1一13。
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「お前に何が分かる!!」
ーーそうマイラはただ手拭いを洗いに水場に行っただけだった。
それがどうして怒鳴られるのか分からなかった。
ーー
今日は鍛錬場での訓練。
第三隊の医師代理にまた借り出された。
そして今。
手拭いを洗いに水場に居るとカレット副隊長がこちらに来るなりなぜか睨まれた。
理由はさっぱり分からない。
何か勘に触ることをしていたのか?とマイラは思ったが、思い当たることが無かった。
先日酒の席で同席したくらいだ。
元々接点の無い相手に睨まれマイラは戸惑うしかなかった。
剣呑な表情をしたカレット副隊長に内心怯えながらでも悟られないように顔を繕った。
「あのカレット副隊長、なにかご用ですか?」
「…………いや」
「怪我でもしましたか?」
「そう見えるか?」
いいえ、とマイラは首を振ったがカレット副隊長の機嫌は悪くなるばかりだった。
「あの、自分はカレット副隊長に何かしましたでしょうか?」
「…………」
「訳もなく睨まれる訳を教えてもらえますか」
「別に、ない」
「無いなら何故カレット副隊長に睨まれるのでしょうか」
「……気にするな」
「そう言われましても医師代理とはいえ騎士の皆さんの状態管理も仕事のうちです。八つ当たりくらいならお聞きしますよ?」
「…………!」
すると突然カレット副隊長に手を掴み上げられ壁に押し付けられた。
「お前に何が分かる!!軽々しく聞くなどと言うな!!!」
「うぎゃあ!?カ、カ、カレット副隊長???」
「分からないヤツが医師代理を名乗るな!」
「す、す、すみません??!!」
いつもは動かない美貌の表情筋を歪ませて怒るカレット副隊長の激昂ぶりに驚いた。
そして自分より力のある男性に覆いかぶされるように詰め寄られ怖くないわけが無い。
上から見下げるように睨み捕まれた手首がギリリと痛みが走る。恐怖で足が竦みあまりのことに動揺するがなにも対処出来ない。
この状況に慌てふためきマイラは困惑した。
しかもカレット副隊長の反対の手がマイラの胸倉を掴もうとした、その時ーー
「アクダクト、何してる」
聞き慣れた声に視線を向ければカレット副隊長の肩越しにバーグ副隊長が見えた。
「へえ。氷にヒビが入っているなあ?」
「クッ!」
「おい。お前、スターリー隊長が探してたぜ?」
「は、はい。ありがとうございます…」
バーグ副隊長はマイラに視線を向けマイラに立ち去るように促した。
マイラもその意図を感じ即座にその場を立ち去った。
剣呑な雰囲気の二人を残すのはいささか不安だったが自分では何も出来ないのは分かっている。
マイラは後ろ髪引かれる思いを振り、走った。
ーー
マイラはすかさずスターリー隊長のところへ行きカレット副隊長の機嫌が悪いわけを聞いた。
「アクトにとって、過去に嫌なことがあった日なんだ。それで感情的になっているんだ。すまんな。気を紛らわすために飲みに誘ったが失敗だったし…。君には悪かったな」
スターリー隊長はすまなそうに眉を寄せた。
悪いのはカレット副隊長でスターリー隊長に謝られるのは筋違いだ。マイラは慌てて取り繕いスターリー隊長に平気だと伝えた。
カレット副隊長の不機嫌には一応理由があるのだろう。
医師代理として自分に八つ当たりされても良いと言った手前、マイラは腹を立てる訳にもいかずジレンマに陥った。
納得出来なかったがマイラはカレット副隊長のことは飲み込むことにした。
ーーそれが仕事だから、と。
カレットの完全な八つ当たり。
マイラは悪くない。
綺麗な顔には裏がある。
と、言うことで、美形なカレット副隊長の謎な行動。
本人視点は後ほど。
ご読了ありがとうございました。




