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そしてまた一人
そして荒々しくドアを開けて入って来た男があった。肩までの長い美しい黒髪をなびかせたがっちりした体格のそれは王様であった。産声を上げた我が子をその手にしようとした瞬間であった。
「女のお子様です。」
産婆はもう一人を両手に抱えて差し出した。王は聞こえない振りをして男の子をその腕に抱き、タオルをめくってその顔をむき出しにした。
「早く!」
産婆は召使いの一人に女の子を受け取るように促した。若い召使いの一人はおずおずと産婆の方へ歩みを進めた。
ベッドの上に横たわった女王は気を失っているらしかった。王もまた、男の子の顔を見たまま動けずにいた。