第1話『私は王子様の婚約者(笑)』
全然ストック無いのに見切り発車です!
エタることはないけど、頑張って書きます(汗)
私は困っている。
目の前にはすごいイケメンがいるのだが、ものすごく睨んできている。
まぁ無理もないだろう。
だって、イケメンの上に前触れもなく現れたのは私の方なのだから…
「おい。すぐに俺から降りろ。」
うん。すごいドスの利いた声で、イケメンがめっちゃ怒ってる…
「あー…すみませんです。」
私は大人しくイケメンの胸の上から降りる。
そもそもここは一体どこなんだろう?
豪華なベッドにアンティーク調の机がある。壁紙と言うよりは本物の石でできた壁だ。だが、武骨な感じではなくキレイな布が欠けられていたり塗装されたりしているし、しっかりとした額に入っている絵画もある。
灯りは何だろう?蛍光灯やLEDライトとかではないが、ろうそくの火やガス灯でもない。不思議な柔らかさを感じる灯りが壁と天井に付いている。
そもそも天井の灯りはシャンデリアだ!
イケメンの方を見る。
デザインはチュニックのようなものだがシルクで出来ている。
イケメンは黒髪だが目は碧眼だ。
何だろう?友人のやっていた乙女ゲームに出てきそうな線の細い『ザ・王子様』といった感じだろう。
こんな顔の整ったイケメンには初めて出会ったわ。
「貴様何者だ?いつまでアホ面でこちらを見ている。」
「あ゛あ゛ん!?誰がアホ面やねん!」
あ!しまった!
「…失礼。誰がアホ面ですって?」
イケメンがすごく驚いた顔でこちらを見ている。
…若干引いてる気がするけど気にしないでおこう。
…ごめんね。
「すまなかった。確かにレディに対する言葉ではなかったようだ。だが、貴女は何者なのだろうか?ここは私の部屋で、扉には兵が付いて怪しいものなどは入れないようになっているのだが?」
うん?兵隊さんが付いてるの?
「あー。こちらこそすみませんでした。私も状況が良く分かっていないんです。先ほど塾の帰りに通り魔に襲われそうになって必死に逃げて何かに躓いたと思ったら目の前にあなたが居たんです。…信じられませんよね?」
そうなのだ。今年は高校三年生で入試に向けて塾で勉強をしていたのだが、帰り道に目だし帽をかぶった見るからに変態と思われる奴がナイフを片手に襲ってきたのだ。
てか、夜に目だし帽でナイフ持ってる奴ってお巡りさんに見つかり次第、職質 → 銃刀法違反で即逮捕な案件でしょ?見かけた瞬間逃げ出すわ!
「ふむ、塾とやらが分からんが何者かに襲われそうになり、急に私の目の前に来たと。信じるところが一つもないな。」
「ですよねー。」
「ご理解いただけて何よりだ。では…衛兵よ!侵入者だ!即刻捉えよ!」
うそーん。理解できるけど、それはやめてほしいなぁ…
こうして私は抵抗することも無く捕まることとなった。
…
……
警察に突き出されるのかなぁと思っていたら、なんと槍を持った西洋風の鎧を着た人たちに捕まってしまった。何のコスプレ?そもそもここどこよ?
とか何とかあきらめの境地で思っていたら、イケメンが兵隊さんに何やら話をしている。
良いぞ!頑張れ、イケメン!なるべく情状酌量を認めてくれ!
と思っていたら先ほどの部屋よりももっとすごい豪華なお部屋に連れていかれた。なんで?
「ふむ、そなたが突然現れたと申す者か。不思議な服を着ておるのう。」
いや、あんたには言われたくないし。
何なのこの人?見た目は渋めのおじ様なんだけど、まるで王様みたいなファッションだし。
…うん?あれ王冠のように見えるんだけど…
しかもよく見たらものすごく高価そうな金属でできているんですね。
奥の方には玉座みたいな仰々しい椅子まで見えるし…
…何かの撮影なのかしら?
でも、こんな俳優さんとか見たことないし。
「あのー…これは何の撮影でしょうか?」
「ふむ、そなたは私が誰か分からんのかな?」
「すみません。あまりファンタジー的なドラマとか映画は見なくて…」
あれ?有名な俳優さんならある程度は知ってるんだけどなぁ?
本当、こんな渋めのダンディーな俳優さんっていたっけ?
