初めて目に収めた色々
今回は真澄視点です
空が誰彼を歓迎するように輝く朝。私は、とうとうこの場所に足を踏み入れた。ゼロさんや両親――といっても、私のではなくあくまでルミナスさんのだけど――などとにかく色々な人から聞いていた"学校"。
勿論楽しみだった。どんな人がいるのかとか、先生はどんな授業するのかとか、屋敷で聞くのと見るのじゃ全然違うから。きっと評判は良くないけど、それはそれなりに精一杯楽しんでやろう。やるつもりはないけど……まだ一年目の秋の入りな今なら、きっと失ってたものを取り返すにも十分だろうから。
そんなこと考えながら送迎の車を降りて歩いていると、豪華な門から少し奥くらいで二人の女の子がこっちに来た。おそらくは、この子達が……なんて思ってた時のこと。
「おはようございます、ルミナス様! このシフォン、貴方様のご尊顔をまた拝見することができて感激でございます!!」
「病み上がりでお身体も辛いのではありませんか? お鞄をお持ちします!!」
――シフォンちゃんも、その隣のクレベルちゃんもこんなことを言ってきた。二人の言ってたことを理解した瞬間、言おうとしたことがぜーんぶ吹っ飛んだ。ホントは手を振りながらおはようって一言かけて、ちょっとどうにか理由は誤魔化して三人で世間話しながら教室に行って、そのまま朝礼して授業受けてって、なるはずだったのに。そのはずだって思ってたのに。
二人には申し訳ないことを考えちゃったのはわかってるけど。なんだか、信じられないものを見てしまったみたいな気持ちになってしまった。
……なに、これ。こんなの全然"友達"じゃない。私の知ってる友達は、もっと対等で気安くて一緒にいて楽しくてって、そういうので……
これじゃまるで、舎弟じゃん。取り巻きじゃん。何が「友人はいるにはいらっしゃった」なの。ゼロさんのうそつき。大切な主人庇ってただけかもしれないけどさ。
……なんて、見当違いかもしれないこと。
「ルミナス様? いかがなさいましたか、もしかしてまだご気分が優れないとか……」
無駄に打ちひしがれてると、クレベルちゃんがそう聞いてきた。シフォンちゃんもなんだか心配そうにしている。私は慌てて大丈夫って言って、鞄も自分で持つって押しきって二人の手を握る。突然こんなことされてびっくりしているのを尻目に、そのまま焦燥感に背中を押されたみたいに慌てて校舎の中に駆け込んだ。
ごめんね、こんなの気分良くないだろうに。
◆◇◆◇◆
教室に着いた私は、未だに困惑した様子のシフォンちゃん達と別れて席に着いた。そうしてぼんやり、ホームルームまで考え事をする。……中身はルミナスさんの二人の扱いのこと。
『貴方様のご尊顔をまた拝見することができて感激でございます』
『お鞄をお持ちします』
――気まずくてさっきはすぐその場を去っちゃったけれど、当たり前のように出てきたこの言葉がやっぱり気になって仕方がなかった。
だって、邪推かもしれないけどあんなのがサラッと出てくるっていうのは使い潰されるのに慣れたかご機嫌取りが染み付いてるか、どうあがいても常識知らずの異世界人の頭じゃその辺に帰結する。場所によっては年取るほど礼儀とか、ゴマすりとかにめちゃくちゃ馴染み深くなっていく国の生まれだから余計に。こっちが日本と価値観とかが違うだけなのか、それとも予想通りあの人が酷いからなのか……残念ながら真実は闇の中だ、聞く勇気もないし。だから今できるのはマイナスっぽい現状を何とかすることだけ、なんだけど……
「……もっと歩み寄るには、どうしたらいいんだろう……身近な人がこれじゃ友達作りなんて夢のまた夢だ……」
私のそんな無意識ながらにも吐き出された小さな呟きは、鳴り響く予鈴と同級生の話し声を重ねられて、誰にも聞かれることなく消えていった。
残念なことに予鈴以降もずっと考え事してて集中できなかったが、ホームルームも無事終わって少ししたら授業が始まった。担任の人は理科担当だっけとなんとなく昨日聞いた話を思い出しながら先生の話を聞く。ちなみに一限目は数学。でも申し訳ないことに、その内容よりも「流石貴族様の学校、先生もそこらの高校(まぁこの世界にそんな概念があるかはさておきになるけど)より質が高いなぁ」とか感じる方に頭が動いてしまって、当てられたのか大声で名前呼ばれるまで現抜かしてた。ちゃんと答えは当てたしコレ以降は仕切り直して授業聞いてたのでどうか許してほしい。
それと、三限目でちょっと待ちわびてた理科の授業がとうとう来た。先生の話はゼロさんから軽く聞いてた程度だったから人柄とかほとんどわからなかったし、実際に教えを乞う時間がいいものになるのを期待してた。……だからこそ、多分期待外れ感も大きかったんだろうな。
ハッキリ言えばやる気がなくて雑で、グダグダでわかりづらい。ダラダラ板書書いて、教科書と同じようなことだけ話して、話し終えたらすぐ黒板を消してまた新しいことを書き始める。そのくせ生徒の切望で設けられた板書写す時間に小声で「なんで俺がこんなショボい奴らを」だの「俺は進路指導のが得意なのによぉ」だの言う始末。席が教卓前だからなのかギリギリ聞こえてるんだよなぁ、というかこんなんに指導されたところで卒業生は恩持てたのだろうか……。
失礼ながらとんだハズレくじ引いた気分で二時間前の数学がもう恋しくなった。貴族学校にもいるのかこういうの。進路指導が得意なら再来年辺りには本気出してくれるといいんだけど。……もちろん、生徒を尊重してくれる方にね。
そんなこんなで午前の授業が全部終わる。昼休みの始まりを告げるチャイムが鳴った途端にクラスメイトが購買なのか学食なのかあちらこちらに駆け出し、人が少なくなった教室には静けさが訪れた。なんとなくそれが落ち着かなくてきょろきょろ教室を見回していると、窓際の席でノートを見返すクレベルちゃんを見つけた。
……困ってるのにつけ込むのは悪いかなと思いつつ、悩みが解決できることを祈って「何か困りごと? よければ手伝うわ」と声をかける。願わくば、彼女と距離を詰めて悩みも無くせるウィンウィンにできますように、と思いつつ。
次回は真澄視点の継続かクレベル視点への切り替わり予定ですが、コレ投稿時点でまだ決めれてないので悩んだらまた余計に更新遅くなるかもです




