1一9。
間違えて投稿してました。
教えてくださりありがとうございましたm(__)m
よろしくお願いします。
月に一度足を運ぶ店、“懐古の森の泉”。
マイラが雨宿りに偶然寄った店で、今では月に一度訪れるお気に入りの店。
月に一度の息抜き。
マイラが薬師だと知ったマスターから頼まれ常備薬を届けに行く。
ひとり気負うことない時間はマイラには貴重だ。
肩の力を抜いてホッとできる一杯の時間は至福の時。
大好きなカクテルをのんびりと味わいながらグラスを眺めいつものようにカウンターで微睡んでいた。
カランカラン、とドアベルが鳴り来客を告げる。
マスターは入り口に視線を運び来客者をウエイターに案内させている。
マイラは背後の来客者達を気にすることなくカクテルを味わっていた。
だが少々騒がしくなり仕方ないか、と席を立った。
が、見てしまった。
「お?マイラかい?」
見てしまい視線が合ってしまった以上無視出来ない。仕方なく足を止め声の方へ向いた。
「スターリー隊長。お疲れ様です」
スターリー第三隊長に挨拶を交わし、同席していたカレット副隊長に頭を下げ目礼した。
「マイラはよくココに?」
「常備薬を届けるついでに来ます。月一で来ています」
「ほう、常連か。ならオススメはあるかな?」
「すみません。わかりません。自分は好みのカクテルしか頼まないので他のお酒は分からないです」
いつも同じカクテルしか頼まない。
それを飲みに行くから、それ以外は飲まない。
他が分からないので申し訳なくしているとスターリー隊長に同席を促された。
「なら一緒にどうかな?他の味を覚えるのも楽しいぞ?」
「いえ。明日に響くといけませんので、折角のお誘いに申し訳ありません」
「君ともゆっくり話しをしたかったのだが、ダメかね?」
「………恐縮です」
上官からそう言われてしまえば断れない。
マイラは慇懃な態度を崩さず席についた。
「いつもそれを頼むのかな?」
「はい。これを飲みに来ているので」
スターリー隊長は度数の高い蒸留酒のカクテルを頼み、カレット副隊長は辛口のリキュールベースのカクテルを飲んでいた。
マイラはいつもの赤ワインのカクテルを一口飲んだ。
ここで二杯飲むのは初めてだ。
飲み過ぎはよく無い。これを飲んだら席を辞すつもりだ。
「そのお酒に思い出でもあるのかな?」
「……昔から好きだっただけです」
「昔、と言うほど年季を感じない年齢だよ。まだ君は二十代だろ?」
「そうですね……」
「アクトはどうだい?部下から勧められた店でも行けば会話のネタになるだろ?」
「………………そうですね」
アクダクト・カレット副隊長はスターリー隊長から愛称のアクトと呼ばれている。
氷の副隊長は変わらず動かない表情筋でカクテルを口にする。
カレット副隊長の反応の無さにスターリー隊長は眉を寄せる。
コミュ障のカレット副隊長を部下から勧められた店に連れて来たのだろうが、空振りってトコか。
マイラは二人のやり取りを眺め隊長の部下管理も大変だなぁと思った。
カレット副隊長の“氷の美貌”は昔からだ。
“氷”になったのはだいぶ昔かららしい。
ワケは知らないが確執を感じるその頑なな態度にトラウマでもあるのかねぇ、とマイラは客観的な推測が浮かんだ。
スターリー隊長とたわいない会話をして時間がすぎた。
カレット副隊長は氷の彫像の如く表情を動かすことはなかった。
「そろそろ失礼致します。スターリー隊長お誘いありがとうございました」
「そうかね。まだもう少しどうかな?」
「飲み過ぎは明日に響きますのでこれで失礼させていただきます」
「そうか。残念だが。では気をつけて帰りなさい」
お代を出そうとするとスターリー隊長が自分が誘ったのだから、と払ってくれた。
マイラは有難く奢ってもらい店を後にした。
石畳みを進み宿舎に向かう。
けぶる月明かりを見上げながら夜風を受けた。
周りを見回せばほろ酔いで歩く者、男女睦まじく歩く者様々に人の流れを見渡しマイラはふぅ、と溜め息を零した。
ひとり自由に歩ける今が一番なのだ、と。
そのひとり自由な息抜きを闖入者に邪魔されマイラは肩を落とした。
はあぁ。
上官相手は疲れるなぁ……。
折角の余韻も冷めてガックリと官舎に戻ったマイラだった。
お読みくださりありがとうございます。