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目玉の選択  作者: 一木惨
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就寝前のひと時

仕事が色々とあり、かなり時間がかかってしまいました。

 質素ながらも楽しい晩ごはんを食べ終え、私達はそれぞれに思うがまま寝る事とした。

 思うがまま、各自が自由に だ。

 なのに何でこうなるのかな?

 私の疑問を解説すると、焚火の後始末をしたあと私は洞窟内の寝床に向かった。

 以前「ベッドが欲しい!」と強烈に思い、何か出来ないかと考え、思いつきを実行した結果が洞窟内にあるからだ。

 四足獣達のアレコレのせいで使う事が無かった即席ベッド。

 ベッドとは言っても、広葉樹の枯葉を集めてその上に大きな布を被せただけの代物だが、作った後その上に寝転がってみると、とても良い具合だった。

 

 「ふふふーん!やっと眠り心地をためせるー!」

 ルンルンで私は洞窟に入っていく。

 くらいの洞窟内を小さな火魔法の灯火でボンヤリと照らすと、私の目の前に以前と変わらない状態の枯葉ベッドがあった。

 「さーて、どんな塩梅かねー。」

 小さな体でダイブして枯葉のベッドへ。

 それは私の体を受け止めて、包み込むように沈む。

 「ふ、ふはははは!控えめに言っても最高。」

と一人ほくそ笑む私。

 人間の三大欲求の一つである睡眠。

 今まではハコちゃんのモフモフが私のベッドだった。

 それはそれで最高の寝床だったわけだが、私は独寝派なので、近くに気配があると熟睡できないらしい。

 目玉の頃なんかはハコというボディガードがいることに安心したもんだが、人間態をとるようになってから徐々に自分の睡眠が浅い事に気がついた。

 それでたまに一人で昼寝なんかすると、思いの外熟睡出来ている自分を知り、自分の睡眠習慣が独寝であると結論付けた。

 てな訳で、今夜はしっかり寝て明日のハントに備えるのだ!

 「世界よおやすみ!」

 などと大きな事を小さな声で呟いて、私はそのまま寝る態勢になる。

 「アイ様ー?」

 「ご主人?」

 来客である。

 「ど、どした?」

 「いえ、アイ様の姿が見えないので、どうしたのかと。」

 「ご主人!一緒に寝ましょう!わん!」

 本当に心配気な目で私を見るルビアに、そんな事は我関せずとても嬉しそうに添い寝を促すハコ。

 二人とも純粋な視線を私に向けている。

 ダメだな…

とても「今夜は私一人で寝るよ!」とは言えない。

 そんな事言った日には彼らの心配が膨らむだけだ。

 それに「私は独寝派なの!」とか言っても理解は得られないだろう。

 だって今まで散々ハコにくるまって寝てたのだから。

そんな事を考えている間にも、ハコとルビアは近づいてくる。

 「ご主人、これ寝やすそうな寝床ですね!わん!」

 「あっ!もしかしてこれを準備してたのですか?言ってくれれば手伝ったのに。」

 二人は私が乗っかっている枯葉ベッドを見て、そう言った。

 そして二人は枯葉ベッドの上に上がり、私の両隣りに陣取って横たわった。

 「うわー!これフカフカでとっても気持ち良い寝床ですね!」

そう言ってベッドの海に沈むルビア。

 「ぼ、僕よりかはまだまだですよ!でもまぁ、フカフカですね。わん。」

 それ言ってハコは前脚で布の上を押して感触を確かめている。

 これはもうどうにもならんな…

 久々の独寝(多分記憶は無いが、前世ぶりの)を諦めた私は

 「それじゃあ寝よっか。明日は頑張らなきゃだしね。」

「はい!おやすみなさいアイ様!」

「おやすみなさいですご主人!わん!」

 こうして独寝を諦めた私と、とても嬉しそうなハコとルビアで川の字になって床についたのだった。


 一方外の焚火跡の周りでは、他の面子が情報交換をしていた。

ゴンドウとタマさんにマンドリルアーミー達が焚火跡を囲んで話している。

 「それにしてもタマ殿、アイの姐さんってのは一体何者なんですかい?」

 「俺も気になってた。ゴンドウ殿は何か知ってますか?」

マンドリルアーミー達の問いかけに、タマとゴンドウは顔を見合わせるも

 「ワシにはよう分からん。」

 「俺もよくは知らないな。」

答えを合わせたかのように返答する二人。

 「「そうですかい…」」

 マンドリルアーミー達は疑問が解けなかった事に不満気だ。

(さすがに異世界の人間と言っても信じられんじゃろうし、そもそも異世界自体を理解できんじゃろうしな。)

タマはそう考える。

 (そういえば俺もその辺を考えてなかったな。普通に人間と思ってたわ。実際アイちゃんて何者なんだ?)

