2ー10。
よろしくお願いします。
マイラは捕らえられた西の兵士の手当てをしたことから引き続き治療をしていた。
治療し薬を渡したりし、今日も食事と薬を持って向かっていた。
だが、西の兵士達が自決した。
舌を噛み切り命を絶ったのだと聞いた。
助けられたことが屈辱なのだと、騎士達は言う。
日本の武士も敵の手に落ちる前に切腹を選ぶのだから似たようなもんか。とは思うがマイラには理解が出来ない。
助かった命を無駄にするなんて、と思っていると嫌な人物と行き合った。
報告を受けネール副団長が来ていたのだ。
鋭い眼光に冷たい表情に青緑の瞳がギラリと光り背筋が凍るような威圧を感じマイラは改めてネール副団長が苦手だと再確認した。
妙齢な婦女子に人気らしいが、こんなに怖い人なのに、とマイラは心の中で思った。
ネール副団長はマイラを一瞥すると口を歪めた。
「敵に情けをかける必要はありません。騎士の矜持と医療者の矜持は違う。一緒にしないでいただきたい」
ネール副団長はそう言うとさらに目を細めマイラに睨みを効かした。
「情けを受ける為に騎士になったわけではありません。命を落とすとしても進むのが騎士の本懐。情けは、逆に仇となりますよ。それが命取りにならぬように」
理解しろとは言いません。身の程を弁えなさい、とネール副団長はマイラを見下ろした。
「………分かりました」
マイラはそう言うのが精一杯だった。
晴れない気分のまま治療を手伝いマイラが薬を取りに倉庫へ向かえばまた騎士に絡まれた。
「魔物退かせて英雄気取りか?」
「……そんなわけ、ない」
またか、と内心舌打ちしつつも恐怖に身構えた。
デカイ騎士に囲まれて怖くないわけがない。
マイラは震えるのを押し殺し睨み返せば騎士が舌打ちをして顔を歪めた。
「じゃあ何故すぐ出さない!!出し惜しみか!?後から格好良く登場か!!」
「は?馬鹿か!?出し惜しみなんて、そんなことしてたら自分も死ぬだろ!」
マイラもいい加減うんざりする同じようなやり取りに語気が強くなる。
「最初に出せただろ!」
「今更言ってもしょうがないだろ!謝罪でもすれば死んだヤツが生き返るのか?」
「ぐっ!!!お前っ!!!」
激昂した騎士に胸元を掴まれた。
腕を振りかぶった騎士が目に入り、殴られる!と思いマイラは反射的に目を瞑った。
だが痛みは訪れず、マイラは恐る恐る目を開いた。
バーグ副隊長が騎士の腕を掴んでいた。
「騎士が暴力に訴えるとはな」
「………っ!ですが、こいつは!」
「危険を顧みず、魔物を退かせた」
皆を助けた、違うか?と、バーグ副隊長は静かに、だが低く唸るように騎士に向いた。騎士は掴んでいた手を離し目を伏せた。
「騒動を起こした騎士はあとで隊長のところに行け」
不承不承に頭を下げる騎士達は立ち去りバーグ副隊長がマイラに向いた。
マイラはあまり無様なところは見られたくなかったのだが助けてもらったのには感謝した。
「……バーグ副隊長、助かりました。ありがとうございます」
「大丈夫か?怪我は?」
「……ないです」
「そうか」
バツが悪く顔を逸らし掴まれた襟元を直しているとグランド副隊長に手首を掴まれた。
「あ?あるだろ、首に痕が!」
「ああ、それは前に……」
「前?」
「え、ああ、ちょっと……」
胸倉を掴まれたことで巻いていたスカーフがズレて首筋についた痣が露わになっていたようだ。
包帯を巻いたら怪我をしたと、あからさまになるためスカーフで誤魔化していたのだが。
バーグ副隊長に不機嫌顔で睨まれた。
騎士が不条理に力任せに暴力したとバレたら士気に関わるとでも思っているんだろうか。
誰かにチクるつもりはないし、これ以上関わって欲しくないとマイラはどう誤魔化すか悩み、言い澱みながら襟元を整えながらスカーフを戻した。
口にするのも気まずくマイラは口籠るとバーグ副隊長にジロリと睨まれた。
「話を聞こうか」
「はぁ……」
なんでこうなった?とマイラは肩を落とし溜め息をついた。
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