四話
次の日、母のごはんよ~と言いう声で目が覚めた。
卵におはようと挨拶をして、卵の入っている箱をもってリビングに向かうと卵ちゃんおはようと母が卵を撫でる。父はもう出勤する時間らしく玄関で靴を履いていた。
行ってらっしゃいと玄関で見送りをすると、行ってきますといいなぜか私の頭を撫でて会社に向かった。
リビングに戻り、朝食を食べる。母は休日なのでどこか出かける?と言ってくれたが卵を置いていくわけには行けないので断った。
朝食の片づけを終わらせて「ジョギングをしてくるから卵を見ててくれない?」と母に頼む。
母はもちろんよと言いながら箱を受け取ってくれる。
ジャージに着替え、行ってきますといって卵を撫でる。なんとなく父の気持ちがわかった気がしてすこし照れくさい。
ジョギングは30分ほどで切り上げ家に帰る。卵のことを考えると自然に歩みが早くなり家に着くころには息が上がっていた。
「ただいま!」
靴も揃えずに卵のもとへ向かう。
「そんなに急がなくても、大丈夫よ。シャワーを浴びてきなさい」
母はおかしそうに笑って、私にタオルを差し出した。
タオルを受け取り着替えをもってシャワーを浴びに行く。シャワーを浴びてすっきりした。リビングに戻り卵を抱えて録画していた旅番組を見る。卵に一緒に行こうね、きれいな場所だね、温泉は君と一緒に入れるのかなと話しかけていると後ろから笑い声。
「何?」
少しムスッとして母に聞く。
「あなたが生まれたばかりの頃のお父さんと行動が一緒でなんだかおかしくて」
そう言ってまた笑い出す。
恥ずかしいので、またテレビに視線を戻す。母には顔が赤いのばれてるんだろうなぁ思っていると、腕の中で卵が動いた。
「気のせいか今動いた気がする」
「本当に!?」
母が駆け寄ってくる。
「と、とりあえず箱に入れるよ」
箱の中に静かに卵をおろす。
すると卵が大きく動いた。
「生まれるのかしら?」
私は卵にひびが入ってないか確かめるように触る。
「分からない、けどひびは入ってない。もしかしたら胎動なのかな?どっちにしろもうすぐ生まれるのかもしれない。」
「はぁ~びっくりした」
母は大きく息を吐く。お父さんに連絡してくるわと言って部屋に戻っていった。
「続き見ようか」
卵をまた抱きしめて続きを見た。
夜になり父が帰ってきた。母から連絡を受けたのだろう。卵がたまに動くと嬉しそうにしている。
「もうすぐ生まれるのか」
「うん。これからひびが入ってくるんだって」
「そうか、楽しみだな。名前は決めたのか?」
「名前?」
「いつまでも卵と呼ぶわけにはいかなだろう」考えてなかったがその通りだ。
「実際に見てから決める」
どんな姿なのか分からないので姿を見てから合った名前を考えるほうがいいだろう。
「そうか」
そういって父は母の所に行った。
卵にはすこしひびが入っていた。
部屋に卵を連れていき眠る準備をする。
「もうすぐ君に会えるね。名前は君に会ってから決めるよ。決して忘れてたわけじゃないよ」
卵に言い訳をしてベッドに入る。卵の動く頻度も上がり、いよいよ会えると思うとワクワクする。
お休みと卵に挨拶をして眠る。
ひびが広がっていることには気づかなかった。