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十八ノ一話

軽めの朝練を終え朝食を食べながら今日の課題を確認していると席が空いてなかったのか藤原君がこちらにやってきた。


「ここいいか?」

「いいですよ」


お互い話もせずに食事を食べていく。私の方が先に食べ終わったのでお先にといって部屋に戻る。

 部屋に戻り授業まで時間があるので課題をやることにした。毎日少しずつ量が増えている気がするが黙ってやるしかない。6月を乗り越えれば楽になるという言葉を信じて今は目の前の課題を進めていく。

 紫苑にズボンの裾を引っ張られ何だろうと紫苑を見ると今度は今日授業でかぶる帽子を私の足に押しつけてくる。時間を見るとそろそろ着替えないといけない時間だった。


「ありがとう、すぐに着替えるね」


紫苑の頭を撫でてお礼をいってから着替える。装備の不備がないか確認をして紫苑から受け取った帽子をかぶりグラウンドに向かう。

 グランドには何カ所かに生徒が集まっていた。5班はどこだろうとうろうろしていると遠くから私の名前を呼ぶ声が聞こえる。


「近衛! こっちだ!」

「蓮ちゃんこっちこっち!」


藤原君と春華さんが手を振りながら大きな声で私を呼んでいた。


「おはようございます」

「蓮ちゃんおはよう!」

「おせーぞ! 笹井さんたちも待ってるから早く行くぞ」


どうやら私がうろついていた場所は他の班の集合場所だったようだ。


「まったく、なんでしっかりしてそうなのに迷子属性なんかがあるんだ」

「集合場所なんて指定されてましたか?」

「はぁ? 昨日訓練の後に先輩がいってただろ」


あのときは疲労困憊で聞き流してしまったようだ、全く記憶にない。2人にせかされ本来の集合場所に向かうとホッとした表情で笹井さんたちが挨拶をしてくれる。


「おはよう、どっかで倒れてるんじゃないかと肝をひやしたぞ」

「すみません、集合場所がどこかわからなくて」

「いいのよ。よく考えれば通信を入れればよかったのよ。

勝手にパニックになっていた私たちがいけないわ」


笹井さんに帽子の上からぐしゃぐしゃと頭を乱暴に撫でられ帽子が落ちてしまう。その帽子を由乃さんが拾い私にかぶせてくれた。1班の人たちは全員集まっているようでストレッチをしていた。

 授業開始の時間になると校舎の方から東條先生がやってくる。


「おはよう、今日は楽しくハイキングをしてもらう。荷物はこちらで用意したので安心しろ。なに頑張れば昼前には帰ってこれる」


体育館に荷物があるとのことなのでみんなで荷物を取りに行く。


「なんかいやな予感がするんだよなぁ」


藤原君が顔をしかめながら歩いている。どういうことかと話を聞いてみると藤原君のお姉さんが悪いことを考えているときの表情と先生の表情がかぶったそうだ。


「さすがに2回目の授業でそこまでひどいことにはならないと思いますよ」

「そうだな、考えすぎだよな」


藤原君は自分を納得させるようにいった。

ちょうど体育館に着いたので私は扉を開けて中を見る。中にはばんばんに中身の詰まったバックパックとずらりと並んだアサルトライフルがおいてあり、思わず扉を閉めてしまった。


「なんで閉めるんだよ」


藤原君が不機嫌そうに扉を開けて固まってしまった。

後ろから早く入れよとせかされてしまったので藤原君を押し込むように中に入る。

とりあえず荷物をもって先生のところに戻らないといけないのでバックパックを背負う。

バックパックはずっしりと重くこれを背負って歩かなければならないと思うといやになってくる。

アサルトライフルは確か4キロくらい重量があると笹井さんが言っていたので装備全体の重さは15キロくらいだろう。由乃さんと春華さんが背負うのに苦戦していたので手伝いをしてグラウンドに戻る。


