メイドのバニースーツ
数年前に某シナリオコンテストに応募し、見事落選したものを加筆修正したものです。
こうして日の目を見れてよかったよかった。
私のような庶民がさ、憧れの王宮で舞踏会に参加できるって言うから楽しみにしていたっていうのにさ。
結局は人手が足りない給仕の手伝いをさせるための人集めだったなんて。
し、か、も、無理矢理にバニースーツなんて着せられた。
これってバニーガールってやつよね?
いかがわしいお店でしか見かけないヤツだよね?
なんとも困ったことに、この国の王様は政治についてはとても優秀だけれども、王宮内の若い女の子にはバニースーツを着る事を強要する悪癖があるんだって。
何故みんながそれに従うのかですって?
それは他国に比べて裕福な暮らしが保証されているから、なのかな。
今日の給仕もお給金を弾んでくれるそうだし。
まあ、さすがに舞踏会の参列者達はみんな優雅なドレスを身に纏っているけども。
「おっほん。皆の者、今宵は楽しんでいただけたであろうか。実は舞踏会の最後にサプライズイベントが用意してあるんじゃ」
あ、どうやらそろそろ舞踏会もおしまいみたい。でもサプライズイベントって何するんだろう?
「皆はワシが、世界中の珍しいバニースーツをコレクションしておることは承知しておろう。今までなかなかにそれらをお披露目する機会がなかったこと、済まなかったと思うておる」
あ、会場内が少しげんなりしてる。
「そこで今夜は特別に、それらを披露してしんぜようと思う!喜ぶがいい!イッツ ア バニーガールショーじゃっ!!」
その時、給仕長に呼ばれた私はいやな予感がした。
会場の裏手へまわると珍妙な格好をした女の子達がみな、元気なく佇んでいる。
「ああよかった、君がいてくれて。これで人数は何とかそろったよ。さあ早く!コレに着替えて!!」
渡されたのはとんでもなくセクシーすぎるバニースーツだ。
ちょ、ちょっと……見えすぎじゃない?
「特別なメダルを100枚献上しないともらえない、大変貴重な、えっちなバニースーツだよ。え、他のはないのかって?獰猛なジャイアントウサギのスーツや水蜘蛛の糸で編んだスーツなどもあったけど、他の娘がもう着ているよ。残ったのはコレだけだ。さあ早く着替えた着替えた」
着替えたら会場へ来るように。
そう言って給仕長は更衣室を出て行った。
じょ、冗談じゃない。こんなの着て人前なんかに出たら、恥ずかしくて明日からこの町で暮らしていけないわ。
でも、王様に逆らってもこの町では暮らしていけない……どうしましょう、絶体絶命だわ。
……そうだわ!別に私じゃなくてもいいのよね?
誰かがコレを着て人前に出ればそれでいいはずよね?
あぁ、でも私より可愛い娘がそう都合よく余っているものかしら……
その時部屋にこの国の王妃様が入ってこられた。
「まったく、陛下の悪趣味にも困ったものだわ。メイドを全てバニーガールにするなんて。あら、アナタ、こんなところで何グズグズしているの。早く着替えて会場へお行きなさい。まったく」
そ、そうね。だめでもともと。
「あら、その紐みたいなバニースーツはそんなにも貴重なものなの?で、自分には恐れ多くて着られないと。コレを着こなせるのはこの国でも最も高貴で美しい女性だけですって?アナタまさか、ワタクシにそれを着ろとおっしゃってるの?」
ジロリ。
怖い目線で睨まれた、と思ったら。
「ふぅ、そうね……陛下のバニーガール好きは、元をただせば数十年前、高級カジノでバニーガールとして働いていたワタクシを見初めてしまったことが始まり。今一度、ワタクシがコレを着て、へ、陛下を誘惑してしまおうかしら。ポッ」
なんだか恐いことをブツブツつぶやいている。
けど、聞かなかったことにしよう。
「そうとなればアナタ、身支度を手伝いなさい。ワタクシもまだまだ、若い娘には負けませんことよ!」
あ~、なんとか窮地を脱出できたわ。王妃様もヤる気まんまんだし、これっていいことだよね。ね?