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七ノ一話

 アラームが鳴ると同時に紫苑がお腹にのって起こそうとする。

紫苑が生まれてから二度寝をすることがなくなった。しようものなら容赦なく鼻をかんでくる。

着替えを済ませ紫苑と一緒にリビングへ向かうと両親も支度を済ませてリビングにいた。

 朝食を食べて説明会の時のように車で向かう。校門をくぐればしばらく両親と会うことができないと思うと、自然と口数が増えていく。両親も同じようでたくさん話をした。

 駐車場に車が止まったので荷物をもって降りる。両親は入寮式を見ることはできないので次に会うのは入学式だろう。そのあとは長期休暇まで会えない。


「入学式にまた会えるわ」

「蓮のこと頼んだぞ紫苑」


そういって両親は私を送り出す。


「行ってきます」


紫苑もキューン!と鳴き両親に挨拶をした。

私と紫苑は人が集まっている場所にむかって歩いていく。


「頑張ろうね」


紫苑は短く鳴き隣を歩いてくれた。紫苑がいなければ私は不安で逃げ出していただろう、まだ小さいが頼れる相棒に感謝した。

 人が集まている場所に着く。紫苑が踏まれてしまいそうなのでおいでといって抱きかかえ春華さんはどこだろうとあたりを見渡すと、ドラゴンのようなヨウセイを抱えている人がいたり、小鳥が頭の上を飛んで行ったり、まだ孵化していない人がつまらなそうにしていたりと大混乱でとても人を探せる状況ではなかった。

講堂へ移動してくださいと指示があり、いつ怪我をしてもおかしくない状況から逃げ出すべく速足で行動へ向かう。

 講堂へ行くと説明会の時と同じよう持ってきた荷物を預け番号を渡され席に着く。紫苑をおろすとと足の間に挟まって伏せの姿勢になっている。電車に乗る際に決めたルールだったが、紫苑はここでもそうするべきと判断したらしい。

後ろがうるさくなってきたので振り返るとさっき集まっていた集団がなだれ込んでいるようだ。春華さん大丈夫かなと心配していると左端の最後列に座り同じように後ろを見ていた。

春華さんはこちらに気付き軽くてを振ってくれるたので私は少し頭をさげてから前を向く。集団は受付を終えたらしくみんな席に座っていた。

私の隣はフェレット?を膝にのせている女性となぜかヨウセイがいない青年だった。鳥が飛んでいたり、タヌキや犬が走り回っているがそのまま式が始まる。


「御起立願います」


席を立ち、姿勢を正す。紫苑も起きていたらしく、座れの姿勢になった。国歌が流れている間も他のヨウセイは遊んでいる。紫苑はいい子だなぁ思いながらと近くを飛んでいる鳥を眺める。


「御着席願います」


紫苑もきちんと伏せの姿勢に戻る。式は進み、多分偉い人が話を始めるがよく怒らないなぁと感心した、きっとああいうのを大人の対応というものなのだろう。


「以上をもちまして入寮式を終了いたします。誘導に従い移動してください」


すぐに誘導係と思われる生徒が誘導を始める。踏まれないように紫苑を抱え誘導に従って歩く。

 着いたのは体育館だった。中に入ると大きなボストンバッグがたくさん積まれていた。


「名前を呼ばれた方は渡されるバッグを持ち、誘導に従って第二図書館前に移動してください」


大きな声で生徒が指示を出している。名前はすぐに呼ばれ、ボストンバッグを受け取る。ボストンバッグをリュックのように背負い紫苑をしっかりと抱きなおして第二図書館に向かう。

図書館前に着くと後ろのほうから蓮ちゃんと名前が呼ばれたので振り返る。


「春華さんお久しぶりです。この子がパートナーの紫苑です」


紫苑が短く鳴き春華さんに挨拶をする。


「うんひさしぶり! うちの子の雪ちゃんです。紫苑ちゃんも雪ちゃんと仲良くしてね」


そういって春華さんの腕の中にいる真っ白なウサギを紫苑に見せると紫苑は不思議そう首を傾げて雪を見ている。そういえば私も紫苑も他のヨウセイをちゃんと見るのは初めてだった。