「全員荷物はもったな? 今から地図を送るので各班ルートを守って歩くように」


今日中には帰ってこいよと言うと先生は校舎に戻っていってしまった。


「どうしますか?」


私はこういった経験のありそうな笹井さんと相談をする。


「とりあえず俺と近衛で菊池さんと小笠原さんの銃を持とう。先頭は俺で最後は近衛だ、頼めるか?」

「わかりました」

「はい! はい! 俺も持ちます!」

「お前は自分の荷物をしっかり持ってればいい」

「……わかりました」


藤原君は少し拗ねるように返事をした。

由乃さんからアサルトライフルを受け取りバックパックに縛り付ける。


「大丈夫?」

「つらくなってきたら【身体強化】を使うんで大丈夫ですよ。笹井さん準備出来ました」

「それじゃあ行くか。みんなしっかりついて来いいよ」


笹井さんを先頭に春華さん、藤原君、由乃さん、最後に私の順に山道を進んでいく。1班は違うルートを行くようで別の道を進んでいった。

最初は雑談混じりの楽しいハイキングだったが1時間も歩けばみんな無言になって足を進めるだけになってしまった。


「ここで休憩にする」


笹井さんは小川が流れていて日陰になっている場所で休憩の指示を出す。

みんな荷物を下ろして水分を補給する。私も水筒の水を飲み紫苑には飴をあげた。

10分ほど休んでから出発の準備をする。


「これから少し道が悪くなるみたいだ。怪我をしないように注意して進もう」


笹井さんの言う通り少し歩くと道は荒れていて木の根っこや倒木が道をふさいでいた。


「本当にこの道行くんですか?」


春華さんが不安そうに先頭を歩いている笹井さんに尋ねる。


「ああ、この道であってる」


笹井さんがみんなが通りやすいように倒木をずらしたり、飛び出ている枝を切ったりしながら先導してくれる。時間をかけて道を進んでいると少し先に整備された道が見えた。


「あそこまで行ったら休憩にしよう」

「おっしゃあ!」


藤原君は雄叫びを上げ喜んでいたが春華さんと由乃さんは声が出せないくらい疲労しているようだ。

笹井さんにこのことを伝えるために歩きながら通信を入れる。


――由乃さんと春華さんがそろそろ限界みたいです――

――そうか、休憩後から【身体強化】を使って一気に山を下ろう――

――了解。由乃さんの荷物は私が持ちます――

――俺は藤原の銃と小笠原さんの荷物を持つ――


通信を終えて2人の様子を見ると後ろからなので表情は見えないが足取りがおもくつらそうだ。

休憩ポイントにつくと2人は座り込んでしまった。


「2人とも大丈夫ですか?」

「だいじょーぶ、蓮ちゃんのほうが大変なんだから」

「そうね、私たちが弱音を吐いてはいけないわ」


そう言って笑いかけてくれるが笑顔にも疲れが見える。雪とサチリも心配そうに2人を見ていた。

休憩は前回よりも長めでだいぶ体が楽になった。


「そろそろ行くぞ」


笹井さんがそう言って準備をしていた春華さんの荷物を前に抱えるように持った。


「笹井さん! 私持てますよ!」


笹井さんは春華さんから猛抗議を受けているが知らん顔をしている。

私は上着を脱ぎ無言で由乃さんに押しつけ、由乃さんが困惑している隙に由乃さんの荷物を奪う。荷物を笹井さんと同じように抱えて【身体強化】を発動させるとだいぶ軽く感じる。


