2一5。
よろしくお願いします。
騒動が収まる前にタレア砦からの援軍が到着した。
魔物が鎮圧されていたことと、魔物が退いたことに援軍の皆が驚いていたようだ。
魔物の死体が山積みの所で野営するわけにもいかず日が暮れているが我々は砦に移動するらしい。怪我人もいるため砦に早く向かうようだ。
援軍に後始末を頼み、遠征部隊は砦に向かった。
到着早々ゆっくり出来るハズもなく怪我人を病室に運び治療にあたる。
現場で魔物の毒の解毒処置はした。
ここでは傷口の手当てをやり直したり、現場で適当に処置した骨折の添木をなおしたり、傷口を消毒しなおしたり。やる事は山ほどで疲れてはいるが休んではいられない。
いや、それより今は休みたくない。
休んでしまえば周りの目を意識してしまう。
今のマイラは周りの目を気にしないようにするのが一番苦痛だった。
砦に到着したのは深夜近く。
到着してから日を跨いで治療にあたった。馬車に揺られ、魔物襲来に特攻し、治療に奔走。
今マイラの体力は限界突破中だ。
レベルアップしても状況は変わらん、と愚痴りたいところだ。
薬師が徹夜など、ほぼない。
遠征慣れしていればいいが、騎士団内の医務室でのほほんとした勤務体制で完徹などあり得ずマイラの体力は限界だった。
ふらふらしているとバーグ副隊長と行き合った。
「よう!お疲れ!ヘロヘロだな」
「お…疲れ、様です……バーグ副隊長は元気ですね……」
「徹夜の二、三余裕だ。ヘコタレてたら仕事にならんだろ?」
「寝不足は…仕事効率の敵、です……」
「コッチは寝てたら殺られるからな」
「…………」
返答するのがやっとなマイラは、動き回り完徹しても変わらない騎士の凄さに改めて感服した。
「部屋は分かるのか?」
「これから、聞きに、行き、ます……」
「………待ってろ。聞いてきてやる」
「あ、いや、悪いので…」
自分で聞く。と言う前にバーグ副隊長は、待ってろ。と再び言うと立ち去った。
ぼんやり後姿を見送ってしまったマイラはその場から動けずバーグ副隊長を待つ事になった。
ふらつく頭で壁に寄りかかり霞む視界が陰るのが分かり視線を影に合わすと知らない騎士二人が立っていた。
「なあ、あんたが魔物退かせたんだろ?」
「おかげで助かった!ありがとうな!」
背の高い騎士二人を見上げるのも面倒なくらい疲労困憊なマイラは愛想笑いしか出来る体力がなく。
「……いや、たまたま?」
「あの煙どうしたんだ?」
「あんたが作ったのか?」
歯切れの悪い返答は疲労で回らない頭のせいと言うことで誤魔化した。
あれだけの魔物の大群を退かせた煙幕。
馬で駆け抜けたため顔はあまり見られてはいないはずだが人の口に戸は立てられない。治療中に向けられたマイラへの視線を思い出し疲労が増す思いだった。
質問攻めされてもいい躱しが浮かばずマイラは困惑していた。
「おい!何してる!?」
低い威嚇を乗せた声に二人が振り向くとバーグ副隊長が鋭い視線を向けていた。
「あ、えっと。魔物を退かせた感謝をしてました」
「魔物が退いて命拾いしたわけですから」
「見て分かんねぇ?疲れてるヤツに詰め寄るな!持ち場に戻れ!」
二人は焦りながらバーグ副隊長に姿勢を正して答えている。
語気を強めたバーグ副隊長にビクリとした二人は慌てて立ち去った行った。
壁に寄りかかりなんとか体制を維持していたマイラをバーグ副隊長は苦笑いしながら眺めた。
「体力無ぇなぁ」
「薬師に、騎士並みの体力は……無くて当たり前、…です」
それもそうか。とバーグ副隊長は苦笑しながらマイラの手を取り肩に掛けた。
突然手を担がれ取り乱すマイラを他所にバーグ副隊長は、部屋こっちだ。とマイラを引っ張りながら向かった。
「バ、バーグ副隊長!?」
「あ?ふらふらで真っ直ぐ歩けないヤツが煩えよ。壁にぶつかるよりましだろ?」
霞んでいた視界が吹き飛ばされたような気分なのに、別の意味で頭がふらふらになりそうなマイラは困惑が止まらなかった。
疲労でガクガクな身体は確かに足取りが重く、半分担がれているのは助かるが、色々まずい。
冷や汗をかいているマイラにバーグ副隊長は構わず空いた手を腰に回しマイラを支えながら部屋に向かう。
「もう少し食って筋肉付けろ。部屋に篭って薬相手じゃモテないぜ!」
「お、大きなお世話…です……」
ほっといてくれ。と愚痴れば、くつくつと笑われマイラは憮然とした。
ゆっくりと歩調を合わせてくれるバーグ副隊長に肩を借りマイラは白く霞む視界と思考に沈みかけていった。
疲労と睡魔に支配されかけたマイラはバーグ副隊長が道中何か話していたが、ぼんやりと聞き流していた。
「おい。着いたぞ?」
「ん………」
「起きているか?」
「……ん………」
「落ちたか……。ったく。少し鍛えろ……」
ーーその後の言葉は闇の中に消えた。
マイラは白い記憶の中で微かにバーグ副隊長の声を聞いたような気がした。
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