春華さんに雪についての質問や雑談をしているとだいぶ人が集まってきた。

全員が集合すると説明会の時にいた指導学生長が前に出る。


「これより班分けと担当指導学生を発表する」


1班から順に名前を呼ばれ整列してゆく。1班10人、2班12人、3班9人と不規則な人数で分けられていくので不思議に思っていると、並んでいないのは残り6人、いや今一人呼ばれたので5人だった。


「残りは5班です。続いて担当指導学生を発表します」


適当な扱いをうけ、そんな適当なと思いつつバッグを持ち5班の位置に並ぶ。

5班は式の時に隣に座っていた女性と軍服を着ている男性、同年代のドラゴンぽいヨウセイを抱えている男子。そして春華さんと私だった。指導学生副長は1班を担当するらしい。2班は凛々しい女性、3班は優しそうな青年、4班は強面の男性で5班は指導学生長だった。


「各班指導学生の指示に従ってください。以上解散」


指導学生が担当の班に指示を出している。5班も指導学生長についてきてくださいと言われバッグを背負いついていく。

他の班はほかの班は近くの建物に向かって行ったが私たちはなぜか森のほう向かって行った。少し歩くと古い洋館が見えてきた。


「ここが今日からあなたたちが住むことになる第一寮です」


指導学生長が指をさして誇らしそうに言う。

近くで見ると確かに古いが外壁や窓はしっかりと掃除がされていて管理がきちんとされていることが分かる。両開きのドアが開き老夫婦に中にどうぞ、と招かれ中に入っていく。


 中に入ると正面に階段のある広い玄関ホールで待たされる。左右には扉があり階段の後ろにはおくに続く廊下が見える。

夫人にこちらにどうぞと左の部屋に案内されたので言われたとおりに部屋に入る。男性は右の部屋に案内されていた。

中に入ると預けていた荷物と段ボールが置いてあった。


「段ボールの中は持ち込み禁止のものが入っています。ご自分のものか確認をお願いします」


段ボールの中を見るとデバイスと財布しか入っていなかった。鞄のほうを見ると紫苑用のボールとベッドもちゃんと入っていた。


「財布の中に証明証が入っているのですが取り出してもいいですか?」


フェレットのヨウセイを抱いている女性が夫人に聞く。


「証明証などは入学式に発行される学生証に追記されるのでその必要はありませんよ」


分かりましたと言って女性は財布を段ボールに戻す。

他に質問は?と夫人が言うとありませんという答えを聞いて夫人が話し出す。


「では次に支給品に不備がないか確認します。まずは制帽から」


そういってボストンバッグの中身を一緒にチェックしていく。バッグの中身は制帽、制服と礼装、運動着。作業服は迷彩柄と黒だった。手袋が運動用、防寒用の皮手袋、礼装用の3種類、革靴と戦闘靴、マント、今の時代マントを羽織るのはコスプレくらいだろう。最後にタブレットだ。タブレットには3年分の教科書がすでに入っていて連絡などもタブレットなので大事にするように言われた。


「デバイスとドッグタグ、学生証は入学式で授与されます。入学式までの一週間はタブレットの使用は制限されいるので連絡は制限されます。質問は?」


「デバイスってタブレットの事じゃないんですか?」


思わず聞いてしまう。


「よく皆さん勘違いをしていますが一般的にデバイスと呼ばれている物は、正確に言うとデバイス内蔵型という分類になります」


そうなんだぁと春華さんがつぶやくのが聞こえ、勘違いをしていたのは私だけじゃなかったと安心した。

次はお部屋に案内します、と言われ鍵を渡される。入学式後は学生証が鍵になるので、返却するようにと言われる。

二階に上がり順に部屋に案内される。私は102号室で103号室は春華さんだった。101号室はフェレットの女性だ。


「荷物を置いたらあちらの談話室に移動してください」


扉を指さした後お辞儀をして夫人は一階に戻っていった。

とりあえず荷物をおこうとドアを開け紫苑を先に部屋に入れドアを閉める。

内装はシンプルでフローリングに白い壁、靴箱、クローゼット、学習机、ベッドがあった。クローゼットの横の壁にはフックがあっておそらく制帽や鞄をかけるのだろう。ベッドの上にはシーツが積まれていた。