「自分のものくらい自分でもてるわ!」


由乃さんは怒ったように私に詰め寄る。美人が怒ると怖いなぁと目をそらしていると顔をつかまれ強制的に目を合わさせられる。


「これはどういうことかしら?」

「【身体強化】を使って一気に終わらせよう作戦です」


助けを求めて笹井さんを見る。


「これはチームプレイだ。出来ないことは他の出来る奴がやればいい。2人は俺たちが出来ないことをやってくれればいいんだ」

「そうですよ、私は能力的に脳筋なんで今は荷物持ちくらいしか役に立てません。だから今は頼ってください」

「藤原は護衛だから全部自分でやらなきゃいけない。わかってるな?」

「もちろんっす! 俺が動くときは誰も助けてくれない時って千歳先輩が言ってました」

「よし! ペース上げていくぞ」


笹井さんは少し早足で歩いて行く。道も進んで行くにつれてしっかりと舗装されていてゴールが近いことを感じる。春華さんと由乃さんも少し息は上がっているがさっきに比べだいぶ楽そうだ。

 ゴール地点には東條先生が旗をもって立っていた。


「そこからダッシュ! 全力で走らない奴はもう一周してもらうぞ!」


先生のかけ声でみんな全力で先生のところまで走った。

私はゴールして荷物をおろさずそのまま倒れ込む。


「今日の授業はこれで終わりだ。荷物はここに置いておけ、そこの飲み物は飲んでいいぞ」


先生はそう言うとタブレットに何か書き込みながらどこかへ行ってしまった。

 荷物をおろして寝転がっていると笹井さんが飲み物をくれる。


「おつかれ、よくやった」

「ありがとうございます」


私は立ち上がって飲み物を受けとりそのまま飲む。この後にまだ訓練があると思うと気が重い。腕時計の時間を見ると12時24分、そろそろ寮に戻らないと汗臭いまま食事を取らなければいけなくなってしまう。


「そろそろ寮に戻りませんか?」

「そうだな、風呂も入りたいし。笹井さん! 一緒に風呂行きましょう!」


藤原君は笹井さんを連れてさっさと寮に戻っていった。

由乃さんたちの様子を見ると2人とも木陰で休んでいたので2人のほうに近づく。


「お疲れ様です。昼食にしましょう?」

「蓮さんおつかれさま。そうしましょうか」

「そうだね。シャワーも浴びたいな」


ふらふらしている2人と一緒に寮に向かった。

談話室で集合してから3人で食堂に向かうことにしていったん解散する。

部屋に戻りシャワーで汗を流す。さっきまで気づかなかったがだいぶ体が疲れているようで立ちながら寝てしまいそうになった。

壁にゴンッと頭をぶつけてしまいベッドで寝ていた紫苑が心配してカリカリとドアをひっかき音を出す。


「大丈夫、頭をぶつけただけだよ。すぐに出るから待ってて」


シャワーを止めてドア越しに話しかける。急いで着替え髪を乾かし、紫苑と一緒に談話室に向かう。 談話室にはまだ誰も来ていないのでソファーに寝転がって2人を待つ。談話室にはまだ誰も来ていないのでソファーに寝転がって2人を待つ。

紫苑をお腹にのせてわしゃわしゃと撫でていると扉の開く音が聞こえたので座り直す。

扉の方を見ると2人が談話室に入ってきた。


「待たせちゃったかな?」

「さっき来たばっかりなので大丈夫ですよ」

「少し眠そうね」

「さすがに疲れました。食後に少し寝ておきます」


行きましょうかと言って立ちあがり談話室をでる。

2人と一緒に食堂に行くと笹井さんと藤原君が食事をしていた。


「おう、今日の訓練は15時からだってよ」

「え! 今日も訓練あるの?」

「ああ、今日の授業内容を教えたら笑顔で言ってたぞ」


春華さんがこの世の終わりを見たかのような顔で席に座り、私たちも席に座る。

今日の昼食は私と由乃さんが豚の生姜焼き定食、春華さんはポークソテーだった。


「ここの料理はおいしいよね」

「そうね、学食にしてはレベルが高すぎるとは思うけど」

「学食はなかったんでわからないですけどおいしいと思います」


ここの料理はおいしすぎるという話をしながら食事した。食事を終えてまた訓練でといって部屋に戻る。

今日の課題は昨日より少なく、訓練後にやれば終わると思いアラームをかけ時間まで寝ることにした。


 

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