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番外編。《ガルフ・ストリーム》

団長の口を借りた説明回のような話です。

本編の補足と裏視点になってしまいました。



日間恋愛で2位を頂きました。

閲覧評価ブクマしてくださった皆様ありがとうございます。展開の遅い拙作にお付き合い頂き感謝いたします。



では、よろしくお願いします。




『 魔物を退かせます!! 』




ーーそれがどれだけ凄い言葉だったか……。




ガルフは回想すると目を伏せた。





今回の遠征は魔物の異常行動が発端だ。


各地で変な偏りで増加した魔物。

それによる被害。

王都周辺の魔物が減った要因か。

それすら具体的な解決に繋がるものに辿りつけず手がかりもなかった。

増減したあとでは後手なのだ。

先手を取れぬ焦りに包まれていた。



魔物の脅威に遠征し、その先で医師も薬師も不足に感じるほどだ。


遠征先でやはり少なからず被害が出る。

補充が難しいのは知っているが交渉するしかない、とガルフは医務室長の元へ向かった。


道中、見覚えのある顔を見かけた。

何度か見たその顔は宮廷医術師に師事していた者だと思い出した時は幸運に感謝した。


宮廷医術師バーンズのように魔力による治療医術は出来ないようだが、医術と薬師の両方の知識を持っているのは貴重な存在だ。



後日医務室長に貸し出しを願い遠征に同行させることになった。








いつも通りの遠征。


だが何か違う気配に落ち着かなかった。

野生の勘か、経験か。

妙に騒めく森に神経を尖らせながら行軍した。


副団長のラティス・ネールが報告を受け俺のところに来た。



「斥候からの報告です。国境の向こうラットラーで騒動が起きているそうです。こちらに火の粉が来なければいいのですが」



詳しくはまだ分からないそうです。と付け加えガルフの対応を待つラティス。



「こちらに向けての騒動ではないのか?」

「ラットラーの砦付近の騒動らしく斥候も近づけないそうです」





ラットラーの動向は気になるが砦に向かった。





その後、魔物の大群が大挙して押し寄せて来た。



ここまでの大群を想定していない今の遠征部隊では抑えられない。この兵の数で魔物の大群を押し留めるなど無謀だ。

無謀だと分かっていても退くわけにはいかない。


俺は先陣を切り大群に攻め込んだ。


斬っても斬っても終わらない。

大牙の闇熊に巻角の猪、熊のようにデカイ狼。あらゆる魔物が攻め込み騎士団総動員であたるも押し返されるのは時間の問題だった。



その時ラティスが怒鳴るのが聞こえた。



「混戦時に馬など!誰です!!」



どこの馬鹿か!?と罵倒するラティスに視線をむければ馬で駆け寄る者がいる。


魔物の入り乱れる中に馬で突っ込んでくる命知らずを見れば、黒衣を纏う薬師だ。


思わず驚き剣先が鈍るところだった。



そいつは大声で叫んだ。



「団長!!魔物を止めます!引いて下さい!無理です!」

「お前は何処の部署です!関係ない物が指図をするとは!」



激昂してラティスも怒鳴っている。ラティスの剣幕に負けずソイツは吼えた。



「魔物を退かせます!引いてください!!」



視線があった。



迷う事なく視線に力強い意思を乗せ。



ソイツは馬首を返し筒から煙を上げながら征野を駆けた。






白い線で結界を張ったように。






ーー魔物の進行が止まった。





煙りを嗅ぎ身悶えた魔物は踵を返し森の中へ戻っていった……。






砦に向かい遠征部隊を整え残務処理をする。


だが、頭に浮かぶのは先程の事だ。


普通の人間は魔獣の前になど出れない。

素人が魔獣の群れを前にすれば恐怖に身動きがとれず震えるのが精々だ。

それをソイツは物ともせず戦線を駆け抜けた。

巧みな馬術と度胸に感心した。





ソイツは治療にあたり忙しなく動いている。それを騎士達皆が思い思いに見つめている。

ソイツはその視線を避けるように仕事に集中しているのが分かった。

話しを聞きたかったが傷付いた騎士達の治療が優先だ。

その為にソイツを遠征に引き抜いたのだから。

俺は隊長達に指示し今後の対策を伝えた。





騒動が落ち着いた頃ソイツを司令官室に呼び出すことにした。




「おい。本当に魔物が退いたのか?」

「ああ。目の前で見た」


「偶然じゃなくか?」

「ラティスも見てる」


「じゃあマジか」

「お前……。俺を信用してないなぁ」


「当たり前だ。いいかげんだろ、お前」

「チッ!!」



俺とタレア砦司令官ムカロ・アースクエークは同期だ。髪も髭もモッサリの熊で騎士団見習いから一緒の気心知れた仲な分、辛辣に言ってくるのがムカつく。



ムカロは魔物が退いた話しを信じられず直接ソイツに聞きたいらしい。

俺もソイツに聞きたいことがあるから、ここに呼び出してもらったのだ。



「どうやって作り出したのでしょうか」



タレア砦副官長ディサローノ・パーメットは神経質そうなとんがった顎を手で撫でつり目の狐目を細めた。



「マイラ・バーンズの同僚ザザ・クエーカーズが協力しているようです。彼は悧発で俊秀。彼が関わっているからでは?」



ラティスはそう言うが俺は違うように思えた。彼は軽妙な会話で世渡りが上手い。だが知恵と知識は違う。身分から知識を得るに充分な環境だったであろうが、それが魔物除けを創り出す地盤になったとはどうも考えにくい。

そもそもザザもラティスも同じ性質だと俺は思っているが言ったらラティスに睨まれそうだからやめておく。


そうなるとマイラ・バーンズ自身の発明、か?

