受け取り、飛んできた『それ』に目を移すと、弓矢に一枚の何も書かれていない紙切れがついていた。

そして、その右端には小さい文字で、ただ一言『空へ』と書かれていた。


今時こんな古いやり方で敵を殺そうとするやつなんていたんだな、と苦笑いしつつ、エルバと目配せをした。


そして、その紙を空高く舞い上げ、呪文を唱えた。

すると、真っ赤な文字が、花火のように浮かび上がってきた。


『キヅイタコロニハ』


「もう遅いって?」


ギンっと金属のぶつかり合う音がまた響いた。

あたしの首筋にはナイフ。

そして、首に食い込ませないように絶妙な位置に構えられた、エルバの槍。


んっとに、いるんだなー。こんなマンガに出てくるようなロマンチストな敵がさ。


あたしはリンゴを軽く宙へ投げ、レイピアを構えた。

そして、改めて人数を確認する。


1、2…4人か。

今回は少ない方だね。舐められたもんだわ。


ぱっと見、インギュアの紋章を背負っているので王国兵で間違いない…。


つまり、『容赦せずに』戦えるということ。


あたしは片足でドンっと地面を踏むと、その部分が赤く光だし、あたしの後ろにいる敵のさらに後ろに、真っ赤な龍がいた。


「食われたい?それとも…消されたい?」


選ばせてやるよ、とどすの利いた声で言ってやれば「で、出直してきます!」と涙声ですぐに逃げていく男達に思わずため息をついた。


ここ最近あたしの事を殺しにかかろうとしてくる輩が多い。

そいつらのことをエルバに聞いて調べてもらったら、なんとあたしの生まれ故郷のインギュア王国兵らしい。


何故『死んだ』事になっているあたしの命を狙ってくるのかが理解できないけれど(殺し損ねたからと言っても、国籍は消えているため、それは意味の無いことらしい)、狙ってくるやつの大半が弱っちいのばかりだったからエルバと一緒に蹴散らして行って、腹が立つやり方をしてくる奴は、それ専門に扱ってるおっさんに拷問してもらったり、逆に働かせたりして見過ごしていた。

ただ、そこで誤解して欲しくないのは、ちゃんと生きて返しているということ。

人は一人も殺したことがないということだ。


完璧に敵が居なくなったことを確認すると、エルバが手招きしてきたのを合図に、井戸の後ろに回り込んだ。

エルバはそっと目を閉じ、片手を上げて呪文を唱え始めた。


すると、井戸が光りだして二つに分裂し

、真ん中に階段が現れた。


「いくよ」


そういうと同時に『何か』に背中を思い切りしばかれて、バランスを崩し、思い切り階段の中へ落ちていく体。


…落ちていく体?


体!?


「え、エルバァァァア!!!」


「さっさと入らない方が悪いのよ。ばーか」


エルバは落ちていくあたしのほうを見て鼻で笑うと、敵がいないかもう一度確認してから井戸を閉めた。

…器用にヒレで。


あたしは次に来る頭からの衝撃でまた悲鳴をあげることになるのだった。


。。。。



落ちた先は(本当は階段で降りていくんだけど)松明が付けられていて、洞窟のようになっている。


ここはあたしらインギュア王国の反逆チームの秘密基地。

作ったのはもちろんエルバ…と言いたいところだけど、エルバよりもでかい立場の違う人。

まぁ、この人については後から説明するとして。


ただ、ここで寛ぐための場所ではない。

国を追放された人たちが協力しあって武器を作ったり売ったり、稽古までつけてくれる場所でもあり、時にはインギュアに壊滅させられた地域のレスキューをしたりする事もある。


あたしはエルバに拾われてきてからずっとここで育ってきたため、居心地がよく、ここにいる。

だが、生まれて間もなく追放されてしまったため、記憶がないのでほかの人の恨むという気持ちが、あたしには無かった。


なんてったって、さっき出くわしたような弱い人達のイメージしかなく、話を聞いていても蹴散らせるのにな、なんて思ってしまう。


だけど、皆がみんなあたしみたいに戦闘をしていると言ったら嘘になるので、自分の剣で守っていきたいと思っている。


その剣技を教えてくれたのもエルバで、ここまで育ててくれたのもエルバだった。


その時から思うのだった。

王国に敵意を向けるより、エルバたちへ、お世話になってる反逆チームの人達への恩返しを優先したい、守りたいって。


ちらりとエルバのほうを向くと、エルバもあたしの方を見ていて、なによと呆れたように笑った。

なんか、照れくさくて言い出せないけれど、拾ってくれて、助けてくれて本当にありがとうね。

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