生きるは救えない
(人と話したくないな)
そう思うことが何度もある。
そしてそれ以外のことが思いつかないときがある。
(人の世界では生きていたくない)
誰かと話したくないのだから。
誰かと話す必要のない世界へ行けばいい。
(そうだ死んだらいいんだ)
死んだらいいのは分かっている。
生きることに意味がないのは分かっている。
でも自殺することができない。
「神様人生を早く終わらせてください」
だから私は、人生の終わりを神に祈る。
幸せになることは祈らない。
幸せになることは祈れない。
だからせめて早い死だけを祈るんだ。
『分かりました。では人生を終わらせましょう』
目の前に謎のもやが現れて、そんな声が聞こえる。
「お願いします」
私は心の底からお願いする。
こうして私は死ぬことになった。
『生きていたら幸せになるかもしれませんよ』
「いいです。生きていても幸せになることがイメージできません」
『今の辛さを取ることだってできますよ』
「それも大丈夫です。生きていたら幸せになれないことくらい分かっていますから」
生きることは幸せとは一緒ではない。
むしろ生きてなんかいたら幸せにはなれない。
そこで今の辛さを取ってもらっても無駄だ。辛いことと苦しいことしか生きることにはないのだから、また辛さがたまってしんどくなるだけ。
『楽しいこととうれしいこと、それはありませんか?』
「例え少し楽しいことやうれしいことがあったとしても、そんなことくらいで幸せになれるわけないです。死ぬこと以外にいいことはありませんよ」
楽しいことやうれしいことで心をまひさせて生きることは、幸せじゃない。だからもう死ぬ以外に方法はないんだ。死んでしまうほかないんだ。
『分かりました。では今から人生を終わらせます』
謎のもやが部屋いっぱいにひろがり、息苦しくなる。
そして私は身体がふわっとした。
これで死ねるんだ、これで命が終わるんだ。
それはいいこと以外のことはない。
死ぬこと。それ以外の幸せはないから。