表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歌姫の銃弾《バレット》  作者: 栗紀直哉
プロローグ
1/5

プロローグ

歌が聴こえる。


銃弾の雨の下、一瞬の油断が死に繋がる世界だというのに、


俺は自分が思っていた以上にまだまだ余裕みたいだ。


いや、もしかしたらこれはただの幻聴で、俺はだいぶ追い詰められているのかもしれない。


その兵士は崩れかけた家屋に身を隠しながら自嘲気味に笑った。


戦局は変化なし。互いに身を隠しながらの戦闘で、持久戦に持ち込みたいのは両軍ともに同じのようだ。


ほんの少しだけ耳を澄まして歌を聴いてみる。


ゆったりとした曲調、高い歌声、銃撃音や兵士の叫び声のせいで歌詞までは聞き取れない。


歌声は哀しみと憂いを帯びていた。


誰が歌っているのだろう。


鉄と暴力が全てで、死と諦めが満ちたこの戦場で。


その兵士はまた耳を澄ます。


銃撃と人々の怒号の中からかすかに聴こえる歌声には、先程より力がこもっている気がした。


……鎮魂歌≪レクイエム≫だ。


サッと血の気が引き、一瞬だけ訪れていた穏やかな気持ちはすぐにかき消された。


その噂は兵士の間では有名だった。


『戦場でレクイエムが聴こえたら、覚悟を決めろ。


そのレクイエムを聴いて、生きて戦場を出られた兵士はいない。』


全身から汗が噴き出る。さっきまであんなにうるさかった銃撃と怒号が聴こえない。


仲間はどこに行った?俺はここで死ぬのか?


「…いやだ、まだ死にたくない!」


周りを確認する暇すら惜しく、勢い良く立ち上がりそのまま撤退ポイントを目指して走り出した。


そのとき、


『死は佇む、あなたの隣で、静かに、静かに。』


歌が聴こえた。


直後、一発の弾丸が兵士の頭を貫いた。


もう、歌は聴こえない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