にんげんかんさつ
舞台は中世ドイツ辺りをイメージしています。
文章のリズムに気を遣ったので、そこも意識して頂ければ……と思います。
昔、昔の話をしよう。
まずは森。
黒い森がある。
そして町。
その森近く、町がある。
更に人。
町には人が、住んでいた。
それに魔女。
森には魔女が住んでいる。
お約束だよ、約束事。
そうだよきっと。今日のお話も、そうなんだ。
悪いまじょが、悪いんだ。
――悪い魔女は、悪いから
――賢者はみんな分かってる
――俺はずっと眺めてた
ぼくもここから見てきたの。
こどもは広場で遊んでた。
ぼくも遊びたかったけど、仕方ないこと。ガマンする。
さて、そこにはふんすい、大人たちが話してた。
あの子たちのサッカーボール、ぶつからなければいいけどなぁ。
大人はむずかしい顔をして、むずかしい話してるみたい。
「……やはり捨ててしまうのが良いだろうか。」
「悪魔を牽き連れてやってきたらどうする!!」
「子供とは言えやはり悪魔。復讐などされては……」
「しかし、あそこで繋いでおいても……俺の嫁さんも不気味がっていてしょうがない。」
大人たちはふじゆうだ。
ぼくはじゆうだ。とてもいい。
このふじゆうな鎖だって、あれに比べたらじゆうだよ。
いつも自分と他人でおぼれてる。
水たまりにいるありさんみたいね。
――大人はいつも汚いから
――淀んだ雰囲気に浚われて
――罪の波間で喘ぐのさ
――醜く藻掻く木偶のよう
知ってるよ。
あの男の人だって、好きでいじめてはないんだね。
あの人も怖がっている。ぼくを。こんなに小さいぼくを。
おもしろいね。たのしいね。
少年たちのサッカー続く。
おふさいどは分からない。だからかんたんなルールで進む。
あーあ。
一人が転んじゃった。
だけど、誰も気にしない。
いつものこと。
誰も気にしないのも、気にしない。
話す大人も、お店の人も。
それがいつものことだから。
転んじゃった子はメガネを掛けて、いかにも運動苦手そう。
いつも転んでは、いつも泣いている。
いつも一緒に遊んでる。
大人だけじゃなくて子供も大変。
男の子たちでも、ふじゆうなんだね。
――集団心理で踊る喜劇さ
――仲間はずれに成りたくなくて
――夢中で藁に縋り付く
――歴史を見れば直ぐ分かること
――権力は長くは続かない!
でもでも、ぼくはしってるよ。
新しい子が来ることを。
ぼくはなんでも見えるから。
広場の隅の花屋さん。
そこにボールが飛び込んだ。
お花が倒れるダメになる。
お花屋さんが泣いちゃいそう。
きれいなお姉さんだからかな。
大人たちはみんなで怒る。
話す大人も、お店の人も。
みんな怒ってどなりだす。
やっぱりふじゆうなんだろう。
怒るりゆうも、自分のものじゃあないんだね。
――そうともこいつらみんな馬鹿
――頭の弱い繰り人形
――周りに流され、空気に呑まれ
――気付かず、止まらず、考えず!
やっぱりぼくは知ってるの。
お花屋さんはああ見えて、かれしが3人いるってさ。
広場の先の井戸のとこ。
おくさんたちが話してる。
お花屋さんの事みたい。
「あんな顔してきっと裏では~なのよ」
「絶対そうよ。腹黒いのね、あの女」
「誰とでも寝る尻軽女よ」
「男は馬鹿ね盲目ね」
お花屋さんがうらやましいの?
きれいだからかな?
かれしさんがかっこ良いから?
女の人はむずかしい。
むずかしくてもふじゆうだ。
自分を他人できめてるの。
――なんと醜悪な雑言か!
――悪女と悪女の総力戦
――尊厳の基を侮蔑に求め、優越の源を嘲笑に求む
――憐れな小者の価値判断さ
――だからいつまでも劣ってる!
ぼくはそれでも知っている。
みんながふりんしてるって。
みんながそれを隠してるって。
あれはさっきの花屋さん。
男の人と話してる。
男の人には、かのじょがいるの。
未来をちかったこんやくしゃ。
でもその男は花屋にむちゅう。
かのじょのことは忘れているの。
ひっしにくどこうとしてるよ。
花屋さんがきれいだからね。
男の人もふじゆうみたい。
せっかく頭がついているのに、使えるようにならないらしい。
――応とも、アイツは傑作だ!
――愛が何かを分かっちゃいねぇ
――焚き火に飛び込む羽虫のようだ
――結局コイツもただの馬鹿
――世界の形が見えてない
――その本来が視えてない
そうだよぼくは知ってるよ。
そのこんやくしゃはあなたの家で、りょうり作ってまってると。
本当のあいを持ってると。
教会の鐘がなっている。お昼だ。
ゴーンゴーンゴーーン
ぼくの心もふるえてる。
みんな、そっちへ行くけれど、行かない人もいるみたい。
しんこーしゅーきょー?なんだって。
べつのかみさま信じてて、つぼを買うとすくわれる。
1こでリンゴ500こ分だ。
それって本当にかみさまなのか?
