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2ー14。

よろしくお願いします。


………………自分、横になってる。



覚醒した意識が、自分は寝台に寝ているのだと認識した。



マイラは目を開けボケる視界にしばらく天井を見つめた。



思い出せるのは袋詰めされたところまで。

袋の中で微かに匂ったあの香り。

睡眠香の匂いだ、と思い起こせば身体が怠くて起き上がれないのも致し方ないか、と諦めた。

腕すら動かすのも億劫になるほど大量に嗅いだなら何日寝込んだのか?と思った。



視点の合わない視線を窓に向ければ外が暗くなっているのが分かった。


腹痛い……。



腹部に残る鈍痛がマイラの身にあったことを思い出させた。



ーー誘拐、された?



見たことのない重厚な装飾を施された部屋の天井を見つめ動くことすらままならない身体に嘆息してマイラは再び目を閉じた。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




バタバタと人が動く音とドアの開閉音で気がつき瞼を開けたマイラ。



「気がついたか」

「…………バーグ副隊長」



薄っすらと開けた瞼をゆっくり見開き視線を横に運べば見慣れた顔にマイラは安堵した。


マイラは目を瞑り深く息を吐いた。



知らない部屋だが見知った顔があることでマイラはやっと安心することができた。


起き上がれないマイラは寝台の縁に腰掛けたバーグ副隊長を顔だけ動かして見つめた。

いつも太々しく温室を闊歩し尊大に構えるバーグ副隊長の顔が見るからに曇っていた。



「……なにがあったんでしょうか?」



マイラの質問にバーグ副隊長は答えずに目を細め苦悶のような表情を浮かべた。

それを見て、なにかあったのは分かるが、そのなにか、をマイラは知りたいのだ。

バーグ副隊長に再び質問をした。



「自分になにがあったのでしょうか?」



バーグ副隊長はやはり答えずマイラの頬を手で包んだ。



「無事で良かった」



その眼にいつもの鋭い光はなく和らいで見えた。

バーグ副隊長の大きな手で撫でられた。

節くれだった指、剣だこのある厚い皮膚の感触。

何より掌から伝わる体温がマイラに染み込むように暖め、恐怖と不安で強張っていた気持ちが解されたようだった。

自分が恐怖で縮こまっていたことに改めて気がつきマイラは安堵から身体の力が抜けていった。


患者を手当てで触れることがあっても他人から触れられることはない。

撫でられる心地よさにマイラはしばし目を瞑り感受していた。


それをバーグ副隊長がどんな瞳で見つめていたかは誰も知らない。











「お前は隣国のラットラーに誘拐されかけた」

「へっ?」


「魔物をこちらに追い立てた兵士からお前の情報が漏れたようだ」

「はあ?」



バーグ副隊長は眉間の皺を深く彫み顔を顰めた。



「向こうの動きが早すぎて護りきれなかった」



すまなかった、と目を翳らせるバーグ副隊長がいつもと違い過ぎて違和感しかない。

マイラは状況の急激な変化に追いつかず放心していた。



えーと。

自分が狙われた、ってことか?

国の要人じゃあるまいし。



グバーグ副隊長はマイラの表情を見て苦笑いをした。



「自分が狙われたワケが分からないって顔してるな。……分からないか?」



素直に頷きバーグ副隊長を見上げれば眉をしならせ困惑というより呆れ顔で溜め息をつかれた。



「魔物除け、だよ。外交の切り札になるとクバーノ室長に言われなかったか?それだけ凄いモノなんだよ。あれは」





バーグ副隊長はマイラが誘拐され救出するまでの経緯を説明した。



マイラは袋詰めにされ国境近くまで運ばれた。国境超える前に追尾していた部隊がマイラを奪還した。

砦の精鋭部隊が迅速に追尾していた、と聞きマイラはふーん、と半眼になった。



「追尾してた、ってまるで泳がせていたみたいじゃない?」

「…………ああ、そうとも言えるな」


「!!なにそれ!??本当に囮にされたの??」



自分が狙われた原因は分かったが囮にされていたとは憤慨だ!と怒りをバーグ副隊長に向けた。



「悪かった。だが団長命令で、司令官が主導だが。間諜がマイラを狙っていたのを知って、ついでに色々炙り出するのを止められなかった。クバーノ室長だけがマイラを擁護しようと動いていたんだ」



クバーノ室長が?と聞きマイラは首を傾げた。

バーグ副隊長は申し訳なさげに言うのをマイラは疑いの眼差しで睨んだ。



「クバーノ室長はいつも変な目でコッチを見てたんですが?……ちょっと信じられませんね」

「クバーノ室長は医務室長としてマイラを近くに置いて狙われないように護ろうとしてくれていたんだが、君に断わられた、と言っていた」



ねめるように見られていたのは心配からなのか……?と、クバーノ室長を分かりづらい視線に落胆と申し訳なさが少し湧いた。少し、だが。



マイラ誘拐はマイラが寝ている間に解決していた。




そう。自分が意識を失い、勝手に囮にされ目を覚ます間に全てが終わっていたのだ。

事後確認をして経緯を理解した今、今後の展開にマイラは頭を悩ませた。





ああああああ!!!!

もう疲れたーーーーー!!!!






お読みくださりありがとうございました。

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