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目玉の選択  作者: 一木惨
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迷犬ハコ

みんなでマナ操作の練習をした翌朝、私達は太陽の眩しさで目を覚ました。

新しく出来る事が増えるのは楽しいからって、一日中やってたらそりゃあ疲れるよね。

張り合う相手がいるから頑張ってしまったのも、疲れに拍車をかけた。

ようは新しいゲームが出て、誰が1番上手いかを競った翌朝の面白かったけど疲れてる状態。

何事も程々にするのが1番だと改めて思ったお昼前でした。


ブランチでお腹を満たしたハコとルビアが狩りに行きたいと言い出したので、人外境へ入った。

2人共新しい力を試したいのがバレバレでちょっと面白い。

獲物を探しながら昨夜の2人の様子を思い出す。

ハコは本当にマナ操作が上手すぎ。

マナの刃を作った後に器用に形を変え、更にそれを打ち出す技を編み出した。

細長い剣状態の刃から、更に細く長くして、マナの槍を作り出し、それを木に向かって射出したのだ。

私も真似してやってみたけど、木に届く前にマナの刃は消失してしまう。

どうやらマナを流し続けないと、大気中のマナに引き寄せられて霧散してしまうようだ。

ハコにどうやってマナの槍を維持したまま投げているのか聞いてみると

「マナをガチガチに圧縮してやってます!わん!」

だって。

刃作るのに触手2本を駆使する私のやり方だと、触手全部使ってやっとナイフ程度の刃を飛ばす事が出来た。

これはちょっと効率が悪すぎる。

しかもちっさい。

ハコにバレると恥ずかしいので、私はこの技術を封印した。

ルビアに至っては、ちょっと感動するほど上達している。

あれから頑張ってマナの刃を作れるようになった。

やり方は私と一緒で、右手の人差し指から回転するマナを出し、左手の人差し指と親指で挟み込む事で刃の形成を成し遂げた。

ルビアの進歩はここから更に独自の路線を開拓した。

なんとマナの刃にマナの火をつけてみせたのだ。

長細い楕円形のマナの刃の内側に収まるサイズの逆回転のマナを作り出し、見事に燃える刃を作り出した。

これには本当に驚いた。

燃える刃を作ったルビアは私とハコをチラ見しながらドヤ顔してたのはちょっと面白かったな。

ハコの驚いた顔を見たルビアの得意げな笑みは最近で1番明るい笑顔だった。

燃える刃も真似してみたけど、私には作れなかった。

あれをやるには、マナを操る脳ミソがもう一個いるわ。

私はやりながら混乱したもん。

2人共既に私よりレベルが上だ。

もう2人を先生とお呼びしたいくらいだよ。


しばらく森の中を散策していると、ハコが獲物の匂いを嗅ぎつけた。

私達は素早く、そして静かに獲物へと近づく。

そこにいたのは、初めて出会う魔獣スパイクエイプ。

体高1.2m位の猿の魔物。

尻尾の先に棘が無数に付いた瘤がある。

瘤の中には食べ物の中に入っていた毒が溜まっていて、棘の先から漏れ出ている。

スパイクエイプは自分で倒したであろう鹿のような魔物を食べていた。

「ご主人、僕の新必殺技を試してみてもいいですか?わん!」

「ハコちゃん!やっておしまい!」

何事も経験だ。

私はハコが自由に動けるようハコの背からルビアの肩に移り、ハコを見守るかまえをとった。

上手く行く事もあれば、失敗する事もある。

どちらも死にさえしなければ経験値になる。

スパイクエイプの背後に付いたハコは、短めのマナの槍を尻尾から出すと、スパイクエイプに向かって発射した。

しかしスパイクエイプは振り向きもせず、ジャンプして頭上の枝に飛び乗った。

ハコは目を丸くして驚いている。

森の木みたいに動かない相手なら当てられるけど、スパイクエイプは動くし、何より森の魔獣だ。

いくら背後を盗っても、やる気まんまんの気配を隠さなきゃバレるよ。

今度はハコが狙われる番だ。

スパイクエイプは枝から枝へと飛び移りながら、ハコの隙を窺っているようだ。

