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十六話

予定通りの時間に起き、顔を洗い作業服を着て装備をつける。


「よし! 行こうか」


紫苑も気合たっぷりなのかドアを早く開けろとせかしてくる。

玄関ホールには藤原君以外は皆そろっていた。時間ぎりぎりに藤原君が走ってくる。

どうやら寝坊したようで寝癖がはねたままだ。


「セーフ!」

「早くストレッチをしろ。皆待ってるぞ」


皆がストレッチを終えたのでウォーミングアップで走る。装備があるので少し走りにくい。


「装備のベルトをしっかりと締めないと走りにくいぞ」


走りにくそうにしていた私を見て笹井さんがアドバイスをくれる。

ベルトをきつく締めると笹井さんの言った通り、だいぶ走りやすくなった。

 ウォームアップの次はいつものように筋トレを始めようとすると


「近衛、今日は筋トレと障害走はなしで格闘術の型をやる」

「急にどうしたんですか?」

「あれを見ろ」


笹井さんが指をさす方向を見ると3人が息を荒げ休憩をしていた。

確かにあの状態では無理そうだ。とりあえず笹井さんに渡された水を配る。

3人は水を飲み少し回復したようだ。


「それじゃあ今から型の練習をする。銃を持った型もあるが今は素手の型からだ。

まずは俺の真似をしてくれ」


笹井さんの真似をして蹴りやパンチを練習する。


「重心を意識しろ! 格闘戦では相手の重心を崩さなければならない! まずは自分の重心から理解しろ」


最初はふらついていたが練習が終わるころにはある程度形になっていた。


「今日はここまで」

「ありがとうございました」

「まだ少し時間があるから障害走やるか?」

「そうですね。少しやっときます」


笹井さんと障害走を始める。3往復したが一度も笹井さんに勝てなかった。

いつか勝ってやると思いながら水を飲んでいると紫苑がタオを咥えて由乃さんと一緒にこちらにやってくる。


「おつかれさま。藤原君たちは先に戻ったわよ」

「そうですか。タオルありがとうございます。紫苑もありがとう」


紫苑の頭を撫でながらお礼を言う。


「早く着替えないと風邪をひいちゃうわ。戻りましょう?」


私は由乃さんと一緒に寮へ戻る。部屋に戻りシャワーを浴びて制服に着替える。

時間的に食事をしたら出ないといけないので鞄にタブレットと紫苑の飴をいれて食堂に向かう。

食堂で皆と食事をとり校舎に向かう。



 指定された教室に入ると電子黒板に席順が書かれている。

5班は人数が少ないので1班と合同で授業を受けるようだ。

1班は先に全員座って自習をしているようだ。まだ少し時間があるので今日の課題を見ているとチャイムがなり、教師が入ってくる。


「今日から3年間1班と5班を担当する東條 小春だ。

今日は基礎知識を一時間。そのあとに検査をしてから実際に魔力とはどういうものか実際に体感してもらう」


口調のせいか少しきつい印象を受けるが美人だ。スーツや制服ではなく私服を着ている。

授業は電子黒板で動画が流れそれに東條先生が補足を入れていた。


 まず魔法について。体内や空気中に存在するエネルギーを魔力と呼び、魔力を動力として発動したものを魔法と呼ぶ。

魔力はデバイスがなくても発動できるが効率が悪いので推奨されない。

魔力を制御することでより少ない魔力で魔法を発動させることができる。

東條先生は蛇口をひねって水の量を調節するのと一緒だと言っていた。

コップから水をあふれさせるのはもったいない、一口でいいのにコップいっぱいに水を注いでも意味がない。外から魔力を集めるのは難しく、魔導士でもほとんどできる人間はいないそうだ。


 次は魔術戦闘と格闘について。魔導士は生態系調査の護衛だけでなく、要人護衛やテロ組織の殲滅作戦に派遣されることもあるのでなるべく実践に近い授業内容になる。

ファンタジー小説のような魔法は使えないのではなく使わない。火をおこすときに使うくらいだと言っていた。威力の割に魔力を馬鹿みたいに消費するので誰も使わないそうだ。


 最後にヨウセイの役割について話していた。ヨウセイは魔力制御に失敗した場合のリミッターになる。魔力が体内で暴走する前にヨウセイが魔力を吸収して魔力の乱れを整えてくれる。その他には野生動物に近いので偵察に向いている。

