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目玉の選択  作者: 一木惨
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これも一つの進化

連日投稿すみません。

火を起こした焚火を前に私は唸っていた。

うーん、どうしたモノか。

不思議ポケットから取り出したワイルドボア。

デカい。

それにしてもデカい。

解体したいんだけど、道具が無いのよ。

道具があっても解体するテクニックが無いのよ。

大きいから沢山の食料が採れると思っていたけど、加工と細分化が出来なきゃ意味がない。

それにせっかく新鮮なお肉を手に入れたんだから、美味しく頂きたいじゃない?

ハコにも毛や筋を取った美味しいところを食べさせたいし、ルビアには調理して生肉では味わえない食べ物を味あわせて、味覚を発展させてほしい。

私が食べられない分ルビアには美味しいものを食べさせたいのよ。

どーにかならぬか?アムスさん!

「地下施設から持ち出した資材に解剖用のマナナイフがあるので、それを使ってみては?」

それは朗報だ!

不思議ポケットからマナナイフなる物を取り出す。

ナイフ?柄しかないじゃん?

なにこれ?

「魔法を使う要領で、この柄にマナを流し込むと、風魔法の刃が形成される物のようです。」

なにそれ、カッコいいじゃん!

私が柄にマナを流し込むと、5cmほどの風の刃が形成された。

ちっさ!ハコの牙よりは長いけど、バカデカい猪を解体するには刃が足りない。

「アムスさん、こんな刃でどうしろと?」

「今の刃の形成で風魔法の仕組みが分かったと思うのですが?」

確かに風魔法構築の仕組みは何となく分かった。

高速回転させたマナを左右から押して細長い楕円形にして形を止めたら、風の刃になった。

しかしこれが何だと言うのか?

「察しが悪いですねアイ。風魔法が理解できたなら、大きな刃を自分で構築すれば良いではないですか?」

あっ、そう言うことか。

でも、マナナイフは柄にマナ形成の補助があるみたいで、マナを流し込むだけで形成出来たけど、自分で風魔法を操るのはちょっと大変そうだ。

特にマナを左右から押して細長く形成するのが難しく思う。

「これは良い練習になりますよ?大まかな解体はアイの風魔法で行い、細部の仕上げはルビアにマナナイフでやらせましょう。

2人とも魔力向上です!」

やっぱりアムスさんは魔法に傾倒しているみたいだ。

ルビアの進化の時はワクワク感を出していたが、魔法の訓練に関してはテンション上がってるもん。

語尾に「!」が入ってる。

こんなアムスさんは初めて見たよ。

少しずつアムスさんの感情に起伏が発生している。

本人は気づいているのだろうか?

それは置いといて、まずは風魔法を自力で発現させなきゃね。

私はマナを触手に流して、火魔法の時と同じく高速回転させた。

反転はさせずに、左右からマナを圧迫する。

どうやって?

分からないよーアムス先生!

「触手が余ってますよアイ?」

はっ!そうか、触手2本にマナを送って、風魔法構築中の高速回転させたマナを挟み込んで圧迫すれば良いのか!

凄いよアムスさん!

(ちなみに、触手一本で高速回転させたマナの中に反転した回転を発生させる方がとても難しい事をアイは知らない)

早速2本の触手でマナを圧迫してみると、風の刃が形成された。

15cmほどの…

アムス先生!まだ長さが足りません!

「形成した刃にもう一本の触手でマナを注いで見てください。マナの供給が増えれば刃も比例して大きくなりますよ。」

触手をさらに追加!

使えるものは親でも使えの精神ですね!

違う(反語)

私が触手に慣れてない証拠だ。

腕脚2本ずつの感覚が触手の数を使う思考を妨げている。

今の私は目玉と触手ウネウネなんだ。

自分自身の認識をしっかり持たなきゃ。

私はさらに触手を追加してマナを注いでみた。

一本で倍。

2本で4倍と二乗する。

その分マナの制御に精神を使う。

こりゃ大変だぞ?

扱うマナの量が増えると、制御するのに凄い集中しなきゃならない。

アムスさんが魔力向上を訴える意味が分かったよ。

大きな魔法を操るには、大量のマナを思うように扱うマナへの慣れと、それを自分の意図する動きや形に形成する精神力が必要だ。

高速道路で車を運転す時の高速スピードで走る事への慣れが、マナの量を扱う事に通じ、車間距離や高速道路ならではのルールやハンドリング、減速の仕方など下道とは違う運転技術がマナの制御に当てはまるような気がする。

あくまで気がするレベル。

高速で合流するの怖いんだよね。

そんな無駄な例えを思いつつ徐々にマナを注いで刃を大きくし、全長1.5mほどの風の刃を作った。

金属製の刃物なら絶対に扱えないサイズだけど、魔法で作り出した風魔法の刃には重さが無い。

こういう所は魔法様々だね。

ところで、解体ってどうやるんだ?