「ラインハルトよ。どう思う?」
おじさんがイケメンに問いかけている。
ラインハルトって何それ!どっかの銀河帝国の皇帝みたいな名前だし。
「父上。おそらくは…。ですが、それほど強そうにも見えません。ですので、判断に迷っていまして。もし彼女が暗殺者であればすぐにでも私を殺すことが出来たでしょう。わざわざ今捕まえられている意味がありません。かといって本物であればこの国の、いえ、世界の危機が訪れたことになります。」
ええそうですよ。私は暗殺者なんて物騒な人じゃありませんよー。ごく普通の一般人ですよー。
「うむ、そうじゃな。わしも同じ意見だ。黒髪・黒目の特徴を持ち、ラインハルトの目の前に突然現れた点を見ても、おそらくは…な。だが、確証もないまま世界の危機と考えるのもまだ早い。国民に不安を与えてしまうからの。」
さっきから世界の危機ってなんのこと?どういう設定の世界観なのよ?
「そこのお嬢さん。そなたの名前は何と申すのだ?」
ん?私かな?
「私の名前は如月 美紀です。」
「そなたはどうしてここに来たのか分からんのであろう?では、帰り方が分かるまでこのラインハルトの婚約者として振る舞ってもらえんかのう?もちろん、本当の婚約者でなくて良いのだ。」
んな!何よそれ!どういうこと?
「あの、どういうことなのでしょうか?」
「ふむ、このラインハルトはこの国の王子なのだが、未だに婚約者を作ろうとせんでな。それで、おのれの娘をこやつの妃にしようと画策しておる貴族どもが多くてな。そこで、黒髪・黒目を持つそなたなら王家ゆかりの者と思われるので、露払いに丁度良いのだ。その代わりに私たちがそなたの面倒を見ようという取引じゃよ。」
「なるほど。」
「それに、そなたも薄々は勘づいておるのだろう?ここがそなたの居た世界ではないと。」
ですよねー。だって、さっきから私を捕らえているのって光るロープで、衛兵さんが呪文みたいなのを唱えたら手から出てきたもんねー。
分かってたけど…認めたくなかったなぁ…
「あー、でも私そんなマナーとかも良く分からないですし、王子様の婚約者なんで大それたことなど…」
そこで不意に扉が開いた。
「お父様?お兄様?こんな時間に何をやっているのですか?」
扉から現れたのは愛らしい黒髪の少女だった。
いや、天使だった!
って、お父様?お兄様?
もしかして王子様の妹なの?お姫様なの?なんて可愛らしいの!王子の婚約者という事は私の義理の妹という事になるの?私、お姫様から『お姉さま』って呼ばれるの!?
「イリスよ。まだ起きていたのか!今はラインハルトと話中なのだ。早く部屋に戻…」
「やります!偽装婚約者喜んでやります!ところでイリスちゃんって言うの?可愛いね!私の事はお姉さまでも美紀姉さまでもお姉ちゃんでも好きに呼んでいいからね?大丈夫よ!怖くないから。まずは一度お姉さまって呼んでみて!」
「あなた誰?お兄様の婚約者なの?お姉さま?」
むっはー!!かわいい!めっちゃ可愛い!なにコレまさに天使?天使が舞い降りてきたわ!
「む…そ、そうか。引き受けてくれるのか。」
「父上!本気ですか!いくら可能性がるとはいえ、どこの馬の骨ともいえぬこの者を私の婚約者などと!」
王子うるさい!天使ちゃんがビックリしちゃってるでしょうが!
「ラインハルトよ。これは決定事項だ。変更は無い。それに、この者はまずは宰相の養女として伯爵の娘となる。馬の骨ではないぞ?」
「な!そんな無茶が宰相に通るわけないでしょう!」
「問題は無い。のう!宰相よ。」
「はい。問題はありません、王。」
うわっ!どこに隠れていたんだこの人!宰相?もしかして隠れて私を試していた?普通は王様が隠れてるんじゃないの?
「な…な…な…」
あ。王子が壊れた。
「まぁ、素敵ですね!あなたも私と同じ黒髪なのね。うふふ、私たち確かに姉妹に見えるかもしれないわね。ねぇ、お姉さま。」
妹ちゃんマジ天使!
異世界に来ちゃってどうしようって思っていたけど、こんな私好みの美少女とお近づきになれるなんてツイてる!
元の世界に帰る方法も探さなきゃだけど、それまでにイリスちゃんと仲良くなってキスはしたいなぁ!
正直、男なんてどうでもいいけど、偽物の婚約者を演じますか!
ん?あ、言ってなかったっけ?
私は如月 美紀。この春高校三年生になったばかりのレズビアンです!
と言うわけで、今回の主人公はレズビアンです。
もしよろしければ続きも読んで見てください!