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2ー9。

よろしくお願いします。

医務室に行きソル・クバーノ砦医務室長へストリーム団長からの話しを伝えた。


伝えたのだが、クバーノ室長は魔物除けに興味津々だ。周りの医師達もやっと話しが聞けるとばかりに、砂糖に群がる蟻の如くマイラは囲まれた。


クバーノ室長はマイラに魔物除けの作り方を聞き出すことに専念している。が、マイラは終始言葉を濁した。



「是非この作り方を教えて欲しいのだが」

「すみません。この魔物除けは同僚と開発しました。同僚から利権があるから他言しないようにと言われてます。まだ開発の余地があり改良している最中です」



なので作ったら魔物除けは提供します。と伝えればクバーノ室長は渋い表情を浮かべていた。

周りの医師達も残念という表情と苛立ちを含む様相にマイラは気持ちが沈んだ。


手柄や利権が絡めば人の目は眩む。

嫉妬、羨望、妬みが含んだ視線に敏感になった今、居心地の悪さに顔を曇らせた。





マイラは指示通りに薬草の確認をお願いした。

在庫を書類で確認し、保存状況を目視で確かめた。


クバーノ室長の視線は厳しく鋭い。

また出し惜しみか出世目当てかと穿った視線で観られるのか、とクバーノ室長に対しマイラは失望した。

ジリジリ痛む首筋にマイラは手をあてた。

掴まれた襟ぐりはジンジンと熱を持ち痛みがある。きっと締め上げられた痕が残っているだろうと思い、マイラはハンカチをスカーフのように首に巻き隠した。


痛みを意識しながら負の感情に苛まれることに苛立ちを覚えたマイラだった。







薬草の在庫を確認し、治療の様子や処方箋を確認したり上司命令を遂行した。


その間、クバーノ室長の視線が絡みつくようでマイラは気持ちが悪かった。





夕食の時間になり仕事を終えたマイラは重い足取りで食堂に向かった。


端に座り食事をするが尊敬、畏怖、奇異、嫌悪、厭忌、様々な感情を向けられマイラは食事どころではなくなった。

どこへ行っても視線に晒され気が休まらないマイラは早々に席を立った。



足早に戻るも騎士に捕まり感謝を言われ、背中に侮蔑の言葉を投げられ逃げるように部屋に戻ると寝台に突っ伏した。




「私が何をした!!!」



枕に顔を埋め布団を被ったマイラはくぐもる声で叫んだ。

枕と布団を通し外には漏れずともマイラの感情を吐露させるには充分だった。

感情に引きずられ目頭が熱くなった。



マイラは元々サバサバした性格でポジティブだ。逆境でも常に打開策を考え前に進む。

そのマイラにしてもこの状況は耐え切れなかった。



散々我慢した。

ひたすら押し殺した感情。

自分のしでかしたこともよく分かっている。


最初から出していれば被害が無かったのだ。死人も出ず、騎士達は仲間を喪うことにならなかったのだ。恨み辛みも出るだろう。

魔物を退かせたことにより騎士の面子を潰したのも確かだ。武功目当てと取る者もいる。

無事に終わったことに感謝する者もいる。


理解出来たからといって、憎悪、妬み、嫉み、恨み、感謝や尊敬等様々な他人の感情を全て躱せるほど大人ではない。

それだけではなく、他人からの負の感情の重さは受け切れる物じゃない。


人から受ける憎悪の瞳の怖さを初めて身に受け血の気が下がる。

人の感情が怖くて恐ろしい。


魔物とは違う恐怖。


お化けより生きている人間の方が怖い、とよく言ったもんだ、と味わいたくない感想が浮かび眉を寄せた。




ザザは言っていた。


“ 申請するまでは人に話すな ”


今になって分かる。

利権に目が眩む者がいる。

効果があるぶん影響がある。

それを身を以て知った今。

それがどれだけ怖いか。



零れた秘密は何処へ辿り着くのか……。



ひとつの水滴が波紋を呼ぶ。



蝶が羽ばたくと地球の反対で嵐が起きる、だったか。

バタフライエフェクト、だっけか?

はぁ。日本は平和だったなぁ、と呟く言葉は宙に消えた。





涙で滲む天井をぼんやり見つめ、脳裏を過ぎる記憶の中に思考を沈めた。









マイラは転生者。やっと出せた。

幼い子が前世の医療知識を使って人を助け、おっさんが弟子として拾う。が元のネタだったのに。今では、さっぱり原型をとどめてないプロットになりました。


お読みくださりありがとうございました。



2017.07.26誤字修正

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