一章「世界樹の恩恵」② ~目が覚めるとそこは知らない場所~
上梨悠里が目を覚ますと、最初に目に写ったのは白い天井だった。
清潔感を重視しているのか潔癖症なのか分からないがシミ一つ無いのが印象的だった。
「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぅぁ」
驚いた事に声が全く出ないことに気付く。
体も何故か重く感じる。
「(何だ………………ここ?)」
思い出そうとすると頭の中から鐘が鳴り響く。
「ーーーーーーーーーーーーーーぅ、ーーーがぁ」
口は開くが声が出ない。
妙にもどかしい感じがする。
手を伸ばそうにも体が動かないところを見ると相当重傷なのか、違和感を覚える。
「あ、気付きましたかッ!?」
悠里を覗き混むような姿勢で少女が声を上げた。
「ーーーーーーーーーーーーーーぁ、く、ーーーーーーーーーーーーーーぉ」
悠里が喋りたくても声が出ない事を察してか水を一杯口に運んでくる。
「ゆっくり口に含んで飲んでください…………そう、ゆっくりですよ」
だが、まるで飲み方を忘れてしまったかのように口から水が零れていく。
「ぐぼぉっ」
「あぁっ、ちょ、ちょっと待っててくださいね」
少女が何を思ったか自分で口に水を含むとそのまま悠里に唇を重ねた。
「んーーーーーーーーーーーーーー」
「ンぐッ!!!?」
唇が柔らかいだとかあれこれってファーストキッスだっけとか色々頭の中がぐちゃぐちゃになりそのまま悠里は喉に水が通っていくのを感じたまま意識を沈めていく。
最後に覚えているのはその少女にはピコピコと擬音が付居ているような獣の耳が生えていたような気がしたがそれもどうでもいいように感じてしまうほど衝撃が強かったのが印象的だった。
再び意識を取り戻したのは空が緋色に染まる時間帯だった。
ムクッと体を起こした悠里は自分の手を握りしめ力を入れる。
「………………………………………………………やっと、動かせてきた」
本来人間は半月も動かなければ筋肉が衰え動かすのにある程度のリハビリも必要なのだが、上梨悠里と言う男はそんなのはお構い無しにやっていく。
「さて、と」
改めて悠里は室内を見回す。
綺麗に整った部屋に壁紙やカーテンが白に統一されているところを見ると恐らく病院だろうと推測していた。
ゆっくりと窓際に近付き外を覗くと夕陽が明々と悠里を照らした。
窓の外から見える街並みは活気に溢れ人々が行き交っている。
そんな風景を見るとやはりあの出来事は嘘だったんじゃないか、世界は滅んでないんじゃないかと、そう思えてきた。
緋色の空が段々と色が落ちていき金色に輝く月が出てくる。
「今夜は、月が綺麗だ」
その月を見てなのか“鳥が尻尾を振るように喜んで”ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
そこでふと、悠里に疑問が出てくる。
まず今見た鳥だが鳥に尻尾などあっただろうか?
尾羽、という“鳥類に付いているものなら聞いたことがあるのだが”、何処からどう見ても尻尾だった。
そりゃもう動物に付いているようなものだ。
そして次に大きさだが月に対しての大きさの比例がおかしい。
確かに月は満月で大きい。悠里が見た中でも一番なぐらいだ。
ならば何故その鳥が月と同じぐらいの大きさに見えるのか?
答えはすぐに意外な形で返ってくる。
オオオオォォォォォォオオオオオォォォォォン!!
さてここで問題が生じる。
どこの世界に行けばあんな規格外の鳥など居るのだろうか?
「あっれぇ? まだ疲れてんのかな? なーんかトカゲにも見えるような………………………………」
そう、空にはよくRPGなどによく見る空想上の生物が悠々と飛んでおり俗に言う『ドラゴン』そのものだった。
「あー………………………………夢だねーこれは」
「あーッッッッッッ! 目が覚めてますぅぅぅぅッッッッッッ!!」
背後から叫び声が聞こえ何事かと振り返ると先程最後に見た獣の耳が目前に迫ってきて、
「よかったぁぁぁぁぁぁぁあ!」
そのままドカン、と見事な体当たりを喰らわせて来たのだ。
「ごっふぅぅぅぅッッッッッッ!? し、死ぬ! さすがに体がまだ回復しきってないのにこれはトドメさされるぅぅぅぅッ!」
「うえええええええん! 目が覚めてよかったですぅぅぅぅ!」
こんな問答が約十分ほど行われたのは言うまでもない。




