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番外編。《フィールズ》

*蛾や鱗粉が出てきます。湿疹や患部の表現もあります。読むと痒くなりそうな方はご注意ください。

*BL風?です。

*14話のサフィールズ視点と過去の独白です。本編とあまり絡まないので飛ばしても大丈夫です。



よろしくお願いします。


魔蟲蛾が大発生し王都に近づく前に討伐命令が下った。



魔蟲蛾の討伐は作業としては楽だろう。


属性魔力持ちが先陣を切って進み、周りが残党を片付けるのが定番だ。


だが、その時の魔蟲蛾は異常発生のせいで対応しきれず陣が崩れた。


その結果討伐はしたが、魔蟲蛾の毒鱗粉の被害者がそれなりに出たのは致し方無い状況だった。



自分の未熟から毒鱗粉を受けて腫れた両腕。

隙間無く湿疹が腕を覆い尽くし赤黒い水疱が膨れグチャグチャの皮膚を視て自分でも目を背ける酷さだった。



痒みに掻けば水疱が破れさらに拡がり痒さを増す。


騎士として痛みを堪え訓練に臨み、苦しさを耐え鍛錬してきたが、この痒みを辛抱するのに奥歯を噛み締める方が辛かったと騎士の矜持から口にすることはできなかった。



鱗粉の被害者は即騎士団に戻り薬師の処方を受けた。


その際、両腕の惨状に目を背ける物が大半な中、薬湯で丁寧に洗い流し丹念に薬を塗ってくれた薬師。


それが薬師の仕事だから当然なのだが。






自分の屋敷に戻り薬師に処方された薬を塗っている時、自分の婚約者が来訪した。


薬を塗っているから、と待たせたのに、婚約者は自分がやりたいと申し出てきた。


看病してくれる嬉しさに、つい了諾してしまった。




患部を見た婚約者の表情は忘れられない。

ひっ、と息を呑み顔を引き攣らせ後退りと謝罪をしながら退室した。



後日、謝罪され、騎士団の仕事内容を彼女に聞かれた。




騎士に嫁ぐ予定でありながら、理解していなかった彼女。


結婚相手が騎士である以上、討伐中に四肢欠損になる可能性を彼女は失念していたのか。

いや、騎士の仕事を間近に見る機会がなければ実感が湧かないのだろう。

死ぬ危険性くらいは覚悟していたようだが。

だが見てしまった現実の見目の変化は彼女には衝撃だったようだ。




後に、見目が被害を受ける懸念を理由に婚約破棄された。


醜く変貌したその両腕に抱かれるのは無理だ、と。


治療すれば治る怪我だ。

だが、いつか治療不可能になる怪我を負うかもしれない。


それを理由に破棄するくらいなら最初から婚約などするな!と怒りが込み上げた。




余りにも理不尽であり一方的な見解に此方も婚約を続ける気を失せさせられた。





失意の中、薬師に通い治療を受けた。


薬師が治療するのは当たり前。

顔色変えず作業するのも当たり前。


だが今の自分に、その当たり前が心に沁みてしまった。



当たり前だが、優しく患部を洗い流す。

毎回優しく手当され、気遣われることに婚約破棄の痛手も癒されていた。



「いつもお疲れ様です」

「無理しないように」

「大変なお仕事ですから身体を大丈夫に」


会う度、治療中に仕事への賛辞をくれる彼の人となりは好感が持てる。

長い前髪の隙間から柔らかく瞳を向けられ心が和らいだ。




完治に向かい、髪に隠れがちな表情が、良かったですね、と微笑した顔は印象に残っている。

男のくせに細面で柔和にほころんだ笑みに視線が止まった。



自分がその微笑が浮かんで脳裏から離れない日々に悩むとは思いもよらなかった。



身体はともかく、心の安定にあの微笑が影響してしまっているのを納得せざるを得ない、そんな時。



ーー噂を耳にした。



それ系に狙われている。

女性の告白を全て拒否している。



そして、



バーグ副隊長との噂話しを。







男色、とまではいかなくても危険な仕事の中、背中を預ける友に信頼と親愛と懸想の狭間に悩む者がいる。


身体の欲望と心の安寧は違う。

その安寧が依存となり恋情となってしまうのか分からないが。




自分にそんな嗜好があるとは思わなかったし、ましてや自分もそれが我が身に降りかかるとは、と溜め息が溢れた。






怪我をしなければ会うことは無い。

頻繁に怪我などすれば未熟者とされ降格もありえる実力世界。

迷いを払拭するように考えるのを辞めた。


だが、気持ちを諦め、会うことも諦めようとした時、偶然が訪れた。



医師代理として救護室に控えることになった薬師。


医術の心得もある薬師は方々に派遣されていた。


そして我が隊にも白の薬師は派遣された。


道すがらに偶然会い話す機会を得たが、当然無難な会話になる。




鍛錬しても逡巡する思考は空回りしていく。

焦る気持ちが先走り見かけた薬師殿の腕を掴んでしまった。




驚き声も出ないで見上げる薬師殿。


慌てた自分の茹で上がった頭は思考が停止していたため、思っていたことがそのまま口をついていた。



「君は、バーグ副隊長と付き合っているのかい……?」

「は、へっ?フィールズさん?!!」


「教えて欲しい」

「えっ!??はっ?!」


「君のことが…………」

「ま、待て、ちょっと放せ!!」



詰め寄り身を寄せれば薬の匂いが鼻を掠めた。


自分の心を支えていた香りに気持ちも顔も緩むのが分かった。

困惑している薬師殿が身を強張らせたのが分かったが、止まらなかった。




硬く目を瞑る薬師殿の顔に近づくその瞬間。



バキッ!と音と共に激痛が頭部を襲った。


バーグ副隊長がいつの間か背後に居り自分の頭を殴ったのを理解するまで時間がかかった。



「何をしてる!鍛錬場に戻れ!!」



バーグ副隊長の激怒振りに反論することもできずそのまま鍛錬場に戻った。


気不味く背後を振り向くことも出来なかった。




急激に迫ったことには性急すぎたし反省すべきだと項垂れた。








そして、その後のバーグ副隊長からの鍛錬は筆舌に尽くし難いこととなった。












番外は本編の別視点。番外編は本編以外の話か主人公以外の話しになります。


次から二章になります。

まだ恋愛に辿り着かなくてまどろっこしいですが。

お付き合い頂けたら幸いです。



お読みくださりありがとうございます。


2017.0709誤字修正

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