きっとここにいる
なにを見下ろしているかはわからない。
なんとなく見覚えのある後ろ姿は、降りやまない雨など気にしない様子で泣いている。まるでなにかを失ったような背中だ。
時々聞こえる声がなにかを口にする度に、わたしは無意識に反応してしまう。
わたしが誰なのか、この背中が誰なのか、この背中がわたしのなんなのかはわからない。思い出せそうにもない。
ただ、悲しげなその背中を見ていると、抱きしめてそばに居てあげたくなる。
思い出すことも、この人が誰なのかということも、どうだっていい。
今は寄り添っていてあげたい。
寄り添って、その傷を癒してあげたい。
──例えわたしに、実体がなくても……。
ちょくちょくですが、短編も投稿しまくっていこう思います。