部屋に入ってすぐにドアと引き戸がある。ドアを開けると洗濯機、シャワーがあった。引き戸はトイレだった。

荷物を置き、紫苑はベッドの上で寝ている紫苑に声をかけ談話室に向かおうとすると、紫苑が慌てて起きて、駆け寄ってくる。


「疲れてるなら寝ててもいいよ」


紫苑は動かずドアが開くのを待っている。見慣れない場所に一匹だと寂しいのかなと思いながら談話室に向かう。

 談話室に入るとこっちこっちと指導学生長に呼ばれる。私が最後だったようだ。指導学生長が立ち上がる。


「ようこそ第一寮に! 指導学生の佐藤千歳です。千歳先輩ってよんでね。」


最後にウインクをする。皆反応していいのかわからず気まずい空気が流れる。

千歳先輩はそんなことは気にせずに話を進めていく。


「じゃあ次の自己紹介は君ね」


ドラゴンを抱えていた男子が指名される。


「俺の名前は藤原隼人。高校一年でサッカー部所属でした」


さわやかに彼は挨拶をする。何となくリーダータイプっぽいなと思った。

じゃあ次!とフェレットの女性が指名される。


「菊池由乃23歳。富士商事に勤務していました。よろしくお願いします。」


そういってお辞儀をする。ずっと思っていたけど美人だ、なんだか目が離せない。

春華さんが指名されると少しうわずった声自己紹介を始める。


「小笠原春華17歳です。高校2年生で部活にははいっていませんでした。よ、よろしくお願いします」


勢いよくお辞儀をしてテーブルに頭をぶつけていた。

次に私が指名される。


「近衛蓮16歳です。高校では陸上部に所属していました。よろしくお願いします」


無難な挨拶をする。紫苑もちょこんと座りながら頭を下げていた。

じゃあ最後と軍服を着た男性が指名される。男性はビシッっと敬礼をして大きな声で自己紹介をする。


「笹井順平26歳。以前は駐屯地にて3等陸曹を務めていました。ご指導ご鞭撻よろしくお願いします!」


元気だね~と千歳先輩がころころと笑う。


「自己紹介も終わったし、入学式までの予定を確認するよ。まずはこの後の予定。この後はまず卒業までの単位取得計画を立てます。高校生組には大量に宿題を出すから覚悟しててね」


藤原君がそんなーと嘆いていた。私も声には出さないが同じことを思ってしまった。


「そのあとは食堂で昼食を食べて、制服の着方を覚えてもらうよ。早く終わればそのあとはフリータイム。今日の予定は終わり」

覚えた?と聞かれたのではいと答える。千歳先輩はよろしいといって続ける。


「明日は入学式の行進練習、服装は礼装ね。行進を明日でマスターしてもらいます。

そのあとはずっとお勉強と基礎体力作り。最終日に行進の確認をして、いざ入学式へ!って感じかな。

この一週間はかなりきついけど頑張ってね」


皆がうなずいたのを確認して千歳先輩はタブレットを操作する。


「じゃあさっそくみんなの単位取得計画を立てようか。まずは皆タブレットをもってきて」


駆け足!といわれ急いでタブレットをとって談話室に戻る。


「皆持ってきたね。じゃあまずはこの学校の単位について話すね。」


そういって千歳先輩は自分のタブレットを見せてくる。


「この学校は3年間で卒業基準の単位を取れば最終テストを受けて卒業できる。だから1、2年目でなるべく単位を取って3年目はテスト対策が主流かな」


ここの3年生の中には2年の初めには必要単位を取り終わってた猛者もいるのよと千歳先輩はあきれたように言っていた。


「次は授業について。格闘術と魔法戦闘術の授業は参加によって単位がもらえるから休んじゃダメ。

逆にそれ以外は授業に行かなくてもテストで6割をとればいいから、行くのは苦手な科目くらいかな。

授業の動画はいつでもタブレットで見れるから。高校生組は特によく見て勉強すること。いいね?」


「タブレットで動画を見るときに教科書はどうやって見ればいいですか?」

「後で紙の教科書が届くと思うからそれを使ってね。あと勉強は談話室でするといいよ。皆優しいから困ってれば教えてくれるし、仲良くなるきっかけにもなるからね」


千歳先輩がタブレットを操作すると私たちのタブレットにデータが送られてくる。


「よし! とりあえず計画のテンプレートを送ったから余裕があればガンガン詰めていってね。高校生組には課題も送ったから明日までにやっておいてね」


とんでもないことを言い放ち30分後に食堂ね~といって談話室を出て行った。

 

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