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1一12。

お読みくださりありがとうございます。

ブクマ感謝です。

励みになります。



では、ゆるい話し展開ですがよろしくお願いします。


「最近引っ張りだこだな?人員不足は解消しそうかい?」



ポヨンと腹を揺らし同僚シェカ・ラートが近寄って来た。同じく同僚のティフィン・ドローレスも付いて来たらしく背後から覗いている。

宮廷内担当の二人が此方に来るのは何時もの事。



「……挽き終わりました。忙しいんですから本部の下っ端か見習いにでも頼んでください。コッチも仕事詰まってるんです」

「あー。本部は守護騎士の遠征向けて製薬してるから無理なんだわ。室長に睨まれるからな」



若い人材に体力を使う挽き仕事を押し付ける二人にザザは苦虫を噛み潰したような顔を向けた。

マイラに代わりザザが受け答えたが、マイラは眉を寄せ苦笑いしかできない。

借り出されている間に二人にも手伝って貰っているのだ。邪険にも無碍にも出来ないのにザザの機嫌は悪い。



「はっはっはっ。頑張れ若人。残業はおっさんには辛くてなぁ」

「酒場通いしてる人のセリフですか?あそこの酒場の店員は美人揃いですからねぇ?」



ザザの見据える瞳は何処まで見透かしているのか背筋がヒヤリとしそうだ。

ラートもギクリとした表情を浮かべ視線を泳がせふっくらとした頬を汗が伝っている。



「ま、まあ、手伝いの対価だと言うことで!」



そそくさと退散するラートのあとを追ってドローレスが挽いた薬草の袋を持ち部屋を出て行った。





「手伝って貰った手前、断れなかったんだ。ごめんザザ」

「マイラのせいじゃないよ。借り出した医師団に挽くの手伝わせたいくらいだ」



憮然と不満を洩らすザザを仕方ない、と呆れ顔で見たらザザに一瞥された。



「マイラも借り出されるの拒否したら?研究進まないよ?残業が溜まる一方だし」



ザザにひと睨みされ肩を竦めたマイラ。

それもそうだが、上からの指示を拒否することは出来ない。

困り顔でザザを見れば、ザザも困惑を浮かべた。上司命令な以上拒否出来ないのは分かっている。が、つい、口に出てしまう。

二人で溜め息を零すと調薬の作業に入った。






マイラの残業も悪いことばかりではない。



「残業お疲れ様です。兄様、マイラさん差し入れお持ちいたしましたわ」



可愛らしい美声が耳に入り、ドアを見ればローザが籠を抱えて朗らかに笑っている。

ザザを見れば嬉しそうに顔を緩めたあと、キュッと眉間に力を入れて険しい表情を作っている。



「ローザ、ダメだろ!夜道は危険だと言ったじゃないか!」



心配性のザザが毎度のごと叱るが、毎度のお小言に肩を竦めて視線を逸らすローザ。



(ローザちゃんもザザに叱られても差し入れするんだから、溺愛兄妹だなぁ)




ザザと話すローザの背後に人影を見咎めれば侍女のエルが荷物を抱えて控えていた。

ローザに振り回され会う機会の少ないエルは相変わらず眉を下げて困り顔を浮かべていた。



「エルさんこんばんは。中へどうぞ」



ドア先で話し込むザザとローザを置いてマイラはエルに話しかけた。

エルは失礼いたします、と身を縮ませている。



「エルさんは相変わらずローザちゃんに振り回されてるのかな?」

「い、いえ!ローザお嬢様はザザ様やマイラ様に差し入れをお持ちしたいだけです。心優しい主ローザお嬢様の希望に沿うのが侍女の仕事ですから」

「エルさんは優しいね」



マイラに微笑みながら褒められ、恥ずかしそうに目を瞬かせ頬を染めるエル。

エルはローザより五つ年上だが、ホンワカよりぽんやりとした天然さんが滲み出ている雰囲気だ。

白いブラウスに紺のハイウエストのロングスカートに白いフリルのついたエプロン。

焦茶色の髪で、緩く前髪を流して後ろで団子に纏めた髪型はぽんやりした顔付きを少しだけ締めてくれる。だが、やはり少しだけだが。



「今日は誰と来たの?」

「アドニス様を迎えに行く馬車に便乗したのです。早く執務室へ戻りませんとアドニス様に叱られてしまいます」



しょんぼりと項垂れるエルにマイラは同情するとローザに声をかけた。



「ローザちゃん、アドニス様が待っているんだろ?早く執務室に戻らないとお父様にも叱られてしまうよ?」

「マイラさん……せっかく差し入れお持ちしましたのにゆっくりお話しも出来ないなんて」



ザザに話していたローザがマイラに振り向き残念だと眉をひそめた。

ザザも困り顔の浮かべてマイラを見つめた。



「ローザちゃん。夜道は危険だからね。いくら護衛がついていても襲われたらどうするの?ローザちゃんに何かあれば皆んなが悲しむんだからね?」



ローザは俯きながら小声ではい、と言い俯いた顔を少し上げて上目遣いでマイラを見上げると籠を差し出した。



うわー。この顔は反則だね。

お兄ちゃんメロメロなのも良く分かるわ。

幼気な少女が庇護欲全開で見上げたくるのだからザザに妹とはいえ甘くなるのも仕方ないか、とマイラは胸中に収めた。



「ローザちゃんいつも美味しい差し出しありがとうね」

「! はい!」



パァと芽吹くように微笑みながら返事をするローザを見つめた視界に隅で黒い何かが揺らめいたのを気が付かない振りをしたマイラだった。






機嫌を直したローザは差し入れを渡すとアドニスのいる執務室へ向かった。



アドニスは跡取りとして農林大臣の補佐に着いている。

クエーカーズ家が侯爵として治める地域は山林の豊かな地域だ。国の水源地の一つが領土内にあるため相応の役職についている。

ザザは自分では役に立たないから、と早々に家を離れたが、領土内の薬草を使い地域貢献をしているのをマイラは知っている。


ローザを見送ったザザの背中をマイラは目を細めて見つめていた。







ご読了ありがとうございました。



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