1一14。
ちょっとBL風?な描写があります。
苦手な方は後書きにあらすじを置いておきますので飛ばしてください。
蛾や鱗粉など虫の描写もあります。苦手な方はご注意ください。
それではよろしくお願いします。
自分は薬師だ。
薬を作る。
それが自分の仕事だ。
なのに最近出張ばかり。
医務室が自分の仕事場なのに。
鍛錬場の救護室に薬材運んで作業するぞ!と悪態をつきたくなるほど借り出されてばかりだ。
おかげで製薬は残業で仕上げるため、疲労が激しい。
ザザは相変わらず厳しいし。
たまに手伝ってくれるけど、後が怖い。
医務室から鍛錬場に治療鞄を抱え向かう。
薬師のマイラだが幼い頃より師匠から医療知識を叩き込まれた。それ故に新米医師より熟練した知識と技能を習得しているのだ。
それが本人の意思に関係なく借り出されているわけであるが。
ガサリと揺れた医療鞄。
師匠に付き技術を身につけていた頃から使用していた。黒くて四角いベルト固定のその鞄は師匠から貰った思い出の鞄。
その重い治療鞄を抱えていると声をかけられた。
「おはようございます。マイラさん」
「………おはようございます」
マイラは振り向き見上げて相手の顔を見つめ声をかけ来た人物を観察した。
日に焼けて優しそうな目元に笑みを浮かべる人当たりの良さそうな彼は、深緑色の守護隊の隊服を着込み襟の刺繍からして第一隊なのは分かった。
………誰だったかな?
短髪の茶髪なんて沢山いる。
瞳も碧眼が一般的で代わり映えしないから記憶に残らない。マイラは気付かれないようにお愛想笑いをしながら記憶を探った。
だが彼はクスリと笑い首を傾けた。
「一年前に森の害虫駆除で腕全体に湿疹出たのを治療していただきました」
彼はそう言うと隊服の袖を捲り腕を晒した。
彼の胸元に出された腕には、腕と肘に傷跡があった。
彼は魔蟲蛾の毒鱗粉で腕が湿疹だらけになり飲み薬と軟膏を処方した。
痒みが酷く治療したその場でマイラが軟膏を塗ったのだ。その時腕の傷跡を見たのをマイラは思い出した。
「第一隊のフィールズさんですね。害虫駆除は大変でしたね」
「ええ。辺り一面毒蛾で覆われるとは思いませんでした」
毒蛾に襲われる様相を想像してマイラは身震いをした。虫は苦手だ。ましてや魔蟲だ。大きさがハンパじゃない。座布団より大きな蛾など見たくない。
必要に迫られれば仕方なく触るが、出来るだけ触りたくはない。
筋肉と傷跡を見て誰かを判別するマイラを筋肉フェチと言わずなんと言う、と言うツッコミはスルーだ。
決して筋肉で思い出したわけではないと、自己弁護するマイラだった。
今日もマイラは鍛錬場の救護室に借り出されている。
目的場所が同じなためフィールズと鍛錬場に向かった。
フィールズとは薬の処方や討伐の話しなどたわい無い話しをしながら向かった。
その間、彼の熱っぽい瞳がやけに目に付いたマイラだったがあえてスルーした。
マスコット扱いされていることにマイラも気が付いている。口には出さなが。
猫が居なくなって、さらに度が増した感がある。
どうせ弟感覚でイジラレているのだろうとスルーしていた。
前回の守護騎士団の遠征も魔物が多くて大変だったらしい。
医師の確保も力を入れないと大変らしいのを聞いた。
医師不足を理由に借り出されているのを知ってる以上、拒否することもできず、マイラは今日も鍛錬場で脳筋に囲まれている。
「リッキーさん、骨盤が平行じゃないです。重心がズレてます。脚を鍛えて左右均等にした方がいいですよ。
イェーガーさん左肩下がってます。筋肉に偏りが出て上体ブレてます」
目についた筋肉にケチをつけていれば、周りの脳筋に頭を撫でられ髪がぐしゃぐしゃになる。
不躾に頭を撫でられマイラが不機嫌になるとダスク隊長がお菓子で機嫌取りしてくるのは困るが。
「ダスク隊長、子供扱い辞めてもらえませんか?」
「まあ、いいじゃないか。君はお菓子でご機嫌。私はそれを見てご機嫌。いいこと尽くめだ」
愛妻家の子煩悩のダスク隊長がにっこり笑っている。否は通じない表情にマイラは諦めてボリボリとクッキーを食べるしかない。
いつも温室に入り浸るバーグ副隊長は遠巻きにコッチを眺めていた。
バーグ副隊長にニヤリと笑われ、この様子を楽しげに見られムカムカと腹が立った。
くそー!好きで子供扱いされてるわけじゃないやい!
……お菓子は美味しいから食べるけど。
クッキーを食べ口の中が乾き水場に向かった。
ついでに厠に寄ろうと人目を避け向かった。
だが、それがいけなかったのか……。
厠を済ませ、こっそり戻ろうとした時、腕を捕まれ引っ張られた。
驚きすぎて声も出ないで見上げれば、焦って汗を浮かべ熱を孕んだ瞳をした男……フィールズの顔が頭上にあった。
身動ぎ抗うも敵うはずも無く両手を捕まれ動けないところにフィールズの顔が近づいて来た。
「君は、バーグ副隊長と付き合っているのかい……?」
「は、へっ?フィールズさん?!!」
「教えて欲しい」
「えっ!??はっ?!」
「君のことが…………」
「ま、待て、ちょっと放せ!!」
背を仰け反り顔を背けるもガタイのいい男に覆いかぶされては逃げ切れない。
うっそりとした顔で口を近づけるフィールズにマイラは抗う術はなく。
ギュッと口を噤み身体を強張らせた。
硬く目を瞑っているとバキッ!と音が聞こえた。
恐る恐る目を開けて見ると頭を下げて俯くフィールズと拳を上げたバーグ副隊長が視界に入った。
「何をしてる!鍛錬場に戻れ!!」
バーグ副隊長の檄で鍛錬場に戻るフィールズの背後を眺めマイラは安堵から膝から崩れ座り込んだ。
「お前馬鹿か?人目を避けるんじゃ無く、人がいるところじゃなきゃ、こうなるんだよ」
バーグ副隊長に言われ自分の迂闊さに項垂れた。
バーグ副隊長は呆れながら手を出し自分を引っ張り立ち上がらせてくれた。
恐怖で溢れた涙を手で擦り付けていると、バーグ副隊長から暗がりに一人になるなよ、とお小言を貰った。
いつも温室で図々しいバーグ副隊長が思わず頼もしく見え、ありがとう、と言ったが小声になってしまった。
仕事にならないだろう、と医務室に戻してくれたバーグ副隊長。
襲った相手がいる鍛錬場に行きたくないのは確かだ。その気遣いに素直に感謝した。
図々しいけどいい人なんだと、ちょっと見直したのは内緒だ。
昔治療した騎士に口説かれかけたマイラをバーグ副隊長が救出。
窮地を救ったサボリ魔バーグ副隊長を少し見直したマイラなお話しです。
この話のバーグ副隊長視点は一章本編終了後に。
男同士のからみは難しいです。それっぽくなっているといいのですが。
ご読了ありがとうございました。