しまったぁーーーー!

私、獣の解体なんて知らなかったーー!

どーしましょ?

今更後戻りは出来ないぞ?

アムスさんアムスさん!私の代わりに解体やって!

今こそその知識を役立てる時ですよ!

「ワタシも獣の解体など知りませんよ。持ってきた本に解剖の図鑑はありましたが、解体はありませんでした。」

何、だと?

アムスさんでもわからないとは…

これはもうお手上げですわ!

どーすんのよ?

「アイは何か知識はないんですか?」

「知識って言っても、えーっと、なんだ?あー、鶏なら頭飛ばしてー、逆さに吊るして血を抜いてー、えーっと羽をむしってー、内臓取り出してー、部位ごとに切り分ける。る?」

鶏を絞めるのと巨大猪の解体は違うと思うのだが…

アムスさんはしばし黙考して

「現状で難しいのは、吊るして血を抜く事だけですが、それはワタシ達なら問題ありませんね。

まずは触手で血を抜いて、後はアイの言った工程通りで解体しましょう。部位の判定は解剖図鑑を参考にすれば良いと思います。」

さっすが頼れる相棒アムスさんですわ!

サクッと解決策を考えてくださった。

まず私が触手を使って血抜きをし、風魔法の刃で大まかに部位を分け、風魔法の刃を最初の15cmほどの刃にして皮をはいでいく。アムスはルビアに指示を出して肉の部位分けを進める。

ルビアはマナナイフの刃が自分のマナで形成されている事が楽しいらしく、鼻歌混じりで部位を分け、筋を取っていく。

こういうところを見ると、ルビアも自然児なんだなと感じる。

ハコは骨を齧っている。

ハコ、おまえはそのまま純粋なままでいてね。


ワイルドボアの解体に時間がかかり、太陽は真上になっていた。

朝ごはんのはずがランチになってしまった。

焚火の火もすっかり消えている。

私達は解体した肉を一度しまって、もう一度森へ入ることにした。

こうなったらとことん美味い肉を食わせてあげようと思ったので、肉の味付けに使えそうな物を探しに行くのだ。

木の実やキノコ、ハーブなどを採取するのだ!

今度こそアムスさんの知識が役立つ時なのですよ!

頼みますよ?アムスさん!

「……」

アムスさんなんか黙り込んでしまった。

「アイは変なところにこだわりますね。栄養補給ができればそれで良いんじゃないのですか?」

「せっかく新鮮なお肉が手に入ったんだから、ルビアやハコには出来るだけ美味しい食事をしてほしいんだよ。私は味わえないからね。」

「アイは食事が好きなのですか?」

「美味しい食事は幸せに直結するんだよ。感情ではない直接的な幸福感ってのは生きる気力に繋がるんだよ。美味しくない物を食べ続けると、人は卑屈になりやすいんだよ。知らなかった?」

「ワタシには分からないですね。幸せの意味が分からないので。」

アムスさんちょっと重い事言ってる。

「アムスに質問。今アムスが一番したい事って何?」

「そーですね、まずは魔法の研究を進める事ですね。」

「魔法の研究をしている時は楽しい?」

「楽しい…そのような感情がワタシの中に有るのでしょうか?」

「さっき風魔法の練習を私達に促した時にさ、アムスちょっとテンション上がってたでしょ?」

「!」

「やっぱり!そーじゃないのかな?と思ってたんだよ。

アムスにも好きな事があって、好きな事が出来る事は嬉しく思ってるんだと思うよ?」

「私に感情がある?そんな事考えたこともありませんでした。

あの時、アイやルビアの魔力向上を促して、それを受け入れてもらえた事は確かにワタシの何かを刺激しました。

アレが感情だったのでしょうか?」

「そうだと思うよ?多分だけど、自分の意見が素直に受け入れられた事が嬉しかったんじゃないかな?」

「…そうかもしれません。ワタシに感情が…」

アムスは造られたと言っていた。

魂が無いと言っていた。

でも会話が成り立ち、私とアムスはお互いに助け合っていると思う。

助け合うって事は互いに大事だと思っている証拠なんだと私は思う。

他人を大事だと思うって事は、感情に動かされている証拠なんだと思う。

アムスは自分に芽生えた感情に戸惑っているみたいだが、その戸惑いも含めて、それはアムスが手に入れた(進化)なんじゃないだろうか?

私はアムスの変化を嬉しく思いながら、美味しい森の恵みを求めて森へと向かって行った。










露の侵略が成ったら、次は中の台侵攻か?私は絶対にプーチンを認めない。

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