お金は大変。むずかしいね。
だからなのかな。
この人達もふじゆうだ。
お金はこの世にないものなのに。
――そうだ!お前は賢いな
――流石俺だぜお前はさ
――それはともかくこいつらだ
――神と金とをごっちゃにしてる
――金を奉ずる不届き者よ
――金が救うは物欲だけだが
――神が救うは心の渇きだ
――金を払って得るんじゃないのさ
――その身を以て冀うんだ
それならぼくも知っている。
あの教会の人たちみんな、しっそな生活していると。
かみを信じる人たちに、ほどこし与えてあげるため。
あの教会のとなりのやぶに、女の子たちがいるのが見える。
どうやら弱った子ねこを食べる、からすを叩いているらしい。
子ねこは右足ケガしてて、歩くことさえままならない。
じきに弱って死んでしまうの。
女の子たちは助けたあとに、子ねこをちゃんとそだてられるの?
それから叩かれたからすさん。
じつは2週間なにも食べてない、子どもがお家にいるんだよ。
ああかわいそうなからすさん。
ネズミを食べても叩かれないのに、どうして子ねこはだめなんだろう。
女の子さえふじゆうだ。
見た目だけでしかかんがえてない。
――まだまだ餓鬼だな、こいつらは
――弱者を助けているんじゃないさ
――可愛い物を助けるような、自分に見蕩れてるだけなのさ
――博愛でなくて自己偏愛の、良い子ぶってる猫被り
――結局の所、自分が一番
――他の物なんて捨て駒さ
ざんねんだけど、知っている。
子ねこはすぐに捨てられて、ろぼうで力つきるって。
からすの子どもは、いまの間に。
わしにおそわれ食べられちゃうの。
ねぇねぇ、みんなは知ってるの?
ぼくはいったいだれなのか?
なにものなのか?なんなのか?
知りもしないのにこんな風にさ。
塔のてっぺんでしばるんだ。
ここからは町がよくみえるけど。
みんなはなんにも見えちゃいないの。
ぼくは一人なんかじゃないって。
ぼくは影が亡いんじゃないって。
ぼくの影はスグ隣にイるって。
――おれの体はイツも影なんだっテ
僕ノ影は
――俺の体ハ
昔、昔に、賢い人に離サレたッて
――だガシかシもう
賢かった人はイナイ。
――居なイカラ
黒い森の、悪い魔女が、来るんだって!!
――ソウスレバ、俺達ハ、モウ一度ヒトツニ
なれるんだ!
――エカイエ・クルツ・エソリヒト・バセナ
最後の審判覆せ
――アウラロ・シエト・スマイエ・バセバ
お天道様が落っこちた
――アブサラム・クオラ・ファンネト・ヒロイエ
邪知暴虐と牙を剝く!
ようやくだ。
<天に響くは哄笑>
<地に荒ぶは鳴動>
<聳え立つ鉄塔の上>
<彼の者は楔を外す>
鉄塔に縛られて何百年か。
影法師と別れて何千年か。
賢者の消失願って何万年か!
……魔女はオレを取り戻した。
黒い森は蠕動する。
善き人も無し。賢き人も無し。
故にオレあり。
影亡き子供は、心の蔭を喰い荒らす。
さぁ、悪徳蔓延る終末へ!
愉しい歌が紡がれる!!
臆病者は挫けたよ
周りの意見に流されて
トゥトゥラルラ・タルラルラ
零落れて知る、身の程を
大根役者は潰れたよ
お零れ与る為必死
でも、時の権力は死に絶えた
元の木阿弥、繰り返す
マネキン達は溺れたよ
思考をやめたその先の
トゥトゥラルラ・タルラルラ
広がる泥沼知らないで
穢れた蛆虫死に絶えた
憎しみ尽くしたその身から
トゥトゥラルラ・タルラルラ
錆が出るのは自明だろ!
独活の大木焼け焦げた
恋人の熱い嫉妬でね
真を見切れぬ凡夫はまるで
首にくす玉付けてるみたい
拝金主義者は暴かれた
身内が金で買収されて
トゥトゥラルラ・タルラルラ
結局金で滅びるの
自称良い子は襲われた
いままでに捨てたあらゆる駒に
トゥトゥラルラ・タルラルラ
恨みを仇で恩返し
世界は拉げた!堕落した!
人は見失い、見誤った!
馬鹿で愚かな木偶の坊
捻子の螺旋を駈け降りる
暗く重くと閉じていく
ジュリオ・ジュライエ・アウロニカ!
「永遠に続く白昼夢」
――にんげんかんさつ 「完成」
童話……でしたか?
冬の童話祭2014参加作品ですし、童話だと思いたいのですが……。
2014/1/3誤字訂正




