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螺旋階段は続く
老婆を抱えた男が回廊の端へ到達すると、主塔へと続く扉が開かれる。男は老婆を抱えたまま階段を駆け上って行く。息を切らし、荒々しく、老婆の繰り言を聞く様子もなくただ駆けていく。
中庭を突っ切ってきた男は、主塔への表の扉へと続く階段に差し掛かる。この男も老婆を風呂敷にくるんだようなものを小脇に抱えていた。主塔への扉の前に到着するや否や扉は開かれる。中に入ると、もう一人の男が階段を駆け上っている足音が響いている。よく似た出で立ちのこの男も、階段を駆け上って行く。
主塔の最上階までは壁伝いに螺旋階段が続く。途中にはさまざまな豪奢な部屋はあるが人影は少ない。各部屋の主らしき人は見かけられず、召使いのような者もほとんどおらず、衛兵と思われる男がポツリ、またポツリと部屋の入口に立ち、螺旋階段越しに最上階を見つめている。