若造の知識でここまでの物を創り出すとは甚だ疑問だが。


まあ、来たらわかることだ、と待つことにした。





呼び出されたソイツは萎縮し紅茶に口を付ける余裕もなく固まっていた。

まあ、目の前に厳つい熊、もとい、ムカロがいれば誰でもそうなるか。


ムカロが自分の紹介をし質問を始めた。






やはりソイツが魔物除けを作ったようだ。



ラティスはまだ疑いの目で見ている。

内心、こんな若造に??と言うところだろう。

副官長は狐目の奥を鈍く光らせ皮算用をしているのが伺える。使えるモノはとことん使う気だろう。バーンズ侯爵に睨まれる前にこの副官長からソイツを離すべきだろう。


やることが増えるしかないこの状況を俺は恨みたくなった。





煙幕について聞けば、王都周辺の森で試作を試したらしい。

それが魔物が移動した原因と知ることができた。


まあ、知らずに使用していたから魔物の移動までは知る由もなかったのも当然か。



ーーなぜなら、虫除けだったからだ。



聞いた時は耳を疑った。


虫除けの試作中に襲ってきた魔物に偶然かかったことで魔物除けになると発覚した、と。




流石のムカロも、虫除け……、と聞き驚いている。手で髭を撫でると俺に視線を向けた。

俺に振られても困るが。

顔を顰め嘆息するとソイツに事情を説明した。



辺境の魔物の異変に隣国の策略かと探っていた。王都周辺の魔物が他所に移り増加して被害を出していた。

増加の原因を探っていたと言えばソイツは蒼白した。



「私の、処分は……」



ことを知り衝撃を受けているようだ。

死刑宣告を待つ虜囚のような顔色で俺の答えを待っている。



「ああ。……特にない」



待たせるのも可哀想だと即答すれば安堵より困惑しているのが分かる。

これだけのことがあったのだ。

しかるべき処分があると思ったのだろう。

だが、実際ソイツは何もしていない。

王都周辺の森で煙を出しただけ、だから。



今のところは、だ。



パーメット副官長は、処罰なければ利用する気満々で安堵から肩を落としている。

ラティスは呆れ顔で俺を見た。指揮下に無断で侵入したことと団長に対する越権行為を咎めたい、と顔が物語っているが。


まぁ、俺もそれで終わらせるつもりはないが。


ただ……と、言葉を続ければソイツに胡散臭い顔を向けられた。



「魔物除け、作れよ?」



俺の言葉にソイツは不承不承頷いた。





ーー





魔物の襲来にまだ砦は喧騒に包まれていたが徐々に落ち着きを取り戻していった。


そう俺は思っていた。



第四副隊長バーベイ・ウォールバンガーから報告がきた。


マイラ・バーンズに対する騎士団の態度について。



マイラ・バーンズに対しあからさまな嫌がらせをする者がいる。魔物を退けたことに対し手柄目当てだと中傷していると。


バーベイは物静かで冷静なヤツだ。そのバーベイから若干とはいえ憤る気配を感じた。



バーベイには息子がいたが魔物に殺された。

