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五話

……重たい。

お腹に重みを感じて目が覚める。デバイスで時間を見るとアラームがなる10分前だったので二度寝をしようと目を閉じる。すると今度はお腹の上でもぞもぞと何かが動くのを感じる。

 おそるおそる体を起こすとコロンと黒い物体が膝に転がってきた。黒い物体と目が合う。キューンと鳴いて嬉しそうに尻尾を振る。

横眼で卵の様子を見ると箱は空で卵のかけらもない。食べちゃったんだろうなぁ、好物の例でコンクリートなんて書かれてたくらいなんだからだから。

 とりあえず黒い物体改めヨウセイに触ってみる。もふもふだった。目を細め嬉しそうに鳴く。


「これからよろしく。両親も君に会いたがっていたんだ。会ってくれるかな?」


ヨウセイに尋ねるとキューンと鳴き、近づいてきた。

 ヨウセイをそっと抱きリビングに向かう。リビングには二人ともそろって食事をしていた。

私が起きたことに気づきおはようとあいさつをして、私の腕の中にいる存在を見て固まった。


「起きたら生まれてた」


気まずい、私もまさか起きたら生まれているとは思わなかった。両親も同じだろう。

ヨウセイがまたキューンと鳴く。父と母が触ってもいいか?というのでいいよといいながら近づく。


「蓮の事、これからよろしく頼む」


そういって父がヨウセイを撫でる。


「蓮は寂しがり屋さんだからそばにいてあげてね」


母も同じようにヨウセイを撫でる。ヨウセイも任せろとばかりに胸を張っているように見えた。


 今夜は御馳走だ、俺に任せろ。と父が張り切っていたのでホールケーキは買っちゃだめだよと言っておく。父は返事をせずに行ってきます、と言って家をでてしまった。あれは絶対買ってくるつもりだと思う。母も家を出る時間になり、蓮のことよろしくねとヨウセイに言って家を出た。

 両親がいなくなり、ヨウセイを見る。見た目は黒い犬。目は青のようにも見える。犬かどうかは証明証に記載されるので後で確認しよう。役所に申請をしに行かなければならないが問題が一つ。申請するときにヨウセイの名前も書かなければならない。急いで考えなければと思いデバイスで名前候補を検索する。

犬の名前ランキングなどを見てみるがしっくりと来ない。

 祖母の母国語でシュヴァルツでもいいが安直すぎる。悩んでいるとヨウセイと目が合う。なぜか幼い頃に買ってもらった色図鑑を思い出した。確か押し入れにまだあるはずと押し入れを探し、目当ての図鑑を引っ張り出す。図鑑をめくり目の色を探す。この色だと青すぎる。この色では明るすぎる。違う、違うとめくっていく。どこかで見たはずなんだとめくる。そして見つけた。


「紫苑。君の名前は紫苑だ」


 名前が決まれぼあとは申請をするだけ。急いで支度をする。紫苑は抱いていくことにした。

紫苑にとって初めての外なので少し不安そうだ。

大丈夫だよと頭をなでて玄関を出る。鍵が掛かっているかチェックして会談を降りていく。紫苑は落ち着いた様子で景色を眺めていた。

駅に着き改札を通ろうとすると駅員に止められる。


「申し訳ありません。ペットはケージに入れていただかないと乗車することができません」

「ヨウセイの場合も同じですか?」

「証明書はお持ちですか?」


驚いたように駅員が聞いてくる。


「今から申請をしに行くところです」

「分かりました。少々お待ちください」


そういって改札横の窓口に入っていく。駅員はすぐに戻ってきた。


「こちらを腕につけて乗車してください。下車したら駅の窓口に渡してください。」


そういってシリコン製のリストバンドを渡される。

 お礼を言って電車に向かう。電車内は昼間ということもありほとんど人は乗っていなかった。

目的の駅で下車して窓口にリストバンドを渡し、駅を出る。紫苑は気づいたら寝ていた。駅を出てすぐ目的地の役所に着く。総合案内所と書かれている窓口に行きどこに行けばいいか尋ねる。窓口の女性は優しい口調で場所を教えてくれた。

