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目玉の選択  作者: 一木惨
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ネガティヴ私

アムスの発言に驚いた私は速攻ツッコんだ。

「それは何の冗談だ?」

「冗談ではありません。黄色い石の解析を進めた結果、アイの肉体を再構築する手立てを見出したのです。」

さっきの今でほんとに何の冗談だ?

黄色い石の解析と私の肉体の再生がどうやったら繋がるんだろう?

いや、アムスは(再構築)と言ってたな。

再生と再構築、何で言い方を変えたんだろう?

「さっきの話し合いでは培養して人間体を再生するって言ってたと思うんだけど、再構築ってどう言う事?」

「肉体を培養して作るのではなく、石の力を使って身体を生やしていくと考えて下さい。」

か・ら・だ・を・は・や・すぅーー??

何だそれ。

益々わからん!

「ざっくり説明すると、今の目玉と触手の状態は大怪我をしていて、体を損失した状態だと考えて下さい。それを石の力で回復させると言うことです。どこまで回復するかと言うと、怪我をして失った(目玉以外)の身体を回復させると言う事です。」

そんな事ができるのか?

「ちなみに完全に全て元通りになるわけではありません。完全に元通りにしてしまうと、ワタシの居場所が無くなってしまいます。なのでアイの中でワタシが居られるように多少の改造を施して肉体を構築するようにプログラムを変えて再構築を実行します。プログラムを変える際に、元の体では不都合なところや強化出来るところも作り替えようと思います。勿論外見は変えません。」

いよいよアムスさんの改造が私に降りかかってくるという事か。

ハコやルビアにやっておいて、私は嫌だとは言えないな。

それに、一度諦めかけた人の身体を取り戻せるなら、そのくらいのことは許容範囲内か?

それにしても、ほんの数十分で石の解析を終えたのだろうか?

早過ぎじゃない?

「アムスさん、ついさっき石の解析を始めたばかりなのに、結果を出すのが早過ぎない?」

「そ、そんな事はありません。ワタシの解析能力が高いだけの話です。」

ん?なんか引っかかるぞ?

もうちょっとつついてみるか。

「アムスさんの解析能力の高さは分かるけど、あの石はこっちの世界の物だよ?他に比較するサンプルでもあったの?」

「アイは鋭いですね。実は、ハコを解析した時に見つけた(魂晶核)と言う物があるのですが、アイの持ち出した石が非常によく似ていたのです。最初はただの宝石かと思っていたのですが、ハコを解析した時に同じ様な性質の波長を感知したので、それ以来非常に気になっていました。それで今回の解析検証の結果、この石と魂晶核はほぼ同じ物と断定できました。」

「魂晶核?魔核とは違うの?」

「魔核と似たようなものですが、内包するマナが天文学的に違います。マナの他にも性質の違うエネルギーを内包しているようです。どちらにしても、何故この様な物が棚の上に無造作に放置されていたのか謎です。ワタシなら他のどんな物も差し置いてこの石を研究したいと思える代物です。」

アムスさんが飛びつくぐらいに貴重な物だったらしい。

そんな物が棚の上に転がっていたのは確かに変だ。

天文学的規模のマナってのも私に理解出来るもんじゃ無い。

更にアムスさんでも詳しく調べる事ができないエネルギーも入っているらしい。

「それで何をどうすれば体を生やす事になるの?」

「ポーションです。ポーションを解析した結果、その効果の働き方が所謂傷薬や強壮剤とは全く違うとわかりました。

体力回復の効果は栄養補給ではなく、マナを肉体的エネルギーに変換して生命力自体が回復するようです。

そして怪我の治癒についてですが、自己治癒力の活性化ではなく、マナを細胞分裂のエネルギーと材料にして、傷口の細胞を再生させる事で傷を回復させる効果があると判明しました。

そしてポーションの成分ですが、魔術によって治癒や体力回復の効果を持たせ、液体化させたマナの集合体だったのです。」

な、なんだとーっ!?

話の半分も理解できない。

石の話のはずが、何故かポーションに切り替わってる。

結局どういうこと?

