1一11。
ブクマありがとうございます。
とても嬉しいです。
今日も借り出されたマイラ。
上位騎士は怪我が少ない。
そのため本職の医師ではない医師代理として派遣されているマイラは怪我の率の低い隊に借り出されている。
第五隊の鍛錬をぼんやりしながら眺めた。
この部隊はちょっと特殊?
騎士の動きを見ていると前に教えて貰った型の動きと違う気がした。
まあ、第五隊長自体がそうだからなのだろう、とマイラはひとりゴチた。
第五隊長サローノ・ヘレスはヒョロリとした長身だ。柔軟性に富んだ剣さばきで剣筋の読み難い剣術を使う。正統派な騎士には躱し難い軌道で、連続して攻撃を受けると動きを乱されあっという間に倒される。
指導を終えたヘレス隊長は汗もかかず涼しい顔をしていた。
前髪を後ろに全部流しセミロングの髪をひとつに結わき、つり眉つり目でデコ全開の狐顔。三十前後の年で物腰が優雅で猫みたいな感じがする雰囲気。だが醸し出す気配は狡猾な狐のようで苦手な人物だとマイラは思った。
それに付き随うアデル・カーンズ副隊長は、実直優等生の見本みたいな人だ。右分けの前髪に肩につくくらいの長さに切り揃えられた髪。いわゆるおかっぱ。しっとりヘアのストレートが羨ましい。整った顔には似合う。
独特な動きの隊長の元、部下も感化され剣術も変わったのかなぁ、とマイラは推測した。
そして休憩時間はどこも同じだ。
マイラは呆れて溜め息が出た。
「弱い男はモテないぞ!」
「相変わらず細いなあ?」
「腰振る体力もつけなきゃ愛想尽かされるぜ」
「チビ!クッキーあげるぞー!」
「可愛いチビちゃんにはリボンかなー?」
クッキーの袋を閉じていたリボンを人の頭に乗せて笑っている騎士達をジロリと睨んだ。
餌付けるように騎士にあつかわれマイラの眉間に皺が寄るのも楽しいらしく揶揄うのが止まらない騎士達。
デカイ脳筋を見上げ、チビでも生きてけます!と言い返した。だが騎士達はニヤニヤ笑いながらマイラの頭を撫でている。
「弱いと薬草とりにいけないぞ?」
「ギルドに依頼してます」
すかさず言い返すも、ふーん、と軽く流された。理不尽だ。
それに温室ありますから、と言えば周りは微妙な雰囲気となった。
騎士団隣にある医務室。
薬草畑や温室も騎士団の近場にあるのは防犯からだ。
貴重な薬草を盗みに騎士団に入ったりする馬鹿はそう居ない。特殊な条件下の薬草以外基本、騎士団近所に畑がある。
だが近所だからと言ってバーグ副隊長の温室の浸入は困るのだが。
バーグ副隊長!いいかげん温室の予備の鍵返せ!
ぼんやりとそんなことを頭に浮かんでいたら騎士達の微妙な空気に気が付いてマイラが訝しんでいるとひとりの騎士が爆弾を投下した。
「温室で愛情も採取するのかい?」
「……………………はい?」
気まずそうに顔を見合す騎士達を半眼でジロリと見回せば皆が口火を切って話し始めた。
「グランドが温室行くのはお前に会いに行ってるんだろ?」
「温室で逢い引きしてるんだろ?」
「グランドと付き合ってるんじゃないのか?」
「女からの告白全部断わっているじゃないか!」
「大丈夫だ。そういうのには理解があるぞ」
「どっちから誘ったんだ?」
立て板に水のように立て続けに繰り出された質問に目を白黒して聞いていたマイラも限界だった。
「だーーーーっ!!!みんなウッサイ!!そんな趣味は無いーーー!!バーグ副隊長が勝手に温室で昼寝してるだけ!!宮廷薬師の試験があるのにうつつを抜かしたら師匠に怒られるんだよ!!!」
怒鳴りながら一気に捲し立てるマイラに騎士達も呆気に取られて聞いていた。
息せき切る剣幕のマイラの怒気に騎士達も気まずくなったのか取り繕うようにマイラの頭を撫でていく。
「悪かったよ。噂でな」
「聞いた話で気になったからさ」
「興味本位で口から出た。すまんな」
「悪い。面白そうで揶揄った」
「なんだ、違うのか。つまんねー」
「チッ、賭けがハズレた」
おい。最後の三人。
塗り薬に塩混ぜるからな。覚悟しとけ?
特に、最後。
賭け対象か!?
何処のどいつだ!噂を流したヤツ!!
さらに怒りが噴出しそうな気配に、悪かった!と謝る振りをする脳筋馬鹿三人、今更だ!
マイラは塩塗りの刑を心に決めた。
心のメモがザザの取説注意項目以外に増えたマイラだった。
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