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紅雪姫  作者: ぴこ
覚醒した力とその対価
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突き刺さる現実と力

「まず俺は、一般市民じゃねえんだよ」


第一に告げられた言葉に思わず固まってしまった。


どういうことだろう。

一般市民ではないということは、貴族かなにかだろうか。


いや、貴族なんて高貴な身分のものを国は追放対象になんてするのだろうか?

じゃあ、エルフやドワーフなどの他種族とのハーフだろうか?


ずっと考えをぐるぐると渦巻かせていると、アザレアは自嘲気味に笑った。


「お前に嫌われる覚悟で言うぞ?…俺、実はインギュアの第一王子として生まれたんだ」


…ん?


一瞬、何を言われたのかが全くわからず、あたしの頭はショートしてしまった。


あたしの心は自分が姫だといった。

だが、アザレアは苦しそうに笑っているのを見ると、とても嘘をついているようには見えない。


改めて考えてみるとあたしは記憶を失っていて、もうひとつ思い出せない理由があると。

その話とアザレアの話をつなげると、合点がいく。


という事はあたし、アザレアの妹だったって事…?

いや、でもアザレアの話によると、アザレアの妹は死んだはず。

そうだ、それに王国の姫は死んだって…。

というか、そもそも王子がいたって話は聞いたことがない。


あたしは、覚悟を決めてアザレアに聞いてみた。


「アザレア、あたしはその話を信じるし、嫌わないよ。だけど、王国に王子がいたっていう話は聞いたことがないんだけど」


そう言うと、アザレアは悲しそうに笑った。


「俺は、生まれつき体が弱かったんだ。だから、王国は弱い王子という存在を隠蔽したかったんだろうと考えている。……本題へ戻るが、俺は腐っても第一王子だ。せめて強くあってほしいと、幼い頃に手術で体の中に氷の特殊なコアを埋め込まれたんだ。だから龍と合体できる。」


そうなると、おっさんがアザレアを殺そうとしたことの謎が解けた。

自分が作った機械を持った、死んだはずのアザレアが現れたのなら、必死に隠蔽するために殺しにかかったのだろう。


まぁ、まとめると全ては王国の印象を崩さないために隠蔽したということ、妹だけが公表されたのは、兄が病弱だったから、か。

だから、死んだことにしたことにしていたのか…。


これですべてがつながった。


あたしはアザレアに向き直ると、手をそっと握った。


「あのさ、アザレア?あんたの妹の事なんだけどさ。その子、きっとどこかで生きているよ。そして、どこかで元気に生きていると思うの」


今は、まだアザレアには教える時ではない。

そう判断したあたしは率直に思いを伝えることにした。


「それでね、次会ったら絶対にこういうと思うの。お兄ちゃんを恨んだり、ましてや憎んだりはしてないよって」


だって、アザレアを見ているだけでこんなに心の中が暖かくなるもん。


「だからね、笑ってよ。次会った時に笑顔でいれるようにさ」


そう言うと、アザレアは照れたように笑い、ありがとうとはにかんだ。


。。。。。


二人で部屋を出ると、マーガレットさんが真っ赤なりんごを持っていた。


「アイリス…じゃったかのう。ちいとばかしこっちに来ておくれ」


アザレアはそこで待っていろ。と言われて、少しびっくりしていたけど、分かりましたと頷いた。


あたしはゆっくりと歩くマーガレットさんについていき、とある広場にやってきた。


「まあ、そう構えるでない。お主に武器をやろうと思うてな」


武器ですか?あたしにはもう武器は…とそこまで言いかけた時に気づいた。

この武器、グレアのおっさんにもらったやつじゃん!


サァーっと青くなっていく顔に気づいたのか、マーガレットさんは豪快に笑った。


「じゃから言うとるじゃろうて。そいつの中身を軽く調べさせてもらったが、中にGPSみたいなものがついておったぞ」


嘘でしょ!?

思わず思い切り地面にそれを投げつけると、中から煙が出てきた。


やばい!そう思った瞬間に煙が消えた。

見上げると、上空に真っ赤なドラゴンが舞っていた。


「こやつがお主のドラゴンか。随分と立派でよくお前さんになついておる」


マーガレットさんが手を上げると、竜はマーガレットさんめがけて思い切り急降下してきた。


危ない!


咄嗟にそこらへんに落ちていた頑丈な木の枝を握るが、なぜかドラゴンはマーガレットさんの真横に綺麗に降り立ち、地面に寝転がった。


「うそ!あたしですら三年はなつかなかったのに!」


地味にショックを受けていると、話はここからじゃとマーガレットさんはドラゴンを撫でながら言う。


「まず、わしが作ったこのリンゴのレプリカはお前さんが持っていたさっきの剣と全く同じ仕組みで組み込まれている。じゃから、ほぼコピーしたものと同じと言っても過言ではないからのう。操作することには支障は出ないじゃろう」


じゃがな、と悲しげな瞳をこちらに向けると、この人はとんでもないことを口走った。


「この剣はな、お前さん自身の憎しみの感情と協和する。じゃから、あまりに強い憎しみを覚えると力が暴走してとんでもないことになるんじゃ」


力が暴走…?

なんかとんでもないことを宣告された気分だ。


「お前さんが憎しみを募らせるたびに、寿命が減っていくと言っても過言ではなかろう。…つまり、言っている意味がわかるな?」


「憎しみに、飲まれるな…?」


「そうじゃ。憎しみは災いを呼ぶ。そう心に留めておくのおじゃぞ」


そう言いのこし、またドラゴンに触れると、竜が粒子化した。

そして、あたしの持っているリンゴの剣の中へ吸い込まれていった。


「アイリス。がんばるのじゃぞ」


あたしは、突然すぎる出来事に頷くしかできなかった。



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