二度目の
夜ってなんだか怖くなりますよね。
草葉の絨毯に腰を下ろすと、この世界に来て初めて落ち着いて休めた気がしてくる。遠くでシコクが溶岩に一生懸命水をかけまくっているが、あれは冷やしているのだろうか。
太陽の光が地面に当たり、影絵のように切り出された木陰がゆらゆらと揺れている。日差しは強いが、青々と茂った緑や時折吹く風のお陰で心地いい。
すると突然腹の虫が鳴り出した。
「お腹空いた」
こっちの世界に来てもう丸一日くらいか、お腹も空くはずだ。そろそろ何か食べないと体がもたない。
周りを見渡すが、当然のように草木しかない。そもそも木の実とかキノコとか見つけても食べられるのかどうかも分からないしな。ウサギとかいれば食べられるだろうけど、そう都合良く見つからない。
「何か獲ってきましょうか?」
さっきまで水場にいたはずのシコクがいつのまにか水から上がっている。体の所々がキラキラと輝き、黒い体と相まってとても美しい。色々とやらかしていなければ神々しかったかもしれない。
「岩はもういいのか」
「はい。実は既に冷やし終わってます。水をかけるのが楽しくなってしまいまして…」
てへへと、頬をかきながら言う。遊んでたのか。
「獲る余波で獲物が跡形も無くなるんじゃないのか」
「大丈夫です。たまにやってますから」
そうか、ドラゴンも生き物だ。お腹が空くしご飯も食べる。ドラゴンが食べているからといって俺が食べられるとは限らないが、探さないことには始まらないか。
そう考えてよし、と軽く気合を入れて腰を上げると
「ああ、主人様はここにいてください。我が獲ってまいります」
「良いのか?と言うか俺が食べられるものが分かるか?」
まあ、俺が行っても分からないのだが。
「我は鑑定の魔法が使えます。それを使えば毒の有無も分かります。お口に合うかは分かりませんが、あたることはないでしょう」
便利だな、さすが異世界。
この際毒さえ無ければ美味しくなくても構わない。それに色々あってヘトヘトだ。正直あまり動きたくない。というかお腹が空きすぎて動けない。
「じゃあお願いするよ」
そう言うとシコクはすぐに飛び立った。予想される突風に身構えるも、魔法を使っているのか風は起きなかった。魔法って凄いと思いながら空を見上げるとそこにシコクの姿はもう無い。早い、さすがあんなのでもドラゴンだ。
あの様子ならすぐに帰ってくるだろう。上げていた腰を下ろし、しばらく休むことにした。
ーーーーーー
目を覚ますと辺りが真っ暗になっていた。気温も下がっているのか、少し寒気を感じる。どうやらいつのまにか寝てしまったようだ。
シコクは近くにはいない。あのスピードならすぐに帰ってこれると思うが、一体どこまで行ったのか。
夜になると何処かから見られているような視線を感じるのは俺だけだろうか。
時間が経ち、目が慣れるにつれて暗さが余計に深まっていく。月が出ていないのか、すぐ目の前すらもまともに見えない。少し、怖い。
なんとなく体を起こすと、自分以外の全てが死んでしまったような静けさが広がった。考えてみればここは異世界。あのスライムのようなモンスターと普通に出会う世界だ。
今モンスターと会ったらまずいんじゃないか?
あの時と同じようにドラゴンを召喚出来るとも限らないし、召喚する前に死んでしまったらそこで終わりだ。
そうなる前に何か対策した方が良いのだろうが、どうしたら良いのかも分からない。とりあえず近くに手頃な大きさの棒があったので手に持つ。これだけで自分が少し強くなったように錯覚する。
その瞬間目の前からガサガサッと音がする。
何かいる。モンスターか動物かは分からないが、そこに何かがいる事だけは分かった。目を細めて暗闇を凝視するも平均的な視力では何も見えない。
とにかくモンスターに襲われるのはまずい。なんとかしないと今度は死ぬかもしれない。
直後
「ゲヒッ」
すぐ後ろから下卑た声がした。