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目玉の選択  作者: 一木惨
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パンケーキ食べたい。

次の獲物兼対戦相手を求めて森を行く私達は、休憩場所を探していた。

動きっぱなしで警戒しっぱなしだからね。

一息入れて心機一転をはかるのだ。

人外境を南へ向っていると、森の木々が少し空いてきた。

薄暗かった森に日の光が落ちる。

ハコには遠くにサラサラと音がしているのが聞こるらしい。

私達はハコの耳に従って、音のする方へ向かうと

「川があったんだ。」

私達の前に大きな川幅の川が現れた。

川の対岸は草原になっている。

どうやら人外境の南端まで歩いてきたようだ。


私達は河原に降りて、焚火をおこした。

不思議ポケットからワイルドボアの骨を出してハコに差し出すと、ハコは嬉しそうに齧り出した。

さて、次はルビアのおやつだ。

この前の食材探索で手に入れていた材料を取り出す。

・ワニナ草の実

・甘根百合の球根

・風船花の花粉

ワニナ草の実はぺんぺん草のような雑草なのだが、種子をすり潰して粉にすると、小麦粉のように使えるとの事。

甘根百合の球根は、前世の百合根そっくりの食べ物。

しかし、その甘さは蜜の滴る焼き芋以上でこっくり甘く、砂糖の代用として十分使える。

風船花の花粉には美味しそうな甘い香と、水に触れると泡を出す性質があるそうな。

私はこれらの食材を深鍋の中ですり潰し、川から汲んだ水と混ぜ合わせて、とろりとした生地を作った。

焚火の側に大きめの石で竈門を組み、焚火の薪を移して浅鍋を置き、ワイルドボアの脂身を投入して脂を出す。

鍋が温まり、脂が充分出たら脂カスを取り除いて深鍋の中味を浅鍋に入れて焼く。

生地に熱が入り出すと、フツフツと泡が立って生地が膨らんできた。

木のヘラで焼け具合を見てひっくり返す。

もうお分かりだろう。

私が作ったのは「ホットケーキ」だ!

もどきだけどね。

ルビアの年頃なら甘いお菓子なんか喜んでくれるんじゃないかなー?と思って作ってみました。

浅鍋からワイルドボアの脂の香ばしい匂いと、風船花の花粉の甘くて美味しそうな香りがたち登る。

獣脂で焼いたので、ホットケーキより月餅に近い香ばしさだ。

ルビアは興味ありげに鍋を覗いている。

「アイ様、何を作ってるんですか?」

「これはホットケーキって言う食べ物だよ。ルビアのおやつにどうかな?と思って作ってみました!」

「私に!?うわー!楽しみです!」

おっ!いい反応ですねー!

「もう焼けるからね!」

不思議ポケットから木の皿とフォークを取り出してホットケーキを移す。

「よし、出来た。さぁ、おあがりよ!」

いっぺん言ってみたかった台詞を吐き、ルビアの前に皿を置いた。

「では、いただきます!」

さぁ、どんな評価を頂けるのか?

ルビアは一口食べる。

………

「お、美味しい?と、思います?」

なんだか微妙な反応なんだが…

味見のできない我が身が恨めしい。

「もしかしてマズかった?」

「いえ、そんな事は無いんですけど、私こういう味は初めてで、よくわからないんです。ごめんなさい。」

そうか、元々肉食のグランサーペントだったルビアだ。

甘味は趣向に沿わない可能性を考えるべきだった。

私の押し付けでルビアに謝らせてしまった。

「謝らなくていいんだよ。私の思い違いで作っちゃって悪かったね。もうちょっと待っててくれる?次の一品で挽回させて!」

私はルビアのおやつをお預けにはしない!


次の一品は肉だ!

・ワイルドボアのバラ肉

・マダラカッコウの卵

・ソルトビーンの塩

・辛味草の茎

・ワニナ草の種の粉末

・発酵させた茹でソルトビーンのペースト

・甘根百合の球根


ワイルドボアのバラを1cm厚にカットして、なんちゃって塩胡椒を振る。

ワニナ草の種の粉末を両面に付けてマダラカッコウの溶き卵に潜らせるを2回。

浅鍋に脂身で脂を取り、肉を焼く。

発酵させた茹でソルトビーンのペーストに塩と甘根百合の球根のすり潰しを少々混ぜて、水で伸ばす。

肉が焼けたら木皿に移し、茹でソルトビーンのソースを浅鍋でトロミが付くまで火を入れ、焼けた肉にかけたら出来上がりだ!

ポークピカタ異世界風、なんちゃってミソソースがけの完成!

