人生初のいたずら
お馴染み、『金曜 女のドラマシリーズ』です(#^.^#)
入社して4日目から始まった総合職研修で約10年ぶりに男の子?と机を並べた。
なぜ、そうなのかと言うと……女子大付属の中学校に入ってからずーっと“女の園”!!家でも男性は父だけと言う環境だったから!
で、私の初恋は幸いにも??二次元の方へ流れた。
どさくさに紛れてイタイ過去まで告白してしまったが、これで私のポンコツ具合はお分かりいただけたと思う。
だから、私が隣の席の中野くんをつい意識してしまうのは……
決して大袈裟ではない!!
とは言っても、私はもう社会人!!
学生とは違うのだから!!
お給料をいただいて研修を受けているのだから!!
と意識をそちらへ集中させているのだが……
ロープレやグループワークでは否が応でも中野くんと“やり取り”をしなければならず
「井上さん!」って耳当たりの良い声で呼ばれると、トクン!と打った鼓動が胸全体に拡がる気がして……それが顔に出てはしないかとヒヤヒヤする。
だから顔は能面で返事もぎこちない……
あああ!! 絶対!! いい印象は持って貰えてないだろうなあ!!!
それが証拠に、お昼ごはんは決まって安藤くんたちとだし……そこにちゃっかり紛れ込んでいる小長井さんとも仲良しみたいだ……
私は専ら相田女史(と心の中で呼んでいる)と二人で……彼女の語る上司、先輩、同僚の人物評にただ、耳を傾けている感じだ。
で、その“人物評”に中野くんの名前が出て来た。
「彼は同期の中で一番できそうな気がする」
いきなりの相田女史の言葉に私は
「へっ?!」と声が裏返った。
相田女史は一瞬、探るように私を見て言葉を継ぎ足す。
「“仕事”の事よ」
「……ああ、そうよね!うん!なんか分かる!」
私の内面を見透かしたのか?相田女史は口角をほんの少しだけ上げる微笑と生温かい視線を私に向ける。
「ふ~ん!『なんか分かるんだ』……一般職の子、まあ今は誰とは言わないけど……二人ほど中野くんを狙ってるんだって」
「そ、そうなの……すごいなあ……」
声が震えそうなのをごまかそうとパックジュースのストローを咥えたら「バコン!」と不自然な音を出してしまった!!
恥ずかしい!!!
そんな私の目の前に相田女史は淡々とエサをぶら下げた。
「男の人って基本はガキだから……心の中に飼っている“少年”のツボを押してあげると喜ぶものなのよ! それが“憎からず”と思っているコからのものなら尚更ね! 知ってる? 中野くん、研修終わった後、10階のカフェテラスのソファーで、よく夕寝してるよ。寝込みを襲ってくすぐってみたら?」
「ええええええ????? くすぐるって??!!!」
動揺しまくりの私を……頬杖をつきながら悠然と見ている相田女史は言葉を返す
「“コチョコチョコチョ”ってやつだよ」
「いやいやいやいや、それ絶対無理だって!!」
「じゃあ!」と言いながら相田女史は人差し指で私の口角の横辺りをプクン!と押した。
「このくらいのいたずらならできるでしょ?! オ・ン・ナなら……」
こんな釘を刺されてしまって……
私は夕日が差しているカフェテリアをそっと覗く。
「居た!!」
お目当ての中野くんは腕組みをしながらソファーに体を預けてスヤスヤと寝入っている。
確かにオトコの子の顔になってる……可愛い!!
でもそのおかげで……私の心臓はさらに早鐘!!
猫の様な忍び足で近付くと、ふんわりとコロンの香りが……
いけねえ!!!!
ゴクリ!と生唾飲んじゃった!!
震える人差し指を
カレの口角あたりへそおーっと近付けると……
その人差し指を
パクッ!って!!
カレに食べられた!
ギャッと叫んだけど……逃げられない私はそのままカレの上へ……
--------------------------------------------------------------------
「へえ~育休明けは中野姓になるんだ! じゃあしばらくは沙耶の事、『井上さん』って呼んじゃおうかな!!」
こう言って微笑む佳奈は相変らずの世話焼きさんで、得意先からも社内からも絶大な信頼を得ている。
こんなにいい子なのに……彼女が長く片想いを患っているのは、彼女が相田家の一人娘で、“婿養子”希望だからだ。
でも実は……そのお相手の吉永くんだって佳奈の事を好きなんだよね!
苗字を変えても構わないくらいに!!
だから何とかしなくっちゃ!!
7年前のいたずらは佳奈の“お膳立て”でいたずらにはならなかったけど……
今度は、その仕返しだ!!
私が産休育休に入る前に!!
必ず二人をくっつけてみせる!!
その為のいたずらのネタはちゃんと仕込んであるんだ!
そう!!
人生初のいたずらを
今度こそやってやる!!
おしまい
大急ぎで書きましたが、少しは可愛く書けたかな?
ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!