【詩】兎・月夜の一杯
【ジャンル】想(おもう・そうぞう)
スミレ色の空冷たくて
世界を一度無に返す
白く輝く世界には
一羽のウサギが自分の足跡見て笑う
「さぁ、何処に行こうか?」
見上げた顔は痛いくらいに紅くて
思わず頬に触れていた
ただ温かくなって欲しくて
離されない様に抱きついた
「ありがとう。温かくなったよ」
その言葉が欲しかった
本当はただそれだけだった
けれどいつからだろう
何も話しかけてくれなくなったのは
ありがとうは?
何度見上げても言葉は来ない
肌は白い雪のようで体は冷たい
寂しくて淋しくて
それでも側にいたくて
もう1度笑って
最後まで寄り添い続けた
叶わぬ願いと知らないまま
寂しさが足音を立てて兎の後ろに立った時
会えないはずの笑顔に出会えた
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コップの中に入り込んだお月様
迷って飛び込んだのか
揺れに揺れて黄色い絵の具みたい
僕は少し落ち着くのを待っていた
テーブルの上ではコップが光を放つ
けれど揺れて纏まらない
その光が一点に集まり出し止まった時に
覗き込んだ輪の中で
お月様は真ん丸綺麗に輝いていた
漸く落ち着いたお月様
僕は怖がられないようにお願いする
「お月様、あなたを飲んでいいですか?」
返事は来ない、でもお月様は揺れていない
僕はそっと目を閉じ
コップに口を付ける
そしてゆっくり飲んでいき
最後の一滴まで水を飲み干した
その時なぜか、少しお月様の味がした