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【短編詩】コップの中身

【ジャンル】極楽

ここはどこ 私の居場所なのかな

ベッドの上で目覚める

一瞬だけ

天井を眺めていた瞬間に過った考えも

自然と体が動いて忘れさせた


世界の果てとセカイの始まり

そして、命の終わり


一人 小屋で椅子の上に座る

シャツ一枚で三角座り

寒そうに足をすり合わせる

両手で持つコップから湯気が立つ

親指の付け根を顎に当てる

でも本当は寒くない

彼女はそうしないといけないからそうしているだけ


退屈そうに窓の外を眺める

上半身を前後させると

床の木が音を立て

彼女の椅子が揺り籠のように動く

ずっと、子供がくだらない事で面白がるように

椅子を揺らして待ち続ける


時間は過ぎた 時計の針があれば何週もした

でも彼女は待ち続ける

コップの中の液体も湯気を立て続けて

彼女も口を付けない

光はどこかから降り注ぎ

同じ場所を同じ角度で照らし続ける

何もなく、何も変わらない

寒そうに足も擦っている

そうしながらじっと待つ


長く長く続いた暇を

彼女はコップの下に敷いて床に置いた

足を下ろして裸足のまま小屋の外に出た

小屋の外は土

何故だか分からないが窓のない方を振り向けない

小さな石ころも気にせずに向かうのは

空を見上げながら歩いてくる一人の男性の下


青い空はなく 黒いだけの空

風が吹けば吸い上げられてどこかに攫ってくれる

彼女が男性の傍に立つと

吸い上げられていた男性の視線が下りてきた

二人が視線を交わす

暫く視線を交わして彼女は指を差した 左を差した

男性はそれに従ってずっと続く大地を歩き始めた


それから同じ事を四度繰り返した

三人女性で一人が男性だった

終わる度に小屋に帰ってきて

同じ格好をして椅子を揺らした


変化は六人目の時にやってきた

今までと同じようにしただけなのに

目の前に立った彼女を見て男が笑った

五人の表情は無口だった

眉一つ動かさなかったのに男は笑った

だから彼女は囁いた

耳を下げさせて聞こえないように囁き手を取った


二人して向かうのは窓のない方

振り返れずに二人だけを見ている

どこまで行くのか心配する前に

窓のない壁と並ぶように二人は立った

彼女は手を離して男のふくらはぎを触る

徐々に下の方にあった手が上がっていく

どこまで行くのか思っていると

彼女の手はお尻の位置で止まった

彼女の様子をじっと眺めて笑っている男の顔に

囁くように初めて笑顔を作った


貴方は地獄


そのままお尻を押し出した

押し出された男は笑ったまま落ちて行った

窓のない壁の向こうに広がる

空から続く黒いだけの空間に切り取られた世界に

彼女を見て笑ったまま飲み込まれた


前の五人とは違って

軽く楽しそうにスキップをしながら小屋に戻った

足についている土を払い落としてから入る

床に置いていた 男が来る前までは湯気が立っていた液体が

僅か男を突き落とす間に冷め切っていた

普通なら入れ直すが、彼女は美味しそうに味わいながら飲み終えた

コップをまた床に置いてアクビをすると眠たそうに眼を擦る

おやすみなさいを言う相手はいないが

言葉にはせず口を動かしただけでベッドで眠りについた


また明日 誰かを地獄へ突き落す為に

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