生きていればマイラ・バーンズに近い年だっただろう。マイラに息子を重ねているような物言いでバーベイに同情はするが。



確かにあの戦況で煙幕の効果は凄かった。

騎士の矜持を揺るがしかねないのも分かる。

今は心に留めておくとバーベイに伝えた。



だが、報告はそれだけで終わらなかった。



第一隊副隊長グランド・バーグからも同様な報告が出た。

仲間の死を悼む故の暴挙。

もちろん死を悼むからと言って許されることではない。

グランドはアイスブルーの瞳を細め隠すことなく剣呑に言い放った。



「騎士団が煙幕で助けられたと、団長自ら言葉にすれば治ります」



コイツは簡単に言ってくれる。


騎士団が煙に助けられては名折れなんだが。

ハッキリさせなければ誹謗中傷が止まないだろう。危ないところを救われたのは事実だ。


まったく。この副隊長は。

いつもはフラフラ仕事をサボり第一隊長に絞られているくせに。



まあ、団員が手を出し怪我を負わせたなら、それも致し方ないか、と俺もなかば諦め、事実を事実として発表するだけなのだ、と納得した。




後日団員全員に先ほどの言葉を告げ、マイラ・バーンズに対し無益なことをする者は処罰すると伝えた。






これで一応落ち着きを取り戻すか、と俺は溜め息を零した。

だが、そうは問屋が卸さなかった。



マイラが拐われた。

ムカロから間諜の話は少し聞いていたが、魔物除けで動いたようだと。


事前に動いていたムカロはマイラを囮に残存する間諜の炙り出しをするようだ。

その旨を伝えればグランド達に睨まれたが今は瑣末な感情など気にしている場合ではない。


ムカロと共にマイラは奪還したが、残務処理が山積みだ。




緊急回線の通信魔具で王宮と連絡を取り方針を決める。

西の兵士の遺体は正式に使者を立て隣国ラットラーへ送ることが決まった。


ラットラーの兵士が魔物に追われて逃げ込み死亡した。表向きは、魔物に追われ国境を越えてしまった、という不可抗力な事態となっている。

例え、“ わざと ” ムーンバに逃げ込みながら魔物を引き入れた、としても。

粗雑に扱い死に至らしめた、と言われたらこちらに不利になる。

死んだのは自害故、これも不可抗力。

我がムーンバ国としても魔物による怪我は治療した。

建て前上、魔物に追われ致しかた無いとはいえ難癖をつけられたら堪らない。

コレを開戦のきっかけにはしたくは無い。

そちらは不法入国。

遺体を丁重に送り返し此方の正当性を通し、あとはマイラ誘拐犯の件の書類を出した。


これに対する不法入国、誘拐の罪状と国の関与を示しラットラーに対し優位に交渉する材料とする。





山のような書類に目を落とし椅子の背もたれに凭れ掛かり天井を仰いだ。






副長に任せるか。










裏視点をうまく書けず時間がかかり、番外や番外編等が遅々として文が進まず困りました。

書く程に語彙が下がるのは暑さの所為にさせてください。


お読みくださりありがとうございました。

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