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10話「妹たちと修学旅行」 後編

「はあ……恥ずかしくて死ぬかと思ったぜ」

「えへへ、リンちゃんゲット〜」


 疲弊している俺とは対照的にレナはご機嫌だ。 さっきの地獄のくじ引きに見事勝利しレナは景品のクマを抱き抱えている。


「お前な……俺に感謝しろよ……」

「うん、ありがとねっ。 ところで……さっき言ってくれたことは本心なの?」


 レナは何故か頬を赤らめ俺に問う。

 俺がさっき言ったこと、それはくじ引きを引くために言った偽の惚気話のことだろう。 ……思い出すのも恥ずかしい。

 惚気話を言わなければくじを引くことができないというわけのわからないルールの中で俺とレナはアドリブ力を試されていた。 なのに、だ。 レナはくじ屋のおじさんの「彼氏の好きなところは?」という問いに対して、「や、優しいところかしら!」なんてありきたりな答えを出したのだ。 いくらなんでもおじさんは納得いかないようでくじは引かせてもらえなかった。 そして、だ。 機転を利かせた俺は考えに考え同じ問いに対して、「好きなものに一直線なところですね。 たまにそれが裏目に出ることもありますが、中々出来ることじゃないですからね。 彼女のそんなところが尊敬できますし、好きです」

 ……今思えばよくもまああの時の俺はこんなことをすらすら言えたものだ。

 ……正直に言おう、レナの好きなものに一直線なところは飽き性の俺からすれば純粋に凄いと思う。 でも、尊敬? 好き? そんな感情はない。 ないのだが……さっきからレナは頬を赤らめせて俺を見つめてくるのだ……ついつい俺もドキッとしてしまう。


「ねえどうなのよ……レナのこと……好きなの?」

「は、はあ? な、何言ってんだよお前……」


 レナが俺の服の裾を引っ張り顔を近づけてくる。 レナの匂いが香る。 香水とかそんなんじゃないけど、とにかく良い香りが俺の鼻をくすぐる。

 レナは頬を赤らめながらもだんだんも俺へと近づき、もう少しでキスでもするんじゃないかと思う距離まで近づいてきた。


「おい……近いって」

「なーんてねっ」


 レナはそう言って俺から離れ腹を抱えて笑った。


「何あんた本気にしてるのよ。 あははは。 おっかしい」


 な、なんて性格の悪い女だ。 今までのは演技で俺を騙してやがった。 てかそんな演技力あるならくじ引きの時に使えよ……


「お前なあ……覚えとけよ」

「忘れない忘れないあんたの間抜けな顔は忘れないわよ」

「……ったく」

「ありがとね。 一応感謝だけはしとくわ」


 レナはそう言って俺に笑顔を見せた。

 まったく、わがままなお嬢様だ。

 か、可愛いから許してやろう……

 修学旅行終了後、家族団欒中にさっきの惚気くじ引きの様子がテレビで放映されることをこの時は思いもしなかったのだった。

 勿論、妹たちにも観られた……

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