ゴンドウはそう考える。

 「あ、もう一つ良いですかい?アイの姐さんがやってたマナが輪っかになるやつ、アレって皆さんも出来るんですかね?」

 マンドリルアーミーも不思議に思っていたのだろう。

アイが使うマナゲイザーが異質な技だと気がつき、それを見ても驚かない仲間たちにもマナゲイザーが出来るのかと聞いてきた。

 「いや、あれはアイしか出来ん。そもそも放出したマナを繋いで循環させるとか、やっている事を理解できても実践できるのはアイだけじゃ。

アムス様も出来んと言っておられたしな。」

 実際タマはアイの説明を聞いて、マナゲイザーがどのような動きをしていてるか構造は理解している。

 そして暇な時にこっそり練習したりもいていたが、結果は失敗ばかり。

 似たような形が作れても、根本の回転が逆になるのだ。

 似たような形にマナを操作出来るだけでも大したものなので、タマのマナ操作も捨てたものではないのだが。

 しかしそもそもの話、手前から輪っかを打ち出そうとすると、リング内の回転は手前から奥に向かって巻く。

 マナゲイザーの効果で説明するなら、タマの作った擬似マナゲイザーは自分側が吸い込み口で、前方が吐き出し口になるのだが、アイの作るマナゲイザーは回転が逆。

 イルカのバブルリングもタマの擬似マナゲイザーと同じ動きをしている。

 某化学実験のダンボール砲の煙をよく観察すれば分かるだろう。

 コレではたとえマナゲイザーの形をなしてもマナゲイザーに吸い込まれてミンチになるのは自分なのである。

 なら逆になるようにやれば良いと思うところだが、何故か上手くいかないのだ。

 マナの球を出して、真ん中に圧をかける。

自分側から圧をかけるのだから、球の反対側に向かって内巻き回転をしてしまう。

 すると擬似マナゲイザーは自分へ吸い寄せられてくる。

 これでは危ないので、反対側から圧をかけると逆転し、結局反対側へ圧をかけた方へ向かってしまう。

 結局右手が危ない、左手が危ないの堂々巡り。

まさに猫が鞠で遊んでいる様な状態になるのだ。

 結果アイのように、最初から逆回転をかけられなければ、この技は完成しないのだとタマは悟った。

 そしてアムスが「自分にはできない」と言った事で、タマもマナゲイザーの再現を諦めたのだった。

 こうして改めて考えてみると、アイとは一体何者なのか?タマもそう感じてきた。

 出会った頃本人が語った話だと、自分がいた時代より先の年代の日本にいたとのこと。

 それならタマの時代より先の未来ではマナゲイザーのような理論が出来ていたのかもしれない。

 だがしかし、この予想はアムスの存在で否定されてしまう。

 アイの話によると、アムスはアイより更に遥か先の未来で生まれた存在だという。

 それならアイの出来る事がアムスに出来ないと言うのはおかしな話になってしまうのだ。

 技術や知識の面においてはアイよりアムスの方が豊富なスキルを持っているのだから。

 マンドリルアーミー達の素朴な疑問に端を発したアイへの疑問は、タマの思考の中で更に深まってしまったのだった。

 「まぁワシには分からんから、明日アイに直接聞いてみればよいのではないか?」

 「そうっすね。明日姐さんに直接伺ってみます。」

 「それが早いっすね。タマ殿ありがとうございました。」

 「うむ、そうせい。明日は一日中狩りになろうから、お前達ももう休め。

 活躍してアイに認められたいじゃろ?」

「「そうするっす!おやすみなさい!」」

 こうしてタマやゴンドウ達も床についたのだった。


 ブラフォードの相談を聞きながら、タマ達の話にも耳を傾けていた(耳があるのかは分からないが)アムス。

 「果たして彼らの納得する答えが出るかどうか。

ワタシですら理解できないのだから、望み薄ですね…」

 そんな事を思いながら、ブラフォードと対していたのだった。


 

 




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