 教えてくれた窓口に着き、もってきていた冊子を見ながら書類を書く。書類を書いている間紫苑は私の膝の上に座ってパーカーの紐で遊んでいた。

書類を出してしばらくすると書類を受け取った職員がこちらへどうぞと奥の部屋に案内をされる。


「これから契約の儀式を始めます」


突然儀式と言われ身構えてしまう。


「そんなに身構えなくても大丈夫です。この円の中に立っているだけです。ちょっと光りますけど怖いものじゃないので大丈夫ですよ」


じゃあ怖いものもあるのかと思ったが、おとなしく円の中に紫苑と入る。


「じゃあ始めますよ」


職員が退出するとすぐに変化が起こった。

不思議な色の光がまるで蛍のように周りを飛ぶ。それと同時に弱い電流みたいなものが体中をめぐる。紫苑も驚いているようで目を大きく開いている。チクッと左肩に痛みと熱を感じると光は消えて職員が入ってきた。


「お疲れ様です、無事儀式は終了しました。証明証はできていますのですぐに帰れますよ」

「どこも痛いところありませんよね?」

「一瞬左肩に痛みがありました」

「おそらくですが肩周辺に入れ墨のような印がついていると思います。割とよくある事なんですよ。ヨウセイに好かれてると印がつくなんて説もあるので、縁起がいいものなんです」


そう言われてしまうとまぁいいかと思ってしまう。

 証明証ですと渡された名刺サイズの箱を受けとり家に帰る。メールで名前が紫苑になったことと無事証明証を受け取れたことを母に報告した。

肩の印を鏡で確認するとよくわからない模様が肩に近い位置に巻きつくようについていた。

少し疲れたので紫苑と一緒に昼寝をする。紫苑も疲れていたようですぐに寝てしまった、私も紫苑のぬくもりを感じながら眠った。


結構な時間寝ていたらしく起きてリビングに向かうと、両親が食事の支度をしていた。


「おかえり。お父さんやっぱりホールケーキ買ったんだ」

「残りは責任もって食べるから問題ない」


そんなに食べて平気なのだろうか?母からNGが出ていないなら大丈夫なんだろう。


「紫苑ちゃんにプレゼント買ってきたのよ」


そういって母が小さな箱を見せてくる。


「じゃあ紫苑つれてくる」


リビングから部屋に戻り、紫苑を起こす。寝ぼけているのかベッドから落ちそうになったので受け止めて、そのまま抱いてリビングに戻る。


「紫苑ちゃんにプレゼントを買ってきたのよ」


母が箱を開けて紫苑にネームプレートのついたチェーンを付ける。SHIONと書かれた銀色のプレートをつけ嬉しそうに尻尾を振る。


「紫苑は犬だったのか?」


そういえばまだ証明証を見ていなかった。

証明証の入っている箱を開けるとカードが入っていた。カードには私の名前と紫苑、キツネ型と書かれていた。


「紫苑はキツネって書いてある。」


キツネって黒いのもいるのねと母がのんびりという。私は犬みたいな名前を付けなくてよかったと安堵した。

 父からのプレゼントは犬用のボールとベッドだった。早速遊ぼうとする父と紫苑をまずはごはんでしょと母が止める。夕食は紫苑の好物を探るためか単品の量は少ないが種類が多かった。紫苑はなんでも食べた。箸まで食べようとしたのでさすがに止める。甘いものが好みのようで残ったケーキを一匹で食べてしまった。お腹いっぱいになったせいかすやすやと寝てしまい、ボールを持った父が寂しそうに部屋に戻ってしまった。

 そういえばまだ春華さんに報告してなかった。無事生まれました、と眠っている画像と一緒に送信する。

おめでとう!その子とも会えるのが楽しみだよと返信が帰ってくる。私も楽しみですと返信をしてベッドに潜る。紫苑は父からもらったベッドで寝かせる。


「おやすみ」


寝ている紫苑に挨拶をして眠る。

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