多分アイツに有効な遠距離攻撃はないのだろう。

ハコが隙を見せれば飛びかかって、尻尾の棘を刺すつもりなのだろう。

ユラユラと尻尾を揺らしながらハコを狙っている。

「ハコ、アイツの尻尾の棘はヤバそうだから絶対に交わさなきゃ駄目だよ!とにかくアイツが飛びかかってきたら、長い槍を出してアイツの尻尾が届く前に突き刺しでやれ!」

「ご主人!そんな簡単に言わないでください!タイミングを間違えたらやられちゃいます!わん!」

必殺技と豪語した攻撃を交わされた事で気持ちに恐れが出て萎縮してる。

「ビビるなハコ!私達の狩りを思い出してごらん?すれ違い様に一撃を打ち込んでた筈だよ?交差法は私達の得意技でしょ?やればできる!」

「はっ、ハイ!やってみます!わん!」

側にいなくても思念で会話出来るメリットを最大限に活かすなら、私がタイミングをハコに伝えれば良いのだけど、それじゃあいつまで経ってもハコが強くなれない。

「アイ様、私とハコで挟み討ちにすれば良いんじゃないでしょうか?」

「そうだね。そうすれば楽に勝てると思うよ。でもねルビアもだけど、せっかくマナ操作を覚えて使える技が増えたのに、いつもみんなで戦ってたら、どのタイミングでどんな魔法を使えば良いかの判断力がつかないんだよ。みんなで連携するのも大事な戦い方だけど、もし1人で戦わなきゃならなくなった時や誰にも助けを求められない時に、自分の戦い方を見つけてなかったらどうなると思う?」

「…何も できない?」

「そう。1人の戦い方を知らないと、自分の事もそうだけど、誰かを助ける事も出来ないよね?私はルビアやハコに何も出来ずにやられちゃうような事にはなってほしくないんだ。」

1人の孤独を知っているルビアには酷な例えかもしれない。

だけど、だからこそルビアには私の思いが正確に伝わるはずだ。

ルビアの顔を覗き見ると、とても辛そうな顔をしていた。

ゴメンねルビア。


ハコに目を移すと、変なことをしていた。

あの子は何がしたいんだ?

伏せの状態で目を閉じて尻尾を振り回してる。

もう一度言う、あの子は何がしたいんだ?

「あの、ハコちゃん?一体何をしてるのかな?」

「ご主人、今は話しかけないで下さい!」

ご、こめんよ…

怒られちゃった。

どうやら何か策があるらしい。

スパイクエイプはハコが座り込んでいるにも関わらず、相変わらず枝々を飛び回っている。

アイツ何を警戒してんだ?

しばらく同じ状況が続いたが、スパイクエイプは痺れを切らしたのか、一際高い枝に登ると、ハコに向かって飛び降りた。

ハコが危ない!

焦る私。

動かないハコ。

駆け出すルビア。

間に合うか!?


そんな心配いりませんでした!

飛び降り襲いかかってきたスパイクエイプはハコのマナの槍で串刺しの刑になりました!

絶妙なタイミングでマナの槍を突き出したハコちゃん。

目を瞑ってたのになんでタイミングが分かったんだろう?

「ハコちゃんお見事でした!最高のタイミングでカウンターが決まったね!」

「ご主人の助言がとても役にたちました!わん!」

「私の助言?」

「いつもやってる狩りの方法です!ご主人の触手を撃つタイミングを参考にしました!わん!」

「でもさ、ハコちゃん目を瞑っててたでしょ?どうやってスパイクエイプの落ちてくるタイミングを測ったの?」

「マナ感知です!目で追ってたら、いつまで経っても近づいてこないので、目を瞑ってマナ感知で相手の位置を探ってました!わん!」

自ら隙を作って誘ったのか。

「尻尾を振り回してたのはどうしてなの?」

「ヤケクソっぽく見せる演出です!わん!」

そうなんだ…

ハコなりに考えた結果なんだね。

「ま、まぁよかったね。それじゃあ次行ってみよぅ!」

串刺しのスパイクエイプを不思議ポケットにしまうのは躊躇われたが、ほったらかしにするのは駄目だと思ったので、仕方なく私は不思議ポケットにしまった。

次はルビアの番だ。

ルビアはどんな戦いを見せるのか?

私達は次の獲物を求めて移動を開始した。






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