二話
デバイスのアラームで目が覚める。高校指定の制服はないのでいつも通りジャージに着替えて時計を見るといつもより少し遅い時間。今日は朝練がないのでのんびりだ。
顔を洗いリビングに向かうとなぜか甘い匂いが漂う。
「おはよう。朝からケーキなんてよく食べれるね」
「責任もって食べるといったからな」
父はケーキを食べながら言った。飲み物はコーヒーが出されているのはせめてもの救いだろうか。
私にはベーコンエッグとトースト、飲み物は牛乳が用意されていた。
昨日父が責任もって食べると言わなければ私も朝からケーキを食べることになっていただろう。父には感謝しなければ。
私が朝食を食べていると両親が家を出る時間になっていた。いってらっしゃいと仲良く一緒に出勤する二人に声をかけ、朝食を再開する。朝食の片づけをして、学校へ向かう。
途中知り合いに会うこともなく教室に入る。昨日早退したせいか部活仲間や友人が何かあったのかと尋ねてくるが、体調不良とごまかす。
しばらくすると担任がHRだとみんなを席に着かせ、学校の伝達事項をみんなに伝える。突然担任が私のほうを見る。
「最後に、近衛が今月いっぱいで転校することになった」
担任が笑顔で言っているように見え、私は問題児かとツッコミたくなる。クラスも少しざわつくがチャイムが鳴りHRが終わる。
原因の担任はそそくさと教室を出ていき私は友人たちから質問攻めにあう。時間がすぎていくにつれて質問も減り、部活でも質問攻めにあうことはなかった。もともと友人が少なかったので騒がれることもなかった。
それからは登校最終日まで平和に過ごすことができた。登校最終日もささやかなお別れ会をクラスで行い連絡をとろうねと約束をして家に帰った。
まだ1年もたっていないせいなのか寂しさはなくあっさりと別れを済ませた。
説明会も明日に迫りいよいよ入学が近づいてくる。
両親も有休が取れ一緒に行くことになっている。明日は説明会のに学校内の案内と制服などの採寸がある。制服、運動着、教科書、さらにデバイスまで支給されると知って驚いた。その代わりに今まで使っていたデバイスの持ち込みは禁止される。友人とは気軽に連絡は取れないが仕方ない。
不安はたくさんあるが、明日がすこし楽しみだ。明日の持ち物を確認して、少し早めにアラームを設定する。今夜はあまり良く眠れそうにない。