 東條先生はフリーの魔導士として生態系調査に関わっていたが協会に所属して世界中を飛び回っていたそうだ。

 先生が教壇の上に水晶玉を置く。


「今から属性検査と適性魔法検査を行う。1班から順番にこれに触ってくれ。

結果はすぐにタブレットに送られる」


1班から順番に並び検査を受けていく。私の番になり玉を触る。

何か変化するわけでもなく5秒ほど手を置いていて検査は終わった。

席に戻りタブレットを確認すると結果が届いている。

 属性と書かれた棒グラフには火、水、風、土、雷と書かれていた。

私のグラフでは雷が極端に飛び出ていたがその他は同じくらいだった。適性魔法は攻撃と探査に適性大と書かれ、回復と防衛は適性とだけ書かれていた。適性魔法にも棒グラフがあったので見てみると攻撃と探査が飛びぬけていて防衛は半分くらいだったが回復は本当に防衛と同じ適性なのかと疑ってしまうくらいグラフが小さかった。


「検査の結果を見て自分は何ができるのか考えてほしい。」


私の結果を見ると脳筋と呼ばれても反論できないくらいに攻撃特化だ。

できれば戦いたくないと思っている私としては複雑だ。


「それでは実際に魔力とはどういうものか体感してもらう。方法はヨウセイに魔力をもらうだけだ」


先生はヨウセイと向きあってデバイスを握りしめるようにと指示をする。

デバイスを握り紫苑と見つめ合う。


「次にヨウセイに魔力を少しだけ送ってもらうように頼む。少しだけと必ず伝えるんだぞ。」

「紫苑少しだけ流してもらえるかな?」


私は緊張しながら紫苑にお願いをする。すると急に体中に弱い電流のようなものが流れる。

この感覚は役所で契約したときに経験したものと同じだった。


「今体感してもらったのが魔力だ。今度はヨウセイに魔力を送る。

はじめは難しいのでヨウセイに触れながら練習する」


紫苑の頭に手を置いて魔力を流そうとするがうまくいかない。

みんなもなかなかうまくいかないようで笹井さん以外はできていないようだ。


「イメージしろ。私は魔力を冷たく感じるので水をイメージしている。

相手にパイプをつなげそこに水を流す感覚だ」


私は目を閉じて紫苑に触れている手をケーブルに見立て、電流を流すイメージを強く頭に描く。

すると手に電流が流れる感覚がした。目を開けると紫苑がうれしそうにしっぽを振っているので成功したのだろう。紫苑の頭をなでながら周りを見ると次々に成功させているようでヨウセイたちがうれしそうにしている。


「今の感覚をしっかりと覚えるように。今日の授業はここまで。

明日は休みだがあさっては作業服2種でグラウンドに集合だ」


東條先生はそう言ってすぐに教室に出て行った。


「終わった! 寮に戻ってみんなで飯食いに行こうぜ」


今日はもう校舎に用事はないのでみんなで寮に帰る。昼食を食べ終え部屋に戻り制服を着替えて課題をしていると通信が入る。


――20時に談話室に集合。今日の検査結果を持ってくるように――


とりあえず集合時間前には課題を終わらせたいので集中して取り組む。

課題を終わらせて時間を見ると食堂が奥まで少し時間がある。魔力制御の練習をしようと試しにベッドの上で遊んでいる紫苑に向けて魔力を飛ばしてみる。

 紫苑はボールに夢中のようでちゃんと魔力が届いたのかわからない。今度は紫苑に線をつなげ、線に電流を流すイメージをしっかり描き魔力を流す。するとボールに夢中だった紫苑が突然こちら向いてどうしたの?と聞くように首をかしげている。

 もう一度同じイメージで魔力を送ってみると、うれしそうにこちらに寄ってきて膝に上ろうとしてくる。紫苑を膝に乗せながら練習をしているとあっという間に食堂の開く時間になっていた。

 食堂で夕食を食べタブレットをもって談話室に向かう。談話室には由乃さんがサチリを見つめていた。

集中しているのか私が談話室に入ったことに気づいていないようだ。

邪魔するのも悪いので由乃さんが座っているソファーから離れた位置にあるいすに座り、タブレットで本を読む。

 しばらく静かな空気の中で過ごしていると談話室のドアが開き藤原君を先頭に春華さんと笹井さんが入ってくる。由乃さんは私がすでに談話室に居たことに気づき一瞬驚いた顔をしたがすぐに藤原君たちと談笑していた。

 千歳先輩が来たので本を読むのをやめてみんなの集まって居るソファーの方にいく。


「まずは検査結果を送ってもらえるかな?」


みんな言われたとおりに結果を千歳先輩に送る。


「ありがとう。それじゃあまずは藤原君だね。君は属性は平均的に高いけど飛び抜けて火が高い。適性は攻撃と防衛が適性大で回復も適性だけど数値は高いね」


どちららかというと防衛型だねと言われていた。


「次は春華さん。属性は全部おんなじくらいだね。回復と防衛に適性大ほかはぎりぎり適性ありだね」

「なんかイメージ通りだな」

「そ、そうですか? なんだか照れるなぁ」


笹井さんにいわれて春華さんは少し照れくさそうに笑っていた。


「次は笹井君。属性は藤原君とほぼいっしょで火が高いね。適性大に全部ぎりぎり届いてないね。でも全部適性が高いってことだから気にしないでね」

「わかってます」

「そっか。それじゃ次は菊池ちゃん。属性は全部おんなじくらいだけど平均より少し高いね。偵察と防衛に適性大で攻撃、回復は適性だね」

「サチリとの相性も良さそうだな」

「そうなの? ならうれしいわ」


サチリをなでながら頬を緩めていた。


「最後に近衛ちゃん。属性は雷が飛び抜けてて他も平均なんだけどかすんで見えるね。

攻撃と偵察が適性大で数値もずば抜けて高いね。その代わりに防衛はまだ平均位だけど回復が適性ぎりぎり。まさに戦闘特化だね」


こんな極端な結果は滅多に出ないよと笑いながら言っていった。


「意外だね」

「そうね。意外ね」

「そうか? 近衛は片鱗はあったぞ」

「近衛ちゃんは体力おばけだからね」

「なんで検査結果なんか知りたかったんすか?」

「5月に演習があるでしょ? それの担当を決めておきたかったの」


千歳先輩は私たちの検査結果を見ながらいった。う~んとしばらくうなっていたが突然立ち上がる。


「よし! それじゃあ担当を発表します! はい拍手!」


まばらな拍手が先輩に送られる。


「通信担当は菊池ちゃん、春華さんは回復担当。藤原君は2人の護衛で笹井君と近衛ちゃんは遊撃!」

「はい!質問いいっすか?」

「なにかね? 藤原君?」

「演習内容ってもう決まってるんですか?」

「演習内容がわかるのは演習一週間前。だから今は演習で課題をこなせるだけの基礎をつけないといけないの。他に質問は?」


ありませんとみんな答えると


「明日から訓練するからそのつもりで。もちろん課題もしっかりね。きついのは選抜までだから頑張って」

課題のことを思い出したのかうなだれている藤原君の頭をなでてから千歳先輩は談話室から出ていく。

「顔真っ赤だぞ」

「な、そんなことないっす! それじゃみんなお休み!」


藤原君は逃げるように部屋に戻ってしまった。

 私も部屋に戻ろうと立ち上がろうとすると、隣に座っていた由乃さんに腕を引っ張られソファーに座らせられる。


「どうしたんですか?」

「なんだか全然話してないなぁとおもったの。少しお話ししましょ?」


助けを求めようと周りを見回すと笹井さんはそそくさと部屋に戻っていき、春華さんはにこにことこちらに向かってくる。


「私もお話したいなぁ」

「話って何を話すんですか?」

「出身地とか? 私は東京都出身の江戸っ子です。」

「横浜生まれ横浜育ちです」

「あらそうなの? 私は鎌倉に実家があるの。夏休みにぜひ遊びに来て」

「予定が合えばぜひ」


雑談をしているともう寝なければいけない時間になっていた。


「すみませんもう寝ないといけないんで部屋に戻ります」

「もうこんな時間なのね。そろそろおしまいにしましょうか」

「そうですね。今日はお話しできて楽しかったです!」


おやすなさいと挨拶をして部屋に戻る。

紫苑はさっさと自分のベッドで寝てしまった。私も寝ようと明かりを消してベッドに入る。

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