粉チーズが有ればもっと本格的になるのだが、無いものは仕方ない。

今度こそルビアから合格を頂きたい!

「今度はどうかな?食べてみてよ!」

ルビアはフォークに肉を刺して口に運ぶ。

咀嚼が長い。

どうなの?どうなの?

「アイ様!とっっっても美味しいです!」

やったーーーーー!

合格したよー!

ルビアには肉だ。

純粋培養肉食系女子ここに極まる。

でも、やっぱり可愛い娘っ子には可愛いスイーツも食べてほしい。

いつかルビアの口に合う甘味を開発したいな。


ちなみに、ソルトビーンの豆の方を捨てるのが勿体無くて、茹でた後すり潰して、塩と混ぜ、少量の猿酒を入れて瓶に入れて発酵させていたのだ。

ソルトビーンの見た目が小さい大豆っぽかったので、もしかしたらできるかな?くらいの気持ちで仕込んだ。

アムスさんに解析してもらったら、ほぼ味噌と同じと鑑定された。

ふふーん!

やってやったよ!

ただ、まだ若いので味が尖ってるんだよね。

今度はもっと量を仕込んで、しっかり熟成させるんだ!

夢は広がるね!


ルビアがなんちゃってポークピカタに舌鼓を打つ隣、密かに何かを食べているハコがいる。

「ご主人!これとっても美味しいです!わん!」

どうやらハコにはホットケーキが美味しいかったらしい。

「そうか、ハコは甘いのもイケるのか。なら、また作るね!」

「やったー!楽しみです!わん!」

おやつタイムは終わり。

さて、川を見つけたって事は、水を見つけたって事だ。

水を見つけたって事は?

そう!水魔法習得のチャーンス!

川で洗った深鍋に水を張り、触手を浸す。

集中集中!

「ご主人、何やってるんですか?わん?」

「これはね、水魔法習得の訓練だよ。」

「「??」」

2人共疑問符を浮かべている。

「こうやって水のマナの波長を調べてるんだよ。」

「「波長?」」

「そう、波長。属性マナ特有の波長を感じ取る練習。」

ちゃんと説明してあげたいけど、私はまだ明確な説明の言葉を知らない。

「今度アムスにちゃんと説明してもらうからね!」

「「はーい。」」

それからハコは川に入って水浴びに興じ、ルビアはマナ操作の練習を始めた。


さてさて、水のマナはどこだー?

アムスの説明だと、水のマナは引力と関係してるって言ってたな。

引力って事は、引っ張る力って事よね?

引っ張る力…

引っ張る?引っ張られる?

どっちにせよ、何か引き寄せられる動きがあるって思えば良いのかな?

集中集中!

漠然とマナの動きを感知していると、何か違和感を感じる。

何だろう?この違和感。

そこで違和感の答えに気づいた。

水のマナには流れが無い。

土のマナには南北の流れとそれ以外の違いがあった。

しかし水のマナは全部がランダムに動いている。

こんなんじゃ何のきっかけも掴めないじゃん。

アムスさんにヒントを示してほしいところだが、生憎アムスさんはポーション作成に没頭中。

行き詰まった…

水をバシャバシャしてみたり、グルグルしてみたけどマナに変化はない。

くっそー!

引力って何だよ!

ん?待てよ?引っ張られるって最近何かあった気がする。

なんだったっけなー?

思い出せー、なんだったっけ?

あっ!そうだ!ナイフ投げだ!

マナのナイフを投げた時、空気中のマナに引っ張られて霧散したんだった。

それを思い出した私は、水の中にマナを放出してみた。

ビンゴ!

放出した私のマナが水中のマナに引っ張られている。

見えたっ!

私のマナを引き寄せる水のマナを観察すると、他のマナには無いリズムの揺れを見つけた。

私は鍋から触手を出して、早速水の波長に合わせたマナの揺れを再現してみた。

成功しました!

触手の先から水がちょろちょろと滴り落ちる。

ドヤァー!

アムスさんのヒント無しで水魔法習得したよ!

私凄い!

「ハコー!ルビアー!これ見てー!」

触手の先から滴る水魔法の水を見せつけた!

「ご主人も水遊びですか?わん!」

「???」

ハコは見当違い。

ルビアに至っては、理解すらしてくれない。

そりゃそうだ。

側から見れば、触手から水を垂らしてるだけだもんな。

仕方ないか…

「ハコー、ルビアー、もうそろそろ狩りに戻ろう。行くよー!」

私はまたハコの背に跨り、3人で森に戻った。

次はルビアのソロハントだ。

ルビアの力と戦い方を確かめるため、私達は獲物を求めて森を進む。







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