「ローポーションのマナ含有量は風魔法の刃を6mぐらい作れる量でした。

そして、ローポーションでは中程度の裂傷や2〜3%の火傷を癒す事が出来ます。

マナの含有量が増えればもっと酷い怪我でも回復出来るのです。

この莫大なマナを秘めた石でポーションを生成すればどれほどの回復が見込めるか。

どうですアイ?」

なるほど、体を生やすとはそういうことなのね。

「大体分かった。それでアムスはその莫大なマナを持つ石でポーションを作れるの?」

「ハイポーションの作成までは成功しています。おそらく失敗はありません。」

この短時間によくもまぁ。

凄いよアムスさん。

アムスが出来ると言うなら、それは出来るのだろう。

そして、身体を取り戻せるのなら、私に否やは無い。

「アムス、お願いしても良いかな?」

「任せてください。アイが人間の体に戻ることは、ワタシのためにもなるのです。必ず成功させましょう。」

アムスは私に説明をした後、早速莫大なマナを含む黄色い石でポーション作りに入った。


正直言って展開の速さについて行けてないし、突然体が戻ると言われても実感が無い。

体のあったことさえ覚えていないんだから。

落としたマナナイフを収納して、肉を焼き始める。

なんだか頭の中がぐるぐる回っているみたいだ。

頭なんて無いけどね。

「アイ様、何か心配事でもあるのですか?」

突然ルビアがそんな事を言ってきた。

「ん?なんでそう思ったの?」

「突然黙り込んで、ナイフを落としたまま動かなくなったので、アムス様とお話ししてるんだろうなとは思ってたんですけど、お話が終わった後もなんだか困っている様に見えて。アムス様と喧嘩でもしたのですか?」

私が困っているように見えたんだ。

「喧嘩なんてしてないよ。ちょっと難しい事を話してたから、少し考え事をしてたんだ。安心して!大丈夫だから!」

努めて明るく話しかけて、ルビアには納得してもらった。

私は多分困っている。

そしてビビってもいるんだ。

人間の体になるって事に。

もし人間の体に戻ったら、ルビアとハコは私を受け入れてくれるのだろうか?

誰一人知っている人がいなくて、自分が何者なのかも覚えていない。

アムスに動けるようにしてもらって、ハコと出会い、ルビアと出会った。

ハコもルビアも私達を慕ってくれている。

人間の体になったらハコとルビアが私の事をどう思うか、私にどう接してくるのかを考えると怖い。

せっかく出来た絆があっさりと無くなりそうでビビってるんだ。

ルビアが言っていた森の掟が怖いんだ。

「人間を殺してはいけない。」

これは言葉通りの意味だけじゃないと私は思ってる。

人間に近づくなと言っているのだと思う。

だって、ユーニアの森の奥は人外境だ。

人が近づけない秘境なんだから、森の魔獣や妖獣が人を襲っても人外境には入ってしまえば人間は追ってこれない。

それでも人間を殺してはいけないとわざわざ掟にするのは、森の生き物と人間を離すためだと思う。

森の生き物はであるルビアは、私が人間になったら掟に従って私の前から去っていくんじゃないか?

そう考えると悲しくなった。

ハコもルビアも可愛い。

私はこの子達と離れたくない。

私は自分が思っている以上にヘタレなんだと気づいた。


「あのねルビア、私の体が元の姿に戻るかもしれないんだ。」

「アイ様ってこの姿が本当の姿じゃないんですか?」

「うん。私ね、こんな姿になる前は人間だったみたいなんだよ。覚えてはいないんだけどね。」

「…」

「この前森の掟を教えてくれたでしょ?人間を襲わないってやつ。それって多分人間に関わるなって意味もあると思うんだ。それでね、もし私が人間の姿に戻ったら、ルビア達とお別れ…」

「嫌です!私はアイ様とアムス様について行きます!だってアイ様とアムス様は私をラミアにして下さって、アイ様は私に名前をつけて下さったじゃないですか。こんなに大きなご恩を受けて、何もお返し出来てないのにお別れなんてできません!」

「ルビア…」

「それに、ハグレの私を受け入れてくれたじゃないですか。アイ様はまた私にハグレになれと仰るのですか?」

ルビアはそう言って泣き出した。

ルビアにとって、私達はもう群れなんだね。

「ごめんねルビア。私ちょっとネガティブになり過ぎてた。そうだよね、みんなで狩りをして、一緒にねて、私達はもう群れなんだもんね。」

「そうです!群れなんだから、離れる事は無いんです!」

ルビアは泣き笑いしながらちょっと怒ったように言って、焼肉を頬張り始めた。

本当に私ネガティブになり過ぎたみたいだ。

「ハコ!おまえもごはん食べて!」

ハコの前に山盛り肉を差し出す。

「ご主人、僕もずっとついて行きます。わん!」

ハコにまで心配させたみたいだ。

しっかりしろ私!

人間に戻って美味しいものを食べるんだろ?

この子達と一緒にごはんを食べるんだろ?

大丈夫、なんとでもなる!

私にはこの子達とアムスがついてるんだから!

私は気を取り直して、2人の食事を見守った。











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