番外1ー13裏視点。《カレット副隊長》
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鍛錬場の控え室に薬師がいた。
前に酒場で会ったヤツだ。
前回騎馬の鍛錬にも医師代理で来ていた。
騎士達に揶揄われればキャンキャン煩いだけの若造。
宮廷医術師を師匠に持つ七光りのボンボンに騎士の医療を担当させることに苛立ちを覚えた。
水場に行くとヤツと偶然に行き合った。
手拭いを濡らすヤツに鋭い視線で見つめていれば流石に気がついたのかこちらを向いた。
私に視線を向けられヤツは伺うような表情を浮かべている。
呑気で無防備な顔にイラついたのは確かだった。
「あの、なにかご用ですか?」
「…………いや」
「怪我でもしましたか?」
「そう見えるか?」
いいえ、と首を振り訝しむコイツに苛つきが増した。
アイツと同じ赤い酒が好きなコイツに苛ついた。
ーーあんな酒。
酒を飲み緩んだ顔をしたアイツと同じ酒を飲むコイツ。
「あの、自分はカレット副隊長に何かしましたでしょうか?」
「…………」
「訳もなく睨まれる訳を教えてもらえますか」
「別に、ない」
「無いなら何故カレット副隊長に睨まれるのでしょうか」
「……気にするな」
「そう言われましても医師代理として騎士の皆さんの精神状態管理も仕事のうちです。八つ当たりくらいならお聞きしますよ?」
「…………!」
飄々と口走るヤツに荒ぶる感情に抑えが利かなくなっていた。
八つ当たりでは無い!
私の何が分かる!
ヤツの手を掴み上げ壁に押し付けた。
「お前に何が分かる!!軽々しく聞くなどと言うな!!!」
「うぎゃあ!?カ、カ、カレット副隊長???」
「分からないヤツが医師代理を名乗るな!」
「す、す、すみません??!!」
慌てふためき困惑するヤツの首元に手を伸ばした、その時ーー
「アクダクト、何してる」
殺気の篭った低い声に振り向けばバーグ副隊長が割って入った。
「へえ。氷にヒビが入っているなあ?」
「クッ!」
「おい。お前、スターリー隊長が探してたぜ?」
「は、はい。ありがとうございます…」
バーグ副隊長に気を取られ手を離した隙にヤツは立ち去った。
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第一と第三では同じ副隊長職でも第一の方が上になる。
それでもカレット副隊長はバーグ副隊長を睨み言い捨てた。
「意外ですね。バーグ副隊長は夜の蝶より薬草がお好きなようで?」
「あ?」
「もっぱらの噂ですよ?薬草を愛でている、と。両方の趣味をお持ちとは高尚なことですね」
氷の表情を更に冷たく凍らせ鋭く睨むカレット副隊長はバーグ副隊長を射抜いた。
だがバーグ副隊長は肩を落とし、ヘラリと笑った。
「で?言って満足したか?」
「!!」
「誰にそれを言いたい?俺じゃないだろ。目が死んでるぞ」
「……!!!」
コイツは……知っているのか!?
ああ、そうか。
確か父親が昔近衛第一に居た。
だから知っているのか!!
一瞥すればバーグ副隊長は呆れた顔をしている。
「八つ当たりもいい加減にしろよ」
私の胸中などお構い無しに言うヤツのことなど聞くつもりは無い!
だがバーグ副隊長は溜め息をつき目を向け鋭く私を見返した。
「小ちゃいヤツに当たるなんざ騎士の名を汚すぜ。同じに落ちるな」
「!!!?」
氷の微笑、氷の美貌と揶揄されることになんの価値がある。
見てくれの外見だけに寄ってくる浅慮な者共に殺意すら芽生える。
外見だけでしかモノを見れないアイツと同じだ!
幼い頃の私は女児に間違われるほどの様相だった。
その容貌を狙われ、ある貴族に攫われた。
その時、私の尊厳は踏み躙られかけた。
後少しのところで窮地を救われたとはいえ、深層に刻まれた嫌悪と侮蔑は消えることは無い。
その時の救出部隊はこのグランド・バーグ第一隊副長の父グロッグ・バーグが救出にあたった。
あの事件があった日。
私の誕生日だった。
祝われるたび思い出される悪夢。
またその日が近づき私の機嫌直しにスターリー隊長に酒に誘われた。
その酒の席で偶然同席したヤツ。
アイツも飲んでいた赤い酒。
同じ赤い酒を飲むアイツとソイツが並んで重なりだぶる。
アイツに負けないため、自分の身を守るため騎士になった。
今更アイツに振り回される自分に反吐が出そうだった。
「私に関わるな!」
まだ、私は弱いらしい。
悪夢を振り払うためにも鍛錬を重ねなければ。
氷のように硬い意志と冷静な心を。
バーグ副隊長の視線を振り切り私は鍛錬場に向かった。
バーグ副隊長はカレット副隊長の誕生日を知っているので様子を見てました。最近様子が変なのもスターリー隊長から聞いていたので。
だから、マイラのストーカーではないです。
父親からカレット副隊長のことを聞いて知っている故の見回りでした。
マイラは間一髪でよかったね。
お読みくださりありがとうございました。




