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「――ねえ、メル。今日もボク以外のヤツからエキス、吸ってないよね?」
真っ白な翼を微かに震わせ、天使のエリアルは優しく、けれど絶対に逃がさない力加減でメルの手首を掴んでいた。背後に背負った後光が、なぜか一筋縄ではいかない重圧感を醸し出している。
「吸うわけないでしょぉ……! 私、まだ誰ともしたことないんだから!」
サキュバスのメルは、パタパタと悪魔の尾を揺らしながら顔を真っ赤にしていた。 露出度の高すぎるサキュバス特有の衣装を着ているというのに、中身はとんでもなくピュア。男性はもちろん、自分から誰かに迫るなんて恥ずかしくて死んでしまうレベルなのだ。
「ふふ、本当にかわいい。サキュバスのくせに純潔を守ってるなんて……ボクの愛が届いた証拠だね」 「ち、ちがう! ただ勇気が出ないだけで……というかエリアルちゃん、距離が近いよ!?」
エリアルはメルの耳元に顔を寄せ、うっとりと息を吐き捨てる。
「ねえメル。サキュバスは精気を吸わないと生きていけないんでしょう? ボクの聖気なら、毎日たっぷりあげられるよ? ……その代わり、ボクのことだけ見ててね。もし他のヤツに目を奪われたら、その目抉り出しちゃいたいな」
「ヒッ……! 今、さらっと怖いこと言わなかった!?」
メルの心臓はドキドキしていた。
恐怖からか、それとも――エリアルの綺麗すぎる顔が目の前にあるからなのか。
「でも、精気なんて吸ったら、私、浄化して消えちゃう……」
「大丈夫。ボクのメルへの愛は毒にも薬にもなるから。……ほら、お口あけて?」
そう言ってエリアルが自分の指先を軽く噛み、一滴の聖力を宿らせてメルの唇に触れる。
ほんの少しの刺激と、圧倒的な脳汁感がメルの脳内を駆け巡った。
「ん……ぁむ……っ」
「可愛い。やっぱりメルの初めての相手は、天使のボクじゃなきゃダメだよね」
とろけた目で自分を見つめるメルを抱きしめ、エリアルは白い翼で二人を包み込んだ。
人間界のどんな悪魔よりも執着心が強いヤンデレ天使と、それに毒されつつあるピュアなサキュバスの夜は、まだまだ